原料はペットボトル。プラスチックゴミを食べられるクッキーに変える驚きの技術
プラスチックゴミから作られたクッキー Image credit:SIU Carbondale Communications

原料はペットボトル。プラスチックゴミを食べられるクッキーに変...の画像はこちら >>

 不要になったペットボトルなどのプラスチックゴミから、人間が食べられるクッキーを作り出す驚きの技術が開発された。

 アメリカ、南イリノイ大学の研究チームが発表したこの手法は、高温高圧の特殊な装置でプラスチックを液状に分解し、それを遺伝子操作したイースト菌に食べさせて栄養素を合成させるというものだ。

 イースト菌が作り出したタンパク質などを3Dプリンターで成形して焼き上げるこの画期的なクッキーは、深刻化する地球の環境汚染と将来の食糧危機を同時に解決する手段になるかもしれない。

 この研究成果はアメリカ化学会(ACS)2026年秋季大会[https://acs.digitellinc.com/live/37/session/586399](2026年8月23日~27日)で発表された。

プラスチックゴミを分解しイースト菌の餌にする

 プラスチックの処理は現代社会における大きな課題であり、リサイクル可能であってもその多くは最終的に埋め立て地に送られている。

 そこで南イリノイ大学(SIU)カーボンデール校の化学技術者たちは、環境を汚染するプラスチックを人間の食糧に変える研究に取り組んだ。

 ペットボトルなどに使われる一般的なプラスチックであるポリエチレンテレフタレート(PET)には、炭素が豊富に含まれている。

 研究チームはまず、廃棄されたPETやトウモロコシの茎や葉などの農業廃棄物を「酸化的水熱溶解」と呼ばれる独自の手法で処理した。

 これは水と酸素を非常に高い温度と圧力で加熱し、硬い物質を炭素の構成要素である液状の細かい破片に分解する技術である。

[画像を見る]

遺伝子操作されたイースト菌が栄養を合成

 次に、この液状に分解されたプラスチック原料を、培養されたイースト菌(酵母)に餌として与える。

 プラスチックも食べ物も同じ炭素からできている点に着目した研究チームは、実験室の化学薬品を使うのではなく微生物の力を借りる手法を選択した。

 研究チームはあらかじめ、パン酵母でおなじみの様々なイースト菌の遺伝子を操作し、プラスチックや農業廃棄物から出た分子を好んで食べるようにプログラミングしておいた。

 分解された溶液を与えられたイースト菌は、プラスチック由来の分子を食べて、食品に必要な成分を作り出す小さな工場として働き、タンパク質や脂質、酸を合成する。

 さらに遺伝子操作された別のイースト菌は、バニラの風味を持つバニリンという有機化合物や、人間の体内でビタミンAに変わるベータカロテンといった色素まで生成する。

[画像を見る]

3Dプリンターで成形し、レンチンでクッキーが完成

 こうしてイースト菌が合成した栄養成分に、食物繊維、デンプン、甘味料などを混ぜ合わせることで、クッキーの生地が出来上がる。

 この生の生地を3Dフードプリンターにセットして層状に絞り出し、最後に電子レンジで加熱して固める。

[画像を見る]

 こうして「µBites(マイクロバイツ)」と名付けられたタンパク質豊富なクッキーが完成する。

[画像を見る]

味は?食べても安全なのか?

 誰もが気になるのはペットボトルから作られたクッキーの味だが、人間が食べたときの実際の味については今のところ不明である。

 成分分析の結果、有毒な化学物質や重金属などは含まれておらず安全に食べられるとデータ上は示されている。

 しかし、人間による試食テストを実施するための機関の承認を待っている状態であるため、まだ誰も食べていないのだ。

 それでも、目隠しでの感覚テストでは、香りが良く食感も優れていると高い評価を受けている。

[動画を見る]

宇宙空間や被災地の食糧危機を救う可能性

 この研究は、資源が限られた深宇宙探査に向けた食糧生産技術の確立を目指す、NASAの「Deep Space Food Challenge[https://www.nasa.gov/prizes-challenges-and-crowdsourcing/centennial-challenges/deep-space-food-challenge/]」の支援を受けて進められている。

 将来的には、月や火星のコロニーといった宇宙空間や、地球上の被災地、潜水艦など、資源が限られた過酷な環境での食糧生産に役立つことが期待されている。

 世界の食糧需要は2050年までに35~56%増加し、人口の約30%が飢餓の危機にさらされると予測されている。

 研究を率いるラヒル・ジャヤコディ准教授は、この微生物技術が将来の食糧危機を救う鍵になると考えている。

 クッキーのほかにも、代替肉や代替乳の製造に応用できる可能性を秘めた技術だという。

 実際においしいのか?長期的に食べても体に影響はないのか?

 まだまだ乗り越えなければならない様々な過程はあるが、もし我々が廃棄したプラスチックが食べられるようになれば、究極のリサイクルとなるだろう。

Amazon : BCC スペースフード たこやき SP-24

References: This cookie started its life as a plastic bottle - American Chemical Society[https://www.acs.org/pressroom/presspacs/2026/august/this-cookie-started-its-life-as-a-plastic-bottle.html] / This cookie started its life as a plastic bottle | EurekAlert![https://www.eurekalert.org/news-releases/1139678]

編集部おすすめ