最近は退職代行サービスを利用して、苦手な上司や職場の人と顔を合わせることなく会社を辞める人も増えているようです。

もちろん事情は人それぞれですが、「本当は自分で伝えたいのに、どうしても言い出せない……」という経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか。


今回は、習い事を辞める電話がどうしてもできず、友人に“退会代行”をしてもらった女性のエピソードをご紹介します。

キックボクシングジムに入会

格闘技を習いはじめた31歳女性、合わないのに「辞めます」が言...の画像はこちら >>
中山千聖さん(仮名・31歳/会社員)は、キックボクシングのジムに入会したばかりです。

「インスタを見ていたら私の好きなモデルさんや女優さんが、キックボクシングやボクシングのジムに通ってて。キラキラした汗を流す姿や、練習終わりにさっぱりした表情をしている投稿がいくつも流れてきて、気になっていたんですよね」

その他に“身体が効率よく引き締まりみるみる変わっていく”や“ストレス解消になりポジティブな気持ちになれた”など、魅力的な文言も並んでいました。

「そしたら通勤電車の窓から、たまたまキックボクシングの看板を発見したんです。いつも乗り換えで使っている駅にジムがあったなんて! とワクワクして、さっそく体験の予約を入れたんですよ」

そのジムはこじんまりとしていましたが清潔感があり、女性会員が多いようでした。トレーナーさんが女性でとっつきやすかったのもあり、千聖さんはその場で入会手続きをしたそう。

「初めてのレッスンを受けてみたら、少人数制でとても丁寧に指導してもらえたので、これから仕事帰りに気軽に立ち寄ろうと思ったんです」

トレーナーからのキツいひと言

ですが急に仕事が立て込んでバタバタしてしまい、次のレッスンに行くまでに10日ほど空いてしまいました。

「そしたら2回目のレッスンで、私はまだ右も左も分からないような状態なのに、いきなり他の会員さんと組んでミット打ちをすることになって。しかも私がミットを持つ番になっていきなり、一緒に組んでいた人のローキックが当たってしまい……あまりの痛さに悶絶してしまいました。

相手の女性は私がまだそんなにも初心者だとは思っていなかったらしく平謝りしてくれましたが、そういう大事なことはトレーナーさんがきちんとみんなに目を配って伝えてよと思ってしまって」

そんな不信感を抱きつつもレッスンをやり切り、千聖さんが帰ろうとすると……。

「トレーナーさんに呼び止められて、『千聖さんは、入会した時に身体を引き締めることが目標だって言っていたよね? 当たり前だけど、こんなペースでやっても何も変わらないから。もっとマメに来ないと』と鼻で笑うように言われて。確かにそうだとは思いますが、そんなキツい言い方はないし、しかもみんなが見ている前で言わなくても……と落ち込んでしまいました」

友人に諭される

その翌日、女友達の麻理子さん(仮名・32歳)とたまたま食事に行く約束をしていた千聖さんは、その一連の出来事を話して愚痴を聞いてもらったそう。

「そしたら麻理子に『確かにそのトレーナーさんの態度や言い方も良くないと思うけど、千聖って本当にキックボクシングを習いたいの? 本格的なミット打ちや、蹴りを受けたりしたかったの? キックボクシング風のエクササイズを受けて、意識高い系の生活を送ることで自己肯定感を上げたかっただけじゃないの?』と言われて、思わずハッとしてしまったんですよ」

まさにその通りで「場違いなところに足を踏み入れたのは私だ」と千聖さんは激しく反省しました。


退会の電話を代行してもらい……

「麻理子には『だったら普通にスポーツクラブに入って、ボクササイズや格闘系エクササイズを受けたらいいよ。その本格的なキックボクシングジムはすぐに退会しないと』と言われました。ですが、まだ2回しかレッスン受けていないのに速攻でへこたれて辞めますって言うのが恥ずかしすぎるし、あのキツいトレーナーさんにまた何か傷つくことを言われそうで怖くて。電話するのを躊躇していたら、『あーもうイライラするな! 分かったよ私が言ってあげる!』と麻理子がジムに電話してくれたんですよ」

格闘技を習いはじめた31歳女性、合わないのに「辞めます」が言えなくて…“退会代行”をお願いした結果
尻拭い
麻理子さんはテキパキと退会の旨を伝えると「いやこのまま退会でお願いします。いや、いいです! 申し訳ないですがトレーニングシューズは取りに行けないので処分してください」と千聖さんが二度とジムに行かなくていいように話を終わらせてくれたそう。

「本当に助かりましたが、31歳にもなって習い事が嫌になった尻拭いを友達にしてもらうなんて……本当に情けないですよね。もちろんその日の食事代は私が持ちました」とため息をつく千聖さんなのでした。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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