中国国内で完成された汚職と利権のシステムは、いまや国境を越え、したたかな国家戦略として世界中に輸出されている。その最大の受け皿となっているのが、中国が主導する巨大経済圏構想「一帯一路」である。
アジアやアフリカ、中南米などの新興国や発展途上国において、中国の国有企業やインフラ建設会社は、現地政府の要人や有力政治家に対して極めて組織的で執拗な賄賂攻勢を仕掛けている。欧米の先進諸国や国際機関が途上国に開発援助を行う際、人権の尊重や環境への配慮、そして何よりも資金使途の透明性やガバナンスの向上を厳格な条件として突きつける。これに対し、中国のインフラ投資や資金援助には、そうした「内政干渉」とも受け取られかねない面倒な条件が一切付随しない。その代わりに彼らが用いるのが、現地の意思決定者の個人的な欲望を直接的に満たすアンダーマネーの提供である。手続きの透明性を無視し、巨額の現金を闇に紛れて渡す手法は、法の支配が脆弱な途上国の政治家にとってこの上なく魅力的なオファーとなる。中国のビジネスパーソンは「カネで解決できない問題はない」という強烈な成功体験を国内で積んでおり、その独特の商習慣をそのまま海外のプロジェクトにも持ち込んでいるのである。

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 中国企業が海外で展開する賄賂のスキームは、国内で培った手法をさらに洗練させた極めて狡猾なものだ。道路や鉄道、港湾、発電所といった大規模インフラプロジェクトを受注する際、彼らは正規の建設費用に巨額のリベート分をあらかじめ上乗せした見積もりを提示する。そして、契約が無事に成立すると、その水増しされた差額分が現地の閣僚や大統領の親族が運営する実態のないペーパーカンパニーへと「コンサルタント料」や「業務委託費」といったもっともらしい名目で送金される。アフリカ東部のインフラ事業では、数100万米ドルから数1000万米ドルに上る裏金が、タックスヘイブン(租税回避地)に設けられた秘密口座を経由して現地要人の個人資産へと化けていた事実が国際的な調査報道によって次々と暴露されている。現金を直接手渡す手法だけでなく、高級官僚の子弟を中国国内のトップ大学に国費留学生として優遇して招き入れたり、欧米の高級住宅を買い与えたりするなど、その買収工作は相手のニーズに合わせて極めて多角的に行われている。一見すると合法的なビジネスの枠組みを装いながら、その実態は現地エリート層の懐を潤すためだけの巨大な資金還流システムとして機能しているのだ。


 こうしたアンダーマネーによる買収工作の真の恐ろしさは、単なる一部企業の利益追求にとどまらず、中国という国家の地政学的な覇権拡大と完全に連動している点にある。莫大な賄賂を受け取った現地の政治家は、もはや中国の意向に逆らうことができない。彼らは自らの不正蓄財の秘密を完全に中国側に握られており、もし少しでも裏切るような素振りを見せれば、その決定的な証拠を国際社会や国内の政敵にリークされるという致命的な弱点を抱え込むことになるからだ。中国はこれを巧みに利用し、親中派の政権を維持するための選挙資金を裏から捻出するなど、相手国の内政に深く干渉していく。その結果、本来であればその国にとって不必要に高額なインフラプロジェクトが次々と承認され、国家予算を遥かに超える莫大な対中債務が積み上がっていくことになる。政治家の個人的な欲望が満たされる一方で、国家そのものが経済的な首輪をはめられる構造が意図的に作り出されているのである。これは武力を使わずに他国を侵略する、現代における最も洗練された静かなる戦争とも言える。

 これが国際社会で厳しく批判されている「債務の罠」の真のカラクリである。巨額の借金を返済できなくなった途上国に対し、中国は借金の減免や返済猶予と引き換えに、安全保障上極めて重要なインフラの支配権を要求する。スリランカの港湾が99年間にわたって中国の国有企業に事実上租借された事例は氷山の一角にすぎない。アフリカ諸国の鉱山権益や鉄道の運営権、あるいは国連における台湾の孤立化工作や新疆ウイグル自治区の人権問題に関する中国擁護の票集めに至るまで、アンダーマネーで買収された政治家たちは自国の国益を切り売りして中国の国益にひたすら奉仕する駒となる。表向きは「共に発展するウィンウィンの関係」という美しいスローガンが掲げられているが、その水面下では、人間の根源的な強欲さを刺激し、カネの力で他国の主権を内部から静かに腐敗させていく冷徹な戦略が進行している。
中国のアンダーマネー経済圏は、今や自国の枠を飛び出し、世界の民主主義と法の支配を根本から蝕む最も危険な病巣として地球規模で増殖し続けているのだ。このダーティーな実態から目を背ける限り、真の意味で中国という巨大な存在と対峙することはできない。
【編集:af】
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