【桧山珠美 あれもこれも言わせて】


 話題のNetflixドラマ「ガス人間」を見た。


 物語の面白さは言うまでもないが、目を奪われたのは「ガス人間」を演じたUTA(28)だ。

画面に現れた瞬間、空気が変わる。そんな俳優はそう多くはいない。


 189センチの恵まれた体躯。バスケットボールで培われたしなやかな身体性。感情を抑えた低音ボイス。全身から漂う得体の知れない空気。その不気味さが「ガス人間」という異形の存在に不思議な説得力を与えていた。しかも、これがデビュー作というのだから驚く。


 UTAの父は俳優・本木雅弘、母はエッセイスト・内田也哉子。モッくんの大きな耳はアイドル時代からよくネタになっていたが、UTAの耳も特大級。思わず「親子だな」と頬が緩む。


 今や2世俳優は珍しくもない。

が、UTAの場合、祖父は「シェキナベイベー」の内田裕也で祖母は樹木希林。両親に加え、この2人の強烈な個性を受け継ぐ孫。3世俳優なのだ。


 UTAは12歳で海外へ留学。学生時代はバスケに打ち込み、その後はモデルとして活躍する一方で演技も学び、本作で鮮烈なデビューを飾り、大型新人誕生を印象づけた。芸能界もいよいよ「孫の時代」に突入だ。



■「クロスロード」の寛一郎三國連太郎

 現在、放送中のドラマ「クロスロード~救命救急の約束~」でじわりと存在感を増している寛一郎(29)もまさに孫の時代を象徴するひとり。父は佐藤浩市、祖父は言わずと知れた昭和を代表する名優三國連太郎という俳優一家に生まれた。


 寡黙で陰影ある芝居は祖父を思わせるが、決して模倣ではない。役柄に静かな説得力を与える演技は紛れもなく、寛一郎自身のもの。


 終了した深夜ドラマの「100日後に別れる僕と彼」での静かな受けの芝居に魅せられた。


 いわゆるBL作品だが、学びも多く、隠れた名作になったのは寛一郎のナチュラルな演技のたまものだ。



■「豊臣兄弟!」の緒形敦は緒形拳

 緒形拳の孫、緒形敦(30)もいる。


 父は緒形直人、母は仙道敦子とこちらのDNAも強い。新しいところでは大河ドラマ「豊臣兄弟!」での織田信澄役。祖父は「太閤記」「峠の群像」と2度大河で主演し、父も「信長 KING OF ZIPANGU」で主演。彼が主演になれば、3世代での大河主演となる。


 女性では藤間紫の孫の藤間爽子(31)。前回の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」では喜多川歌麿の妻・聾唖者のきよを演じ、強い印象を残した。自身も三代目藤間紫として、藤間流の家元の顔をもつだけあって、舞踊で培われた所作の美しさは大きな武器だ。和物がよく似合う貴重な女優で注目している。


 もちろん、DNAはすごくても、結局は自分次第。3世俳優という重圧と期待を背負いながら自分だけの立ち位置を築くことが重要になる。最後にものをいうのは実力。


 芸能界は今静かに「孫の時代」を迎えている。


(桧山珠美/コラムニスト)


編集部おすすめ