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 一時期、SNS上で猛威を振るった詐欺広告があります。「有名人が警察に逮捕された」という衝撃的な文言でユーザーの目を引き、悪質なサイトへ誘導するものです。

ひところに比べて落ち着いたかと思いきや、再びXのタイムライン上で同様の投稿を目撃したとの報告が相次いでいます。


 確認してみると、今回「逮捕された」とされているのは、実業家やタレントとして広く知られる、ひろゆきこと西村博之氏。外国人とみられるアカウントが投稿したネット記事風のサムネイルには、警察官2人に連行される同氏の画像が使われていました。


 しかし、西村氏が逮捕されたという事実は報道されておらず、投稿内容は明らかな偽情報。二次被害を防ぐためにも、その悪質な手口と誘導先の実態を詳しく探っていきます。


■ 「日経新聞」を偽装した大掛かりな“茶番”記事 ソフトバンク孫氏の名前も……

 問題の広告リンクをタップすると表示されるのは、大手メディア「日本経済新聞」のウェブサイトを模した偽のニュース記事です。


ひろゆき氏の「逮捕」を騙る偽広告 著名人を悪用した投資詐欺サイトを追跡
「日本経済新聞」のウェブサイトを模した偽のニュース記事


 記事によると、ひろゆき氏がニュース番組「報道ステーション」の生放送中に、自ら投資に利用しているという自動取引プラットフォームを紹介。それが原因で「無許可の金融取引を公に呼び掛けた」として、放送から37分後にスタジオで手錠をかけられ、連行・逮捕されたという、あまりにもでたらめなストーリーが展開されています。


 偽記事内で紹介されているプラットフォームの名称は「Taiseijyu Taku」。最低入金額の3万7500円を入金するだけで、3か月後には40万円にまで資産が増えるという、人工知能(AI)を利用したツールであると謳われています。


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資産が増える人工知能(AI)ベースのツールであるそうですが……


 さらに記事内には、ソフトバンクグループ取締役会長の孫正義氏まで登場。孫氏もこのツールを愛用しており、違法性はないと主張して利用を呼び掛けるという、著名人の名前を悪用した茶番劇が真面目な口調で書き連ねられています。


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ソフトバンクグループ取締役会長の孫正義氏まで登場

■ 「Taiseijyu Taku」を調査すると、さらに不審な別サイトへ即時移行

 誘導先である「Taiseijyu Taku」のページを開くと、大げさな数字が並ぶ、一見もっともらしい投資勧誘サイトが現れます。


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「Taiseijyu Taku」のページ


 「1日に14万3751円から32万4599円を稼ぐ」と謳う登録画面に、名前やメールアドレスを入力すると、瞬時に登録が完了しました。

するとすぐさま折り返しメールが届きましたが、記載されたURLの先にあったのは「西松フィナンシャル」という、先ほどとは全く別の名称を掲げる投資プラットフォームでした。


ひろゆき氏の「逮捕」を騙る偽広告 著名人を悪用した投資詐欺サイトを追跡
なぜか「西松フィナンシャル」という全く別の投資プラットフォームに切り替わる


 そこには、直前まで大々的にアピールされていた「Taiseijyu Taku」の文字やロゴは一切ありません。IDとパスワードを登録してログインすると、ダッシュボードや取引画面にも、すべて「西松」の名称が表示されていました。


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なぜか「西松フィナンシャル」という全く別の投資プラットフォームに切り替わる


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なぜか「西松フィナンシャル」という全く別の投資プラットフォームに切り替わる


 さらに調べると、「西松フィナンシャル」には、会社概要や取引商品を掲載した案内ページも存在。案内ページとログインページではURLが一部異なるものの、同じドメイン配下にあり、案内ページからログインページへ移動できる構成になっています。


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なぜか「西松フィナンシャル」という全く別の投資プラットフォームに切り替わる


 なお、「西松」の名を掲げる投資会社は実在していますが、今回確認した「西松フィナンシャル」とは無関係です。実在する会社側も公式サイト上で、自社ホームページを模倣した「実在しない証券会社の偽装サイト」について注意を呼び掛けています。


 その後も調査を進めると、登録したメールアドレスには、「250ドル(約3万9949円)の初回入金」を求めるメールが届いていました。最低入金額だったはずの3万7500円から地味に値上げされています。ひとたびここにクレジットカード情報などを入力して入金してしまえば、預けたお金や個人情報が戻ってくる可能性は限りなくゼロに近いと言えるでしょう。


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先方から届いたメール

■ 検索結果からも偽サイトへ到達 不審に思って調べた人が誘導されるおそれも

 さらに問題なのは、この偽サイトが広告のリンク先として使われているだけではないことです。


 実際にサイト名で検索すると、先に紹介した案内ページが一般の検索結果に表示されることを確認しました。検索結果には、あたかも正規の金融事業者であるかのような説明文が表示されており、広告を経由しなくても直接アクセスできる状態です。


 つまり、広告を見て不審に思った利用者が真偽を確かめようと検索した結果、かえって偽サイトへたどり着いてしまう可能性があります。


 なお、今回は“注意喚起を目的”として本文中でサイト名を紹介しています。このため興味本位で検索したり、アクセスしたりすることは避けてください。

■ WHOIS情報やメールの送信元から浮かび上がる不審な点

 その後も、このプラットフォームに関するネット上の評判や運営情報を調査すると、不審な点が次々と浮かび上がりました。


 まずはネット上の評判です。調査した範囲では、「実際に利益を得られた」と裏付けられる体験談や、信頼できる肯定的な評価は確認できませんでした。一方で、複数の検証サイトやネットユーザーからは、詐欺の可能性が高いサイトとして注意を呼び掛ける声が上がっています。


 次に確認したのは、ドメインのWHOIS情報です。偽サイトのドメインは2026年3月3日に作成されており、調査時点では取得から約4か月しか経過していませんでした。


 登録者名や実際の所在地は、プライバシー保護サービスによって非公開とされています。WHOIS上にはアイスランド・レイキャビクの住所が表示されていますが、これは登録情報を代理公開するサービス提供会社の所在地であり、実際の運営者がアイスランドにいることを示すものではありません。


 そのため、サイト上に記載された「東京都港区」という所在地についても、公開されたドメイン情報から裏付けることはできませんでした。


 また、日本国内の利用者に投資や金融商品を勧誘する事業者であれば通常確認できるはずの、金融商品取引業者としての登録番号や、監督機関に関する情報もサイト内では確認できませんでした。


 そもそも、サイト上にはたどたどしい日本語だらけ。まるで機械翻訳をかけたような不自然さが目立つほか、自動で送られてくる入金案内メールの送信者名が「桐ヶ谷 和人」という有名アニメキャラクターと同姓同名に設定されているなど、およそ正規の金融機関とは思えない杜撰な姿勢が見て取れます。

■ 投稿には「広告」または「ブースト」機能が使われている

 このような著名人の偽逮捕ニュースから不審な投資サイトへ誘導する手口は、投資や副業への関心につけ込んだ極めて悪質な詐欺スキームです。


 なお、今回確認したXの投稿には、いわゆる「広告」機能が使われていました。このほか、「投稿ブースト」機能を使用した同様の投稿を見たとの報告も寄せられています。何者かが広告やブースト機能を使い、意図的に多くのユーザーへ表示させているものとみられます。


 大切なお金や身分証明書などの個人情報を守るためにも、SNS上の衝撃的な見出しを鵜呑みにしてはいけません。少しでも「怪しい」「おかしい」と感じる点があれば、URLを開いたり、個人情報やクレジットカード情報を入力したりせず、冷静に情報の真偽を確認しましょう。


(山口弘剛)

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 山口 弘剛‌ | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2026071405.html
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