あらゆる面でひどい。中国アニメ映画『牛来』が逆に大ヒット

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 2026年夏。中国で公開された1本の3DCGアニメーション映画が、思いもよらない形で大ヒットを飛ばし、世界で話題になっている。

 ヒットの理由はゴージャスな映像でも推せるキャラクターでも感動のストーリーでもなく、人気声優でもない。

 その理由はただ一つ、ひどすぎたのだ。

 「ひどい!ひどい!」との評判が評判を呼び、怖いもの見たさで映画館まで見に行く人が急増したのだ。

「ひどすぎて逆に大ヒットしてしまったアニメ映画

 この作品は、2026年8月5日に中国で劇場公開された、86分の3DCGアニメーション映画である。

 タイトルは『牛来(ニウライ)』。中国語で「牛」は牛、「来」は来るという意味なので、字面通りなら「牛が来る」といった意味になる。

 とにかくどこを見ても、「ひどすぎる」「CGがヤバい」「AI生成の方がマシ」などと、見た人たちからは阿鼻叫喚の酷評の嵐。

 あまりにもひどすぎたせいで、逆に怖いもの見たさで見に行く人が増え、予期せぬ大ヒットとなってしまったのだ。

 まずはともかく、映像を見てもらった方が話は早い。全編見ようとすると1時間半近い大作(?)なので、とりあえず切り抜きを見てもらおう。

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 どうだろう。なんとも独特なキャラデザ。形容しがたい動き。

山なのか木なのかすら判別しがたい背景。

 もしかして黎明期のポリゴンアニメなのか?と思ってしまいそうなビジュアルなのだが、れっきとした2026年夏の最新作なのである。

子牛とヒバリの交流を描く心温まるストーリー?

 主人公は草原で生まれた子牛だそうだ。子牛は誕生後、なかなか立ち上がることができなかった。母牛は元気に育ってほしいという願いを込めて、その子に「牛来」と名付けたのだという。

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 やがて、砂漠を越えてやって来たヒバリに励まされた牛来は眠りにつき、ヒバリとともに夢の世界へ。

 当初、夢の中の牛来は臆病で、ヘビを怖がり、川を渡ることさえためらうような子牛だった。

 だが、さまざまな力に導かれ、出会いや試練を経るうちに、責任を引き受けることを学び、臆病な子牛から仲間を守る勇敢な牛へと成長していく。 

 とまあ、ざっくりといえば子牛の牛来の成長と勇気をテーマに描いた物語なわけだが、当初、この映画は興行的にも大失敗とみられていた。

あまりのひどさに逆に「観てみたい」人が続出

 この映画、公開当初はほとんど観客が入らず、ひっそりと上映されていたという。最初の10日間での興行輸入は、わずか7,700元(約18万円)ほどだったそうだ。

 もともと積極的に広告を打ったわけではなく、試写会や公開前の宣伝活動も、予告編すら作られなかったんだとか。

 事前に公開されていた宣伝素材と言えるものは、「国風萌系治癒路線」などとうたわれたこのポスターだけだった。

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 美しい水墨画風のポスターからは、いかにも中国らしい情緒あふれるアニメーションを想像してしまう。

 だが、実際にスクリーンに現れたのは、かなり趣の異なる…というか、ツッコミどころ満載の、3DCGのキャラクターたちだった。

 口さがないネット民たちからは、「このポスターで制作費を使い果たしたのでは?」などと言われる始末。

 だが、8月14日ごろになって転機が訪れる。『牛来』の極端に低い興行収入に気付いたネット民たちは、その映像や情報をがSNSなどで拡散し始めた。

 そしてその「ひどさ」が話題になると、さらに状況は一変した。「いったいどれほどひどいのか、自分の目で確かめたい」という人々が、映画館へ押し寄せたのだ。

 1日の興行収入は、なんと当初の1000倍以上に膨れ上がり、数日のうちに1000万元(約2億3,600万円)を突破するという異例の展開を迎えたのである。

 8月21日現在、公開17日目を迎えた『牛来』の累計興行収入は3684万元(約8億7100万円)を突破している。

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母と息子を中心に約5年かけて作った力作

 映像を見ると、自主制作のアマチュア作品と思ってしまいそうだが、『牛来』は国家電影局から正式な許可を取得し、配給会社を通じて全国の映画館で公開されたれっきとした商業映画である。

 ただし制作の中心となったのは監督を務めた信雨萌(シン・ユーモン)氏と、その母親の孫麗芳(スン・リーファン)氏の2人だけだった。

 信氏は監督のほかプロデューサーや声の出演などを担当。孫氏は脚本のほか、声の出演や劇中歌の作詞・作曲、歌唱まで手がけている。

 信監督が映画制作を思い立ったのは2021年初めのこと。

もともと2人が営んでいたのは内装・装飾工事の会社で、映画制作を専門としていたわけではない。

 同年、会社名を「大連璟園文化影視伝媒有限公司」へ変更して映像分野に参入し、中古のパソコンやグラフィックボードなども使いながら、約5年かけて86分のアニメ映画『牛来』を完成させたのだ。

 制作中には機材が故障したり、パソコンのマザーボードが焼損したりといったトラブルも頻発していたらしい。

 そんな苦労と長い年月の末に完成した『牛来』だが、映像を見た配給会社は、信監督に劇場公開を取りやめることも勧めたという。

 だが、信監督は苦労して完成させた作品を公開することを希望し、最終的に2026年8月5日、全国の映画館で上映が始まったのだ。

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人気が出すぎて偽公式アカウントまで登場

 突然注目を集めたことで、思わぬ騒動も起きた。『牛来』の公式を装う偽アカウントがSNS上に現れたのだ。

 無断で情報を発信したり、商業活動を行ったりするケースも出てきたため、制作側は8月16日、公式微博アカウント「電影牛来_」を通じて注意を呼びかけた。

 さらにネット上では、さまざまなパロディ作品が作られ始めた。アベンジャーズ風のロゴを入れた動画とか。

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 セリーヌ・ディオンの歌声が聞こえてきそうなポスターとか。

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 こちらは「千と千尋」ならぬ「千と千牛」とかいう、「日本歴代興行収入第1位」らしき映画のポスター。

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世界中に広がる一種の怖いもの見たさ

 この作品の「ひどさ」は中国国内だけでなく、世界にも紹介されて大きな話題になっている。

  • Twitterでこの映画の切り抜きを見たんだけど、最初はリンチっぽい悪夢系のアートアニメか何かだと思った(笑)
    • エンディング曲もお母さんが歌ってるんだよね。自分はけっこうグッときた
  • Bilibiliで見たけど、本当にそう。とにかくひどい。演出のチョイスも奇妙だし、いつまでたっても終わらない感じ
  • 自分は普段かなりの駄作でもいける方なんだけど、さすがにどこかで一線を引かないとな。でも、この狂気の中にちゃんと努力が感じられるなら、話は別かも
  • そこまで大ヒットってほどでもないと思う。この程度の興行収入なんて中国市場じゃ微々たるものだし。でも、本来なら稼げたはずの額よりは、間違いなくずっと多いけどね
  • 母親と息子が一緒にこれを作ったって話には心が温かくなる。だから全部が悪いってわけじゃないよ
  • 今の中国の動画プラットフォームって、モデルみたいな顔のAI生成コンテンツであふれてる。だからこそ、ここまで低クオリティな作品は、それ自体が逆に魅力になるんだと思う
  • この映画、あまりにも酷すぎてミームになって、今じゃ「興行収入をどこまで伸ばせるか」チャレンジみたいになってる。酷すぎて逆にウケるって、めちゃくちゃ笑える
  • そもそも、こんなにひどい映画がどうやって映画館の上映枠を取れたんだ? 映画館だって赤字になる商売をするわけないだろ
    • インタビューでは、息子の幼なじみがちょうどこの分野を担当する役所関係の人間で、友達の夢をかなえるために特別に手を回して、審査を無事通過できるようにしたって話が出てた。映画館の方も最近は客が少ないし、『牛来』を上映するのには金がかからないから、「損失を少しでも減らせれば、それが利益みたいなもの」って考えらしい

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 なお、信監督は、既に「次の長編映画『羊高(ヤンガオ)』を現在制作中!」とのこと。『羊高』も『牛来』と同様、監督と孫さんを中心に制作される予定だという。

 ネットでは『牛来(ニウライ)』というタイトルが、中国語で「強気相場が来る」を意味する「牛市来(ニウシーライ)」と似ていることから、縁起を担いで映画のチケットを購入する株式投資家まで現れ、思わぬ形で興行収入を後押ししたらしい。

 そして次回作の『羊高』も、「行情走高(相場が上昇する)」に結びつける言葉遊びも早速登場しているそうだ。

 次回作がどんな話になるのかはわからないが、「牛」が相場ならぬ興行収入を押し上げたとして、次の「羊」はどこまで行くのか。ちょっと気になるところではある。

 話題の『牛来』全編はYoutubeに「Niu Lai full movie 牛来完整电影[https://www.youtube.com/watch?v=5XdeI0cOWSs]」のタイトルで全編公開されているようで、再生数は110万回を超えている。

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References: 一觉醒来《牛来》票房又暴涨了!累计已超249万元,预测总票房1837.6万,外媒也关注到这部“手搓烂片”[https://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_33792850]

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