ミャンマーに拠点や工場を持つ日系企業の間で、事業縮小や撤退の動きが加速している。2021年2月の軍事クーデター以降、治安の悪化、電力不足、外貨規制という三重苦が企業活動を直撃し、かつて「アジア最後のフロンティア」と呼ばれた市場は、今や持続不可能な環境へと変貌した。
2026年7月現在、外資系企業全般に退潮が広がり、日本企業も例外ではない。

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 軍政と民主派、少数民族武装組織との衝突は拡大の一途をたどり、最大都市ヤンゴンを含む主要都市部でも爆弾テロや銃撃戦が散発している。従業員の安全確保は著しく困難となり、多くの企業が日本人駐在員を帰国させ、現地スタッフのみで「最小限継続」の体制を採用している。従業員の生命を守ることが最優先課題となり、企業は事業継続と人道的責任の狭間で苦悩を深めている。

 慢性的な電力不足は深刻を極め、ヤンゴン市内でも1日8~12時間の停電が常態化している。工場は高価な燃料を用いた自家発電に依存せざるを得ず、製造コストは劇的に上昇。採算性は根底から崩れ、製造業のみならず物流や通信にも影響が及んでいる。電力インフラの崩壊は企業活動の持続可能性を奪い、撤退判断を後押しする要因となっている。

 経済の命綱である通貨チャットは暴落を続け、軍政による外貨強制両替規制と海外送金規制が企業活動を圧迫している。現地で得た利益を日本本社へ還流させることはほぼ不可能となり、原材料輸入に必要な外貨の確保すら困難な状況だ。金融リスクは事業継続の基盤を揺るがし、企業は採算性と資金繰りの両面で限界に直面している。

 現地メディアの報道によれば、上組や住友商事、トヨタ通商が出資するティラワ多目的国際ターミナル事業からの撤退や、NHK傘下の日本国際放送、クールジャパン機構などが関与した合弁テレビ番組制作会社「ドリーム・ビジョン」からの日本側出資引き揚げが相次いでいる。
さらに、2026年6月にはシンガポールのInterra Resourcesが石油関連資産を売却し完全撤退を決定。外資系企業全般に退潮が広がり、日本企業もその流れに巻き込まれている。三菱商事やENEOSなど一部大手は既に撤退を完了。縫製や食品など労働集約型産業は現地雇用維持のため縮小運営を続けているが、新規投資は完全に凍結されている。撤退手続き自体も困難で、ミャンマー投資委員会による承認に数か月から1年以上を要するケースが続発している。

 軍政による人権侵害や宣伝活動への加担を避けるため、国際社会や市民団体からの批判が強まっている。ILOによる制裁勧告や米欧諸国の制裁強化に加え、日本政府も軍関連企業との新規取引を事実上停止。人権デューデリジェンスの要請は高まり、企業は国際的な批判を回避するため撤退を余儀なくされている。国際的な圧力と現地のリスクが複合的に作用し、企業の判断を決定的に変えている。

 日系企業は現在、三つの選択肢に直面している。第一は完全撤退であり、既に大手商社やエネルギー企業がこの道を選んだ。第二は最小限継続であり、現地雇用維持を目的に縮小運営を続ける企業がある。
第三は代替市場模索であり、ベトナム、タイ、インドネシアなどへの移転を検討する動きが加速している。いずれの選択肢も容易ではなく、長年培った現地雇用や顧客への責任を考慮すれば、企業は苦渋の決断を迫られる。

 ミャンマー進出の日系企業は、治安悪化、電力不足、外貨規制という複合的リスクに直面し、撤退や事業縮小を余儀なくされている。かつて「アジア最後のフロンティア」と期待された市場は、今や企業にとって持続不可能な環境へと変貌した。人道的責任と経済的限界の狭間で、日系企業はかつてない難局に立たされている。
【編集:af】
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