現在、日本に暮らす中国人の数は93万人に達し、近く100万人を突破する勢いを見せている。帰化する外国人の数でも中国出身者が最多となり、かつての観光や爆買い目的ではなく、母国を離れて日本へ「移住」し、そのまま生活基盤を築こうとする人々が急増している。
中国分析に高い評価を持つ専門家のA氏は、この現象の背後に、中国社会が抱える根深い病理と切実な事情があると指摘する。

その他の写真:イメージ

 最大の理由は、中国国内で「将来に希望が持てなくなった」ことだ。中国経済は長期低迷が続き、特に若者の失業率は深刻である。大学を卒業しても就職先が見つからず、仮に職を得ても賃金は低く、努力が報われない社会構造が固定化している。政府による民間企業への監視や規制も強まり、成功して富を築くチャンスすら奪われつつある。若者の間では無気力に投げ出す「寝そべり」現象が広がり、未来を描けない人々が海外へ逃げ出している。

 移住先としてまず検討されるのはアメリカ、カナダ、オーストラリアなど英語圏の国々だ。しかし近年、これらの国々は不法移民対策を強化し、ビザ取得条件を大幅に引き上げた。たとえばカナダで経営者向けビザを取得するには3000万円以上の資金が求められるなど、極めて高い壁が立ちはだかる。こうした状況の中で、消去法的に選ばれたのが日本である。

 日本はこれまで、会社を設立して移住するための「経営管理ビザ」を、資本金500万円という比較的低いハードルで発行してきた。さらに、日本社会特有の「相手を信じる」性善説に基づく書類審査が中心だったため、制度の隙を突く事例が相次いだ。
大阪の古いマンションでは、誰も住んでおらず事業も行われていないのに、何十社もの会社が同じ住所に登録され、ビザ取得のためだけに利用されていた実態まで明らかになっている。こうした「幽霊会社」対策として、日本政府はビザ取得基準を3000万円へ引き上げるなど、厳格化に乗り出した。

 それでも中国からの脱出ラッシュは止まらない。歴史的な円安が追い風となり、中国の富裕層や中間層にとって、日本の不動産や教育環境は極めて魅力的に映る。東京の文京区では中国人住民が増加し、子どもに日本の教育を受けさせようとする親が殺到している。中国では大学卒業後に無職となるリスクが高いが、日本で学べば就職口が見つかり、安全で安定した社会保障のもとで暮らせる。日本の1人あたりGDPは依然として中国の3倍以上で、生活の質でも優位にある。

 一方で、A氏は日本の外国人受け入れ政策に強い懸念を示す。単純労働者を安易に受け入れれば文化的摩擦が生じ、ヨーロッパ諸国が経験した社会の混乱を招く恐れがある。逆に、警戒するあまり一律に規制を強めれば、日本が必要とする優秀な研究者や技術者といった「高度な頭脳」まで排除してしまう。世界ではアメリカ、中国、シンガポールがトップ研究者を積極的に獲得しているが、日本は年功序列の給与体系や閉鎖的な社会構造が障壁となり、海外の有能高度人材を引き寄せられていない。

 A氏は、単純労働者の受け入れは厳格に管理しつつ、優れた頭脳には柔軟に門戸を開くメリハリのある政策が不可欠だと提言する。
自国を見限って流出する中国の富と人材を、日本がどう見極め、国の活力へ転換できるのか。日本の未来を左右する戦略的選択が迫られている。
【編集:af】
編集部おすすめ