【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#97


 アルバム『マジカル・ミステリー・ツアー』(1967年11月27日)⑤


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■『マジカル・ミステリー・ツアー』


 アルバムのタイトルチューン。


『マジカル・ミステリー・ツアー』というアルバムは、ポールという音楽家の才能を堪能する一枚。

対してジョンが『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』一曲でポールと張り合い、51対49の僅差でポールを押し切るのだが、それ以外の楽曲は、まさにポールの才気煥発という感じだ。


 映像作品として評価が低かったため、アルバム全体、さらにはタイトルチューンも低く見積もられがちだ。しかし、この曲のまさに「マジカル」で「ミステリー」な出来栄えはもっと評価されてもいい。


 金管楽器のキラキラしたサウンドはまさにマジカルだし、不穏なエンディングはまさにミステリー。


 そして、試聴リンク再生時間「1:27」から、リズム感が変わるところのしつこさ、ダメ押し感たるや。【オリジナル記事で試聴する


 とにかく、アイデアいっぱいの曲作りは、「ビートルズのポール」を超えて、その後長く長く、現在にまで至る「ソロとしてのポール」の予兆と捉えるべきものである。


■『フール・オン・ザ・ヒル』


 こちらもポール作品。


「丘の上のアホ」は反語で、周囲からはアホ呼ばわりされているが、自分は「おまえらこそアホや」と思って、地球が回るのを見つめているという──そう、地動説を唱えて批判されたガリレオ・ガリレイをイメージさせる歌詞なのだ。


 先の『マジカル・ミステリー・ツアー』は金管楽器が鳴り響いたが、こちらはフルートとリコーダーという木管楽器が活躍する。


 特に、ポール自身による(少したどたどしい)リコーダー・ソロは、楽曲全体に人懐っこさをもたらしている。ビートルズファンの生徒が、音楽の授業で必ずコピーするアレだ。専門家(?)として助言すれば、この曲のキー「D」を「C」に落とすと、吹きやすくなるので、お試しを。


 最後に個人的小ネタ。私が出演していたBS12『ザ・カセットテープ・ミュージック』の人気ネタに「♪ミファミレド」があった。


 その名の通り「ミ→ファ→ミ→レ→ド」という、多くの楽曲に組み込まれている、切ない音列を愛でるというものなのだが(例:テレサ・テン『時の流れに身をまかせ』)、『フール・オン・ザ・ヒル』の再生時間「2:20」にある何とも切ない「♪ヒー・ノウズ・ザット・ゼイアー・ザ・フールズ」は「世界ミファミレド史」の源流である(私調べ)。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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