【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#125


 アルバム『アビイ・ロード』(1969年9月26日発売)⑤


  ◇  ◇  ◇


■『ヒア・カムズ・ザ・サン』


 アルバムB面1曲目のジョージの作品。


 A面ラストの重い重い『アイ・ウォント・ユー』が終わり、レコードをひっくり返すと、この爽やかな曲が流れる。

あの「間」がよかったのに、CDだと続いて聴こえてきて興ざめだ──。


 と、私が言っているのではない。1980年代後半、CDがレコードを追い越そうとしている頃、よく言われたCDへのイチャモンだ。今となっては懐かしい。


 アルバムを代表する曲と言っていいだろう。ということは『アビイ・ロード』は『サムシング』とこの曲という、ジョージの2曲で代表されるアルバムなのだ。偉くなったもんよのう。


 日本でも人気のある曲である。イギリスも日本同様、雨が多いイメージがある。「サン」(太陽)を待ち望む気持ちが通じ合うということか。


 サウンドの顔となっているのは、キラキラした軽い音のアコースティックギターだ。【オリジナル記事で試聴する


 以下の話はギターを弾く方限定。

キラキラ音の秘密は「7カポ」。何と7フレットという高い位置にカポタスト(6本の弦をベタッと押さえる器具)を付けているのだ。その分、音が高くなり、キラキラするのである。


 サウンド面の話題をもうひとつ。ついにここで、シンセサイザーが導入されているのだ。試聴リンク再生時間「1:59」から流れる、いかにも電子音という感じの♪ピャピャピヤ(?)という音が、そのシンセサイザー(モーグ製)である。


 そう、初期のシンセは「いかにも電子音」という感じで使われていたのだ。そんな「いかにも電子音」的な音ではなく、既存のアナログ楽器の音に寄せて、サウンド全体に馴染むようになるのは、80年代に入って、ヤマハの名機「DX7」が発売されてからのこと。


 さて、毎回同じようなことを書くが、せっかくアコギがいい音で鳴っているのに、ドラムスだシンセだストリングスだとうるさいんだよという貴兄のために、アコギだけの有名なセッションをご紹介したい。


 それはジョージが音頭を取った「バングラデシュ難民救済コンサート」(71年)。


 ジョージとバッドフィンガーというバンドのピート・ハムの2人による、アコギだけのしっとりとした『ヒア・カムズ・ザ・サン』が聴ける。


 こっちの方がイギリスの太陽っぽいんだよな。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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