「株式投資において重要なのは、成長余地のある割安な銘柄を買うこと」
そう話すのは、投資家VTuberのはっしゃんさん。日頃から株式入門サイト「株Biz」やYouTube「【株Biz】勉強会TV[4K]」などで株式投資に関する情報を発信し、最新の著書『50万円を10年で1億円にする株式投資』(SBクリエイティブ)では具体的な投資手法について紹介している。
最新の著書『50万円を10年で1億円にする株式投資』(SBクリエイティブ)。
後編となる今回は、はっしゃんさん自身が実践している投資手法や大切なルールについて聞いていく。
独自に導き出した指標「はっしゃん式理論株価」&「企業価値コア4条件」
早い段階から四季報や日経新聞などを読み、月次情報に注目して投資を行ってきたはっしゃんさん。現在もベースは変わらないものの、日々アップデートしているという。
「かつては四季報をくまなく読んでいましたが、2019年頃から株価が右肩上がりのものだけ読むように変えました。全部読むのがベストですが、銘柄も多いので、実際は難しいじゃないですか。なので、四季報の上部の株価チャートを見て、右肩上がりのチャートに付箋を貼り、その銘柄の情報を読んでいます。これができるようになったのは、長く投資を続けてきたからです。業績が伸び続けて株価が100倍になるような銘柄のほとんどが、右肩上がりだったんですよね」(はっしゃんさん・以下同)
右肩上がりの銘柄に絞って効率的に分析することは、投資初心者でもすぐに真似できる手法だろう。
「もうひとつ、私の投資判断において欠かせないのが独自で算出した『理論株価』です。決算書の財務指標や業績予測から算出した“本来あるべき株価”を指します。純資産や自己資本比率、利益をもとに妥当な株価を導き出せるのではないかと思い、自分ですべての銘柄を計算したものをはっしゃん式の『理論株価』とし、これより実際の株価が低ければ割安、高ければ割高株と判断しています。割安な銘柄を狙うと、高値掴みで損をする確率を下げられるので、自己流の『理論株価』を目安にする手法を編み出しました」
DCF法や配当割引モデルなど、理論株価の算出方法はさまざまなものがあるが、はっしゃんさんが導き出した「はっしゃん式理論株価」やその考え方は、「理論株価Web」で公開されている。
理論株価Web https://kabubiz.com/riron/
もうひとつ、はっしゃんさんが大切にしている軸が「企業価値コア4条件」。次の4つの条件のうち、2つ以上を満たす銘柄を選定していくというものだ。
●企業価値コア4条件
・正相関度:株価と理論株価が右肩上がりで連動していること
・割安修正:10年平均及び最新株価において割安であること
・持続成長:四半期単位の理論株価の増減回数8回以上(上場から6年未満は4回以上、3年未満は2回以上)及び理論株価が最高値圏(最高値比-15%未満)であること
・配当成長:四半期単位の配当の増減回数8回以上(上場から6年未満は4回以上、3年未満は2回以上)及び1株配当が最高値圏(最高値比-15%未満)であること
「4つの条件のうち2つ以上を満たす銘柄の約95%は、10年間で株価を上昇させていました。なので、この条件を満たすかどうかを投資判断の基準としています。『企業価値コア4条件』の特徴は、投資家の好みを反映できる点です。割安株が好きな人は『割安修正』とほかの条件ひとつ以上がマッチする銘柄から選定、成長株が好きな人は『持続成長』ともうひとつ、配当株が好きな人は『配当成長』ともうひとつといった形で判断していけます」
「企業価値コア4条件」も、「理論株価Web」の各銘柄のページで確認できる。
想定した利益を得るための「3年保有ルール」
ここまでは銘柄の選別法を聞いてきたが、株式を購入した後のルールも設けているという。そのひとつが「3年保有ルール」。
「長期保有するつもりで購入しても、思ったより株価が上がると『いま売って利益を確定させちゃおうかな』と思うものです。しかし、当初の方針と異なる売買を行うと、想定していた恩恵を受けられなくなるので、私は途中で売らないためのルールを設けています」
「3年保有ルール」はその名の通り、購入した株式は原則3年間売らずに保有するというルール。
「過去の経験から、3年間は保有して株価や業績を見ていかないと、成長を実感できないと思います。企業活動を1年間通して見ていくと、四半期ごとに決算が出て、株主総会が開かれるというスケジュールで動いていくことがわかります。
また、3年間集中してひとつの企業の決算を読み、分析することで、その企業や業界への理解を深められる。
「中長期的な視点で見ていくと、やっぱり深められるんですよね。3年間ひとつの企業と向き合ったうえで新たな企業に投資することで、決算の読み方などもわかってくるので、さらに深めやすくなるはずです。少しずつ投資先を増やしていくと、いろいろな業界のことがわかってきて、ビジネスの基礎知識も増えていきます。仕事でもプライベートでも、さまざまな業界の人と話が通じるようになるというメリットもあります」
ちなみに、はっしゃんさんは3年間保有した株式の株価が2倍以上になっていればそのまま保有し続け、2倍に達しなかった場合は売却するというルールも設定している。また、すべての銘柄を絶対に3年間保有するというわけではないそう。
「投資シナリオの前提条件が変わった場合は、利益が出ていたとしても売却します。例えば、想定よりも成長が鈍化してしまい、値上がりが期待できなくなった場合などです。そこの見極めは大切だといえます。また、含み損が出た場合は、直ちに売却するようにしています」
売却のルールとしてはっしゃんさんが設定している「1円損切りルール」については、次の章で解説してもらおう。
実はもっとも重要な「損切り」に関するルール
「損切りのルールは、株式投資においてもっとも重要だと考えています。
●はっしゃん式損切り基準の目安
・購入から1カ月以内:買値の-5~-10%で損切り
・購入から1カ月後以降:買値を1円でも下回ったら損切り(1円損切りルール)
「購入から1カ月経ってもプラスにならないのは、買う時期を間違えている可能性が高いといえます。企業を見る目は確かで、しっかり銘柄を厳選したとしても、タイミング次第で上がらないことはあります。そのマイナスを回避するために『1円損切りルール』を設け、徹底することが大事です。有望な企業ほど希望的観測で保有し続けてしまいがちですが、そうこうしているうちに暴落して半減ということもあり得るので、損切りは機械的に行うことをおすすめします」
「1円損切りルール」があることで、定期的に保有銘柄の情報をチェックするようになり、その企業に対する興味も維持しやすくなるそう。
「新聞のスポーツ欄を見て大谷選手の打率とホームラン数を見るくらいの感覚でいいので、保有している銘柄の株価ぐらいはチェックしておきたいところです。基本的には成長を期待して購入している銘柄なので、ほったらかしでもいいのですが、“関心”と“無関心”の中間くらいの意識で投資を実践できると、続けやすくなるでしょう」
最後に、投資歴30年を超えるはっしゃんさんに、株式投資の魅力を聞いた。
「企業の株主になることで、経営側に近い視点で社会に貢献できるという点ですね。企業を所有する一員になることは間違いないことで、その企業が新技術や新商品を発表したり新しいチャレンジに動き出したりすると、うれしい気持ちになるんですよ。共感して出資している企業と一緒に、社会をよくする側の人間になっている、そんな心持ちで社会と関わると、不平不満を漏らすのではなく、どうしたら社会をよりよくしていけるかという視点を持てるのではないかと思っています」
独自のルールや指標を設け、株式投資を実践してきたはっしゃんさん。その手法を多くの人に共有しようという思いこそ、“どうしたら社会をよりよくしていけるか”という視点から生まれたもの。投資から得られたものは、資産だけではなさそうだ。
(取材・文/有竹亮介)

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