択捉島の水産工場でのプーチン氏の姿は、ロシア国営テレビで繰り返し放送された。巨大な加工設備の中で地元住民と親しく言葉を交わす映像は、同地域がロシア経済に完全に組み込まれ、安定して機能していることを印象付けた。
かつて日本側が描いた「共同経済開発から返還へ」という理想は消え去り、ロシア主導の独自開発だけが積み上がっている。

その他の写真:北方領土イメージ

2016年に合意された「8項目の経済協力プラン」は、日本の対露外交の最大の賭けだった。医療、エネルギー、都市環境など日本の技術と資金を投入し、ロシアの態度を軟化させる構想だった。しかし経済協力先行という手法は構造的な欠陥を抱えていた。ロシアから見れば「領土を渡さずとも日本から利益を得られる」という都合の良い状況を許したのである。

2018年のシンガポール会談で日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速することで合意した際も、「二島先行返還」への転換が国内で広がった。しかし日本政府は従来の「四島帰属解決」との違いを曖昧にし、説明不足が交渉力を弱めた。主導権を握れないまま時間が過ぎ、ロシアの憲法改正で返還の道は法的に閉ざされた。

現在、ウクライナ情勢の長期化で日露関係は戦後最悪の水準にある。平和条約交渉の再開は見通せず、墓参事業の中断で元島民は故郷に足を踏み入れる機会すら奪われた。洋上慰霊など限られた方法しか残されていない現状は、対露外交が完全に失敗したことを物語る。

北方領土問題を再び動かすには、過去の外交戦略への厳しい反省と冷徹な分析が不可欠である。
「首脳同士の個人的関係」や「経済支援」に依存した手法には限界があった。力による現状変更を認めないという国際原則を改めて主張しつつ、変化する安全保障環境に対応した新たな対露戦略をゼロから構築することが求められている。
【編集:ソムチャイYASUMA】
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