海外旅行の常識が激変した今、かつては当たり前だったクレジットカード決済のメリットが音を立てて崩れている。タイやフィリピンを訪れた観光客の間で、現地で日本円を現金から両替したほうが驚くほど安上がりだったという声が相次いでいるのだ。
円安による影響だけではない。日本の主要なカード会社が断行した歴史的な海外事務手数料の引き上げが、私たちの財布を容赦なく直撃しているからである。

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 かつては海外での買い物にクレジットカードを使うのが最も賢い選択肢とされていた。現地の空港や街中の両替商では高い換金手数料を取ることが多く、ブランドが指定する基準レートに数パーセントの上乗せで済むカード決済のほうがトータルコストで安かったからだ。しかし、2024年から2025年にかけてその勢力図は完全に塗り替えられた。不正利用対策やシステム維持コストを名目に、主要なカード会社は次々と手数料を引き上げ、現在では約3.6パーセントから3.8パーセントにまで膨れ上がっている。

 ブランドごとの状況を見てみると、かつて旅行者の定番だったVISAやマスターカードは深刻な値上げに見舞われている。三井住友カードやエポスカード、楽天カードなど主要な発行会社の多くが約3.63パーセントから3.85パーセントへと引き上げた。フィリピンでもタイでも使える店舗は多いものの、決済のたびに約3.8パーセントが差し引かれるため、現地で評判の良い両替商を使って日本円から換金したほうが結果的に安くつく逆転現象が起きている。セゾンカードが発行するセゾンアメックスも3.85パーセントに設定され、使える店舗が限られるうえにコスト面でも大きく遅れをとる結果となっている。

 こうした中で、唯一とも言える例外的な存在感を放っているのがJCBだ。JCBのプロパーカードなどが提供する海外事務手数料は1.60パーセントという低い水準をしっかりと維持している。
タイにおいてはJCBの加盟店網が強力でレストランやコンビニ等で広く利用でき、フィリピンでも主要都市のモール等で使えるため、今回の主要ブランドの中では最もクレジットカードの利点を残していると言える。しかし、それ以外のブランドを何も考えずにそのまま使えば、知らず知らずのうちに約4パーセント近い手数料を支払う羽目になる。

 だが、ここで一つの深刻なジレンマが私たちの前に立ち塞がる。手数料の安さだけを重視して多額の現金を持ち歩く選択をした場合、それは海外の治安において計り知れないリスクを伴うことになる。スリや強盗のターゲットにされ、万が一財布ごと現金を奪われてしまえば、手元に戻ってくる保証は一切ない。それに比べて、法外に高くなった約4パーセント近いクレジットカードの手数料は、果たして身の安全を買うための「必要経費」と割り切るべきものなのだろうか。

 タイやフィリピンへの渡航計画において、手数料が低いJCBのプロパーカードを軸にしつつ、どうしても必要な分だけを現金として補うのか。あるいは失った場合の痛手を覚悟してまで両替にこだわるのか。お得ではなくなったプラスチックのカードを前に、私たちは今、それぞれの安全保障とコストのバランスを厳しく問われている。
【編集:af】
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