過去問を受験にどう活用するか。過去問の出版社・声の教育社代表の後藤和浩さんは「塾で演習授業が始まるまで過去問に触れてはいけないと考える保護者は多い。
だが、早めに見始めて出題傾向を分析するほうが得点力向上につながる」という――。
※本稿は、後藤和浩『親の「しんどい」が「大丈夫」に変わる 中学受験の味方』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■「不可侵領域」扱いされる過去問
過去問との接し方については、親御さんの中にちょっと誤解があるのかも、と感じることがあります。その誤解を解くことから始めていきましょう。
まず言いたいのは、過去問を特別視し過ぎないでくださいということです。
声の教育社として春や夏の中学受験イベントに出展するときに、よく見る光景があります。
並んでいる各中学校の過去問をお子さんがペラッとめくろうとすると、親御さんが「ダメ!」と厳しく制するのです。
売り物に勝手に触っちゃダメというのではなく、「然るべき時期が来るまで、決して過去問に接してはならない」という意識になっているのですね。
■保護者に知ってほしい「過去問の誤解」
それは、「先に見ちゃうと、解けるようになるから」というのが理由のようです。どうやら、合否の可能性を正確に判定するために、過去問にはギリギリまで手をつけないほうがいいと思われているようです。
たしかに、過去問をはじめて解いてみていい点数が取れたら、その学校に合格できる可能性が高いと考えるのは自然ですよね。
でも、過去問で合格点を取れたとしても、今年の入試で合格をもらえるかどうかはわかりません。
年度によって出題内容は変わるため、同じ問題が出るわけではないからです。
ですから、過去問は合格可能性を測るための「材料」としては非常に有効ですが、それだけに用途を限定してしまうのは、もったいない使い方なのです。
■目的は「過去問で点数を取る」ことではない
過去問には、「次はどんな問題が出題されるか」の具体的なヒントがたくさんあります。
知識自体を問うタイプの問題が多いのか、それとも思考させるタイプの問題が多いのか。一問一答式が多いのか、文章を書かせる記述式が多いのか。時事問題は出るのか、出ないのか。
そういった出題の形式や傾向は、過去問を分析することで把握できます。志望校の出題の形式や傾向がわかると、塾や家庭で勉強をしているときにも、子どもがより意識的に学習を進めることができます。
たとえば四字熟語を習うときに、「○○中でも入試に四字熟語がよく出るから、しっかり覚えよう」といった具合です。テストや模試を受けたあとに見直しをして、苦手な分野を把握するのと同じ作用が働くわけです。
学習をするなかで、その学びが志望校の合格に近づくためのものなのだと感じられると、子どもの意欲も上がりやすいでしょう。
つまり、過去問演習をするのは、「過去問で点数を取る」ことが目的なのではなく、「本番で点数を取れるようになる」ことが目的なわけです。

■“ラスボス”ではなく“お助けアイテム”
塾からは、過去問については「過去問対策」の授業が始まるまで(小6の夏休み明けまで)取り組まないように、と言われることが多いでしょう。
しかし、これは僕なりに解釈するなら、「解く」ことをしないでとの意味です。「見ておく」くらいは許容範囲と考えてもいいのではないでしょうか。
小6と言わず、小5でも小4でも、行きたい学校が見つかったら早めに過去問を「見ておく」のはまったく問題ないと僕は思っています。
過去問を“最後の最後に倒すべきラスボス”と特別視して、ギリギリまで取っておく感覚は根強いようですが、もっと柔軟に考えていいんですよ。
合否の可能性を測るというよりも、「どんな問題が出るのか」を知るのが過去問の最大の役割なのですから。
過去問は倒すべきラスボスじゃなくて、合格するためのヒントをくれる“お助けアイテム”です。出題形式や傾向の分析に使ってもいいですし、大問ごとにピックアップして演習問題として活用してもいいのです。
■分析のコツは「過去問を“横”に見る」
具体的な過去問分析の仕方を紹介しましょう。
出題の傾向をつかむためのポイントは、過去問を「横」に見ることです。
「横に見る」とは、2026年、2025年、2024年……といった具合に1年ずつ遡り、年度ごとに問題の同じ箇所――たとえば算数の「大問1」など――だけを見比べることです。
すると、「算数の大問1は(3)に必ず逆算が出ているな」「国語の最後の大問は文学史が出ているな」と、その学校がどんな種類の問題をどんなふうに構成しているのか、特徴が見えてきます。

さらに、「国語の大問3では毎年『韻文』が扱われているけど、去年は俳句、その前は詩、その前は短歌、その前は俳句、その前は詩……じゃあ今年は短歌だ!」といった具合に、出題の流れから予想を立てることもできます。
この使い方は、理科の4分野(物理・化学・生物・地学)の出題整理においても効果的です。
■親子一緒にゲーム感覚でヤマを張る
後者はいわば“ヤマを張る”ことですが、みなさんの中にも、高校のテストや大学受験の勉強でヤマを張ったことのある人はいるのではないでしょうか。
「今回のテストはこの問題が出るだろう」と、当たりをつけて集中的にそこを勉強するのは、時間が限られたなかでの作戦としては悪くありません。そして、実際にそれが出たら、「よっしゃ!」と嬉しくなりますよね。
中学受験の過去問の分析も、そのような感じで、ぜひ子どもと一緒に楽しく分析してほしいのです。当たるか当たらないかわからないゲームのような感覚は子どもの大好物ですから、きっと喜んでやってくれるはずです。
あまり堅苦しく考えず、子どもと一緒に気負わずに取り組んでみてください。
■解答形式から時間配分までヒントの山
出題の形式という点では、算数なら途中式を書かせるかどうか、解答用紙にあらかじめ単位(cm、円、分など)が記載されているかどうか、などもポイントです。
前者は答えを求めるプロセスも採点の対象になっているため、諦めずに何か書いておけば部分点を得られる可能性があります。
後者は解答用紙に記載がない場合に要注意です。単位を書き忘れると数値が正しくても誤答とされてしまうため、普段から単位まで書く癖をつけておく必要があります。

また、作図が頻出なら、募集要項で定規やコンパスの持ち込みが可能かどうかも確認しておくといいですね。
そのほかに気をつけたいのは、国語のテストで「漢字や用語を知っていれば解ける」知識問題がどこに置かれているかです。大問4や5といった最後のほうに設定されている場合は、時間切れで取りこぼすのを防ぐために、そこから先に手をつけるという作戦が有効です。
ただ、頭ではわかっていても、本番の緊張感の中で試験開始直後に最後のページを開くのはなかなか勇気がいるものです。だからこそ、普段から過去問に取り組む際に意識して練習しておきましょう。
さらに、後半に時間のかかる問題が用意されている傾向がある場合には、それを見越したペース配分で解く、という心構えもあらかじめ持っておくといいでしょう。
こうして見ていくと、チェックすべきポイントは意外と多く、過去問を見ること自体が本番での得点力向上につながるとおわかりいただけるかと思います。

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後藤 和浩(ごとう・かずひろ)

声の教育社 代表取締役

塾講師を10年経験したのち、声の教育社へ入社。編集者時代は年間500回以上の入試問題をひたすら解き、解説を編集するという日々を過ごす。息子の中学受験も経験。三度の飯より過去問が好き。首都圏を中心に中学・高校入試の受験情報の発信などを行っている。


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(声の教育社 代表取締役 後藤 和浩)
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