ロシアの最高権力者が北方領土に足を踏み入れたのは、2010年にメドベージェフ大統領が国後島を訪れて以来である。20年以上にわたり権力を握るプーチン氏自身が北の孤島に降り立った意味は極めて重い。
今回の訪問では、太平洋艦隊の大規模演習を視察し、第2次世界大戦の結果として北方四島が合法的にロシア領になったとする主張を改めて世界に発信した。

その他の写真:北方領土イメージ

ロシアが北方領土を手放さない背景には、経済価値だけでなく国家の命運を左右する安全保障上の理由がある。北方四島と千島列島は、オホーツク海と太平洋を隔てる天然の要塞であり、太平洋艦隊の艦船や原子力潜水艦が凍らない海域へ進出するための最重要ルートである。仮に返還され、日米安保に基づき米軍基地が設置されれば、ロシアの安全保障体制は根底から揺らぐ。

このためロシアは近年、択捉島や国後島に最新鋭の地対艦ミサイルを配備し、軍用機が離発着可能な滑走路を整備するなど、「北の軍事要塞化」を着々と進めてきた。日本国内で「経済協力を提供すればロシアは柔軟になる」と語られていた裏で、ロシア軍は武力による既成事実化を進めていたのである。日本の経済的見返りは、ロシアにとって軍事的価値を上回ることはなかった。

さらに、ウクライナ侵攻で制裁を受けたロシアは孤立回避のため中国や印度との関係を急速に強化した。中国軍との合同演習は頻繁に行われ、極東の防衛ラインは一段と強固になった。プーチン氏の電撃訪問には、協力国に対し「ロシアの領土支配は揺るがない」と示す狙いもある。

日本政府は外交ルートで抗議したが、ロシアは「自国領内の移動に他国が口を挟むな」と一蹴した。形だけの抗議を繰り返しても、力による実効支配は動かない。
戦略的冷徹さを欠いた日本の対露外交は、完全に手詰まり状態に陥っている。
【編集:ソムチャイYASUMA】
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