タイの首都バンコク北部チャトゥチャック区の人気パブ「ナ・ラップラオ」で2026年7月12日深夜に発生した大規模火災は、死者27人、負傷者73人に拡大した。搬送された負傷者のうち25人が依然として集中治療室で生死の境をさまよっている。
重体患者の多くは一酸化炭素中毒や気道熱傷など深刻な症状を抱え、タイ保健省は専門医療チームを増員して救命活動を続けている。懸命な治療により一部患者には改善の兆しも見え始めているが、予断を許さない状況が続いている。

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 タイ有力紙「タイ・ラット」は、病院関係者の話として「被害者の大半が有毒ガスを大量に吸い込み、重度の呼吸器損傷を負った」と報じた。燃えやすい防音材の燃焼で発生した化学物質が肺に深刻なダメージを与え、一部患者は高度な血液浄化措置による生命維持が必要な状態にあるという。医療陣は「昼夜を問わず全力を尽くし、最新の解毒治療や厳格な衛生管理を実施している」とコメントしている。

 現場検証は13日朝から本格化した。英字紙「バンコク・ポスト」によれば、火元はステージ付近の電気系統ショートの可能性が高い。生存者証言では、2026年7月12日23時57分ごろ分電盤から煙が上がり、直後に爆発音と停電が発生。暗闇の中で客は正面入り口に殺到したが、炎と黒煙で遮断されていた。さらに、非常口がビール箱やテーブルで塞がれていたことが判明し、逃げ場を失った客が店奥のトイレ付近に避難し多数の犠牲者が発見された。

 同店は騒音防止のため密閉性が高く、窓がほとんど設置されていなかった。ニュースサイト「マティチョン」は、安価なウレタン製防音材の燃焼で致死性の有毒ガスが短時間に充満したことが被害拡大の要因と指摘。
さらに、建築基準法で義務付けられた非常口や自動消火設備が設置されていなかった疑惑も浮上し、「利益優先で安全を軽視した人災だ」と批判した。

 バンコク首都警察は、店舗経営者や建物所有者に対する本格捜査を開始。業務上過失致死傷や消防法違反の疑いで事情聴取を進めている。経営者自身も火災で負傷し集中治療室に入院中だが、警察はスタッフや関係者から証言を集めている。警察幹部は「違法な構造変更や安全対策の怠慢は明白であり、責任を厳しく追及する」と強調した。

 タイでは過去にも同様の悲劇が繰り返されてきた。2009年にはバンコクのナイトクラブ「サンティカ」で66人が死亡、2022年には東部チョンブリ県のパブ「マウンテンB」で14人以上が犠牲となった。いずれも非常口不足や防音材の危険性、劣悪な電気設備が問題視されたが、行政による規制強化や定期検査は徹底されず、法規が形骸化している現状に国民の怒りと不信が高まっている。

 事態を重く見たタイ政府首相は13日、全国の類似娯楽施設に対する緊急点検を指示。消防設備の作動状況や非常口の確保を厳格に確認し、基準を満たさない施設には即時営業停止を命じる権限を自治体に付与した。しかし、長年黙認されてきた構造的問題を短期間で解決するのは容易ではなく、政府は法改正を含む抜本的な安全対策を迫られている。集中治療室で生死の境をさまよう25人の回復を祈る家族の悲痛な叫びは、二度と同じ悲劇を繰り返してはならないというタイ社会全体への重い問いかけとなっている。

【編集:af】
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