中国遼寧省大連で、日系大手電機メーカー富士電機の日本人社員2人が中国当局に拘束されていた事実が2026年6月24日に明らかになった。中国外務省は容疑内容や背景を一切公表しておらず、現地に進出する日系企業の間では「何が問題とされたのか」「これではビジネスが成り立たない」と、かつてない不安と動揺が広がっている。
表向きは法律違反の形を取っているが、近年の邦人拘束の事例を振り返ると、そこには政治的意図が透けて見える「見えないリスク」が潜んでいる。

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 中国では2014年に「反スパイ法」が制定されて以降、これまでに15人以上の日本人が拘束されている。特に直近5年間は、容疑のブラックボックス化が進み、民間企業の幹部や駐在員までが標的となるケースが目立つ。2021年には50代の日本人男性が上海で拘束され、反スパイ法違反で実刑判決を受けたが、活動内容は一切公表されず、密室裁判が常態化した。2023年3月にはアステラス製薬の現地法人幹部が帰国直前に北京で拘束され、日系ビジネス社会に大きな衝撃を与えた。通常の情報収集活動が「スパイ行為」とみなされる恐怖が広がる中、今回の大連での拘束が起きた。製造や通関業務すら地雷原と化している実態が浮き彫りになっている。共通するのは、合法と違法の境界線が当局のさじ加減一つで変わる点だ。

 中国は2023年7月に改正「反スパイ法」を施行し、国家秘密だけでなく「国家の安全と利益」に関わる文書やデータの取り扱い全般を対象に拡大した。問題は、その定義が極めて曖昧なことだ。経済動向について知人と意見交換することや、公開されている地図やインフラ情報を調べること、サプライチェーンの状況を確認することなど、日本では当たり前の行為が、一瞬にして「国家機密の窃取」や「スパイ行為」にすり替えられる。拘束されれば領事面会は制限され、弁護人の選定も困難なまま長期勾留が続く。
裁判は非公開で、証拠や理由は外務省を通じても公表されない。まさに法治ではなく人治による密室司法である。

 日中関係は近年ますます冷え込んでいる。台湾有事を巡る摩擦、日本の安全保障政策強化、中国によるレアアースなど軍民両用製品の輸出規制強化など、経済と政治の両面で対立が先鋭化している。こうした緊張の中、中国当局はしばしば外交カードとして邦人を利用する。今回の大連での拘束も、輸出管理強化の中で見せしめ的に日系企業社員が標的にされた可能性が高い。つまり、法律を遵守し真面目にビジネスや観光をしていても、日中関係の風向き一つで突然容疑者に仕立て上げられるリスクを常に抱えている。

 「自分は普通のサラリーマンだから関係ない」「観光旅行だからスパイに間違われるはずがない」と考えるのは危険だ。アステラス製薬幹部も、今回拘束された電機メーカー社員も、皆普通のビジネスパーソンだった。観光客でも、軍事施設や国境付近と知らずに風景写真を撮っただけで拘束された前例がある。現在の中国は人権や法的手続きの正当性が担保されていない。万一拘束されても、日本政府が抗議して即座に救出することは不可能で、人生の何年、あるいは何十年もの時間が理由も分からぬまま奪われる危険がある。


 ビジネスではリモートワークや現地スタッフへの権限委譲、拠点分散を加速させるべき局面だ。観光や私的旅行であれば、あえて拘束リスクのある国を選ぶ理由はない。君子危うきに近寄らず――自分の身と人生、そして家族の平穏を守るためにも、不要不急の中国渡航を避けることこそが、現代を生きる日本人にとって最も賢明で現実的な選択肢である。
【編集:af】
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