国内企業の人手不足が深刻化している。厚生労働省の2026年5月期調査(全国5,786事業所対象)では、労働者過不足判断DIが正社員等でプラス47、パートでプラス27となり、不足超過が続いた。
帝国データバンクの同年1月調査でも、正社員不足を感じる企業は52.3%に上った。2025年の人手不足倒産は427件と過去最多を更新している。採用枠を増やすだけでなく、離職によって失われる採用費、教育時間、現場の生産性、顧客との関係まで含めて管理することが、企業経営の新たなテーマとなっている。

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 こうした課題に対し、一般社団法人ひとらぼが運営する離職予防士協会は、離職の前兆を可視化し、組織改善まで伴走する専門家の育成と企業支援を進めている。公式サイトでは、離職予防士を「見えにくい変化を構造的に読み解き、手遅れになる前に対話を始める専門家」と位置づける。単に退職を引き止めるのではなく、社員が辞めたいと思う背景を捉え、支援終了後も企業自身で改善を続けられる状態を最終ゴールとしている。

 中心となるのが、「dマト組織活性化プログラム」だ。dマトは、意思決定の速さと判断理由の違いから、人の傾向を合理派、直感派、協調派、分析派の4タイプに整理する。タイプを細かく分けすぎず、日本語で直感的に理解できるため、「あの人にはどのように説明すれば伝わりやすいか」「どの業務で強みを発揮しやすいか」を社内の共通言語にしやすいという。

 ただし、同プログラムは性格診断だけで完結しない。社員が職場に居続けたいと感じる要因を、「理念」「心身の状態」「上司との関係」「話せる仲間」「強みを生かせる場」「評価と育成」「成長実感」など12の視点で確認する。これらは、文化・風土、定着、活躍という3つの領域に整理されており、表面に現れた離職だけでなく、その土台にある組織課題を捉える設計だ。


 診断には「働きがいアンケート」を使用する。同じ項目について、本人、チーム、上司、会社という4つの立場から回答を集めることで、経営層と現場の認識差を可視化する。アンケート結果はAIで分析し、課題の優先順位に加え、6カ月間のトレーニングスケジュールや改善ロードマップまで作成する仕組みとなっている。

 その後は、研修を一度実施して終えるのではなく、現場での実践、振り返り、改善を繰り返す。管理職の面談力や育成力、チーム内の心理的安全性、営業時の顧客理解まで、診断で明らかになった課題に合わせて支援内容を組み替える。資料では、離職予防、セールス力向上、管理職の育成力向上、チームワーク向上を積み上げることで、紹介採用の増加や採用コストの削減、企業ブランド向上にもつなげる設計が示されている。

 導入事例では、複数店舗を運営する調剤薬局で、評価基準のばらつきや面談への不安を改善し、公平な評価運用と信頼関係の形成につなげたという。また、児童養護施設では、リーダーの判断軸や会議の進め方を整理し、不適切な支援の兆候を早期に察知できる体制を構築。複数店舗を運営する卸売企業では、社長に集中していた判断を各店舗のリーダーへ移し、自律運営の促進につなげたとしている。

 公式サイトによると、離職予防士は現在30人を超え、受講満足度は96.5%、平均離職率改善は71.6%としている。これらは協会公表値ではあるものの、離職予防を単発研修ではなく、データと現場支援を組み合わせた継続施策として捉える企業が増え始めていることを示す一つの動きといえそうだ。

 採用難の時代に、企業が競うのは「人を集める力」だけではない。
社員の違いを理解し、辞める前に課題を見つけ、活躍できる場をつくる力も問われる。離職予防士協会が展開するdマト組織活性化プログラムは、人材流出を経営リスクとして捉え直す新たな支援モデルとして、今後の広がりが注目される。
【編集:Y.U】
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