水産物は、世界で最も広く取引される食品の一つだ。国連食糧農業機関(FAO)によると、2024年には世界の水産・養殖生産量の約36%が国際取引され、230の国・地域を結ぶ市場規模は1,860億ドルに達した。
鮮度管理、加工、物流、食文化の違いを越えて届ける力が、産地の競争力を左右する。

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日本でも地域食品の海外展開が進み、2025年の農林水産物・食品の輸出額は1兆7,005億円で過去最高となった。海外の日本食レストランも増えている。ただ、すしや天ぷらに続く食材を育てるには、商品を送るだけでは足りない。現地に合う食べ方と、継続して届く流通先を同時につくる必要がある。

茨城県日立市で1933年に創業した小松水産株式会社(REIホールディングスグループ)は、天然しらす、ちりめん、干物の加工・販売を続けてきた。初代のさんまのみりん干し、二代目のいかかば、三代目のしらす事業へと主力商品を変えながら、約90年にわたり残してきたのが、原料を選ぶ「目利き」と加工技術である。

しらすは養殖できず、同じ海で取れても、漁法、船、水揚げからの時間、海域の状態によって色、香り、品質が変わる。同社が評価される理由は、同じ商品を守り続けたことではない。時代に合わせて主力を変えながら、品質を見極める基準を受け継いできた点にある。

この「変わりながら守る」姿勢は海外事業にも表れる。約20年前にはタイのチョンブリ県へ進出し、浜に近い場所へ加工拠点を設けた。
公式サイトにはタイとベトナムの関連会社が掲載され、インタビューでは日本を含む5カ国10拠点で活動していると説明する。

海外輸出と営業をさらに進めるため、2025年には株式会社REIホールディングスを設立した。小松礼子氏が小松水産の代表取締役社長に就任し、夫の小松伸克氏とともにREIホールディングスの共同代表を務める。小松水産の加工・品質管理と、新会社の営業・IT・海外ネットワークを組み合わせる体制である。

海外で商品を定着させるには、コンテナを送り棚へ置くだけでは足りない。現地の日本食レストランと関係を築き、試食会や店頭イベントを重ね、米、麺、サラダ、卵料理など、その土地へ取り入れやすい食べ方から伝える。同グループによると、マレーシアでは20店舗でしらす丼や軍艦巻きとして提供され、ベトナムでは直営3店舗とFC1店舗のうなぎ店で、しらすおろしをメニューに取り入れている。

小松礼子社長が描くのは、寿司や天ぷらのように「SHIRASU」という日本語がそのまま通じる未来だ。しらすは頭から尾まで食べられ、包丁やまな板を使わず料理へ加えられる。海外では存在を知らない人も多いからこそ、市場を育てる余地が残る。

現地で「干物も欲しい」「調味料を探している」と相談を受けたことから、事業は自社商品の輸出を越えて商社機能へ広がった。輸入手続き、温度管理、物流、飲食店との商談は、中小食品メーカーが単独で進めるには負担が大きい。
既に築いた商流を使い、日本の食品が現地で継続して注文されるまで支援する。

海外展開では、日本のしらすを輸出する方法と、現地で取れる原料を見極め、その市場に合う形へ加工する方法も使い分ける。価格、供給量、用途の異なる需要へ応えながら、現地の料理人や消費者の反応を日本側へ戻し、商品と提案を調整している。

国内では、2022年度に「本気のしらす」が茨城県水産製品品評会の農林水産大臣賞(沿海部門)を受賞し、同社によると2023年には新嘗祭に際してしらすが献上された。受賞歴だけでなく、現地で再注文が生まれ、温度管理や規制へ継続して対応できるかが、海外事業の実力を示す。

海外市場の信用は、受賞歴や初回の輸出量だけでは築けない。現地の料理人が使い続け、再注文が生まれ、温度管理や輸入規制へ安定して対応できることが重要になる。継続販売の仕組みを示せるかが、加工会社から商流の設計者へ役割を広げる同社の実力を測る基準となる。

取材を通じ、小松水産株式会社(REIホールディングスグループ)の強みは歴史の長さだけでなく、目利きと加工技術を残しながら、市場に合わせて届け方を変えてきたことにあると感じた。「SHIRASU」が海外の食卓へ定着し、日本の地域食品を運ぶ商流がさらに広がることを期待したい。
【取材・執筆:Y.U】
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