中古住宅を購入するときの注意点は何か。「不動産Gメン」として情報発信している滝島一統さんは「居住用不動産のプロ曰く、本当に重要なのは、購入後に高額な修繕費につながるサインを見抜けるかどうかだ」という――。
(第3回)
※本稿は、滝島一統『その家、買ってはいけない』(PHP新書)の一部を再編集したものです。
■家を買って満足する人、後悔する人
家を買いたいという気持ちはあるのに、なかなか動けない人がいる。「いつか」と思いながら、3年、5年と時間だけが過ぎていく。展示場を何度も回り、SUUMOで毎晩物件を眺め、ネットでローンのシミュレーションを繰り返しながら、それでも「まだ早いかな」と先送りを続ける。
「いつか」という日は、カレンダーには存在しない。何月何日に契約する、という日付が入って初めて、購入は現実になる。私はマイホームを購入することは、人生に喜びをもたらす行為だと思っている。欲しいから買う――その一点に動機が絞られているなら、後悔しない。
ただ、家を買うという行為には、知らなければ損をしてしまう罠がいくつもある。業者の詐欺トークに乗せられたり、物件の欠陥を見落としたり、資金計画を誤ったりすれば、夢のマイホームが人生最大の失敗のもとになりかねない。この記事では、「住む家」を買う際に、知っておくべき実践的な知識をまとめておきたい。
私が信頼する居住用不動産のプロにK氏という人物がいる。
居住用不動産の取引を専門とし、年間22億円規模を一人で動かす実力者だ。K氏は家探しの出発点についてこう言う。「家を買いたいと思ったら、最初にやるべきことは資金計画です。SUUMOで物件を眺めることでも、展示場に行くことでもありません」と。
■銀行は無理なく返済できる額を教えない
ところが現実には、「気に入った家を見つけてから真剣に考えよう」という人が多い。とりあえずSUUMOで検索してみる。あるいは、展示場へと足を運ぶ。
だが、これは根本的に逆だ。値札を見ずに美しい指輪を見せられて、気に入ったと思って値札を見てみたら数百万円だった、というのでは幸せになれない。
「世帯年収に対してローンがいくらまでなら組めるのか、そして組める上限まで借りることが本当に幸せかどうかを先に考えてほしいのです」とK氏は続ける。ローンの審査は銀行によって大きく異なり、A銀行では5000万円しか借りられなくても、B銀行なら6000万円まで通る、というケースもある。
銀行が貸してくれるというのだから、上限まで借りても十分返せるはずだと短絡的に考える人もいるが、銀行はそこまで親切に考えているわけではない。
我が家ならいくらが無理のない借入額なのかを判断するのは、ほかならぬあなた自身だ。
■「良い物件に出会えない」人の共通点
まず資金計画を固め、月々いくらまでなら無理なく払えるかを把握したうえで、上限を設定する。旅行にも行きたい、子どもに習い事もさせたい――そういう生活全体を見渡したうえで、住居費にかけられる上限を決める。この順番を間違えてはいけない。「いつ買うか」の期日を決めることも重要だ。気持ちはあっても、期日のない人は買わない。
それは行動に表われる。家族がいるのに、いつも一人で物件を見に来る人は、「本当に買う人」ではないと現場のプロたちは判断している。資金計画が決まり、エリアと条件の優先順位が固まれば、実は候補物件の数はそれほど多くない。
K氏によれば、条件を絞り込んだうえで住宅情報サイトを見ると、見に行くべき物件は多くて10件、たいていは5~6件、少なければ二択か一択になるという。その中から70点以上の物件が見つかれば、買う覚悟を持って動くことが肝要だ。
「広くて安くてきれいで便利な『100点満点の家』は存在しません。
何に妥協するかを先に決めておくことが大切です」とK氏は言う。そこがわからず何も妥協できない人は、幻の物件を探し続けることになる。
■周辺に「工場」がある場合は要注意
「今どき、ネットで物件の写真を見れば十分ではないか」と言う人がいる。K氏はこれを明確に否定する。「写真で判断することのリスクは大きい」と。不動産会社の担当者は、写真を撮るのが上手い。広角レンズを使えば、実際より広く見える。日当たりのいい時間帯に撮影すれば明るく写る。
隣にゴミ屋敷があっても、当然そちらに向けてシャッターを切ることはない。川沿いの道の、静かな午後に撮った写真は、平日の朝の通勤時間帯の騒音を伝えることはない。「特に工場は要注意です」とK氏は指摘する。会社員であれば、内見は土日に行くことが多いだろう。
だが、そのときに工場は休んでいる。
住み始めると平日に機械音や振動に悩まされる、というケースは少なくない。周辺に古い建物があれば、ゴミの管理状態も確認したほうがいい。「Googleマップである程度は確認できますが、現地に行けばわかることが段違いに多い」とK氏は言う。
これには私も同意する。不動産は足で情報をつかむものだ。賃貸でも購入でも、自分の目と足で確かめることに代わるものはない。
中古戸建ての内見において、何を見ればいいか。K氏に教えてもらったポイントを紹介しよう。
■「天井と壁の隅」を必ずチェックする
まず、外から見る。周辺環境の確認だ。騒音源になるものが近くにないか――学校・工場・幹線道路。
隣家との境界に越境物はないか。駐車スペースのコンクリートに大きなヒビ割れはないか。「ヒビは大きさを見てください」とK氏は言う。
コンクリートの性質上、髪の毛1本ほどの細いヘアクラックは入って当然で、問題ない。だが幅の広いヒビ割れが複数あれば、地盤や基礎に問題がある可能性を疑う必要がある。ヒビがあるからダメではなく、ヒビの大きさで判断する、ということだ。室内に入ったら、窓の開け閉めを確かめる。
木造の古い建物は経年で歪み、窓がスムーズに動かなくなることがある。建付けの確認だ。次に天井と壁の隅を見る。クロスの汚れは中古なので当然あるが、問題はシミだ。一度濡れて乾いた跡のような茶色いシミがあれば、雨漏りや漏水の可能性がある。

「水が回ると構造体が腐食します。シミは最も重要なチェックポイントの一つです」とK氏は強調する。雨漏りの痕跡を見落として購入し、後から大規模な修繕が必要になるケースもある。床下の点検口があれば、開けて中を確認する。
■ペアガラスは断熱性・遮音性が段違い
現代の戸建ては基礎の構造にベタ基礎(床全面をコンクリートで覆う形式)を採用しているものが多く、湿気が上がりにくく、排水トラブルにも対応しやすい。サッシがペアガラスかどうかも確認しておきたい。「ペアサッシが入っていれば、大きなチャームポイントです」とK氏は言う。断熱性・遮音性が大幅に高まる。
ガラスは後から容易に交換できないため、初めからペアサッシが入っている物件はそれだけで価値がある。バルコニーや屋上がある物件は、防水状態の確認が必要だ。「防水状態は紫外線で劣化します。前の所有者がいつメンテナンスしたかを必ず聞いてください」とK氏は言う。屋上の防水状態が劣化して放置されると、そこから水が侵入して大きな被害になる。
防水のメンテナンス履歴がない場合は、購入後すぐに施工することを前提に資金計画に組み込んでおくべきだ。フローリングの表面の傷や汚れは、中古であれば当然ある。問題ではない。だが引越し前にリフォームするかどうかの判断は、内見時にしておく必要がある。床の張り替えは生活しながらの工事が難しく、「入居前にやるか、やらないか」を決める機会は、事実上内見時にしかない。

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滝島 一統(たきしま・かずのり)

不動産インフルエンサー/株式会社光文堂インターナショナル代表

1976年、東京都生まれ。明治大学商学部卒業後、ミサワホーム入社。25歳の時に渋谷区初台に不動産会社光文堂インターナショナルを設立。2011年より海外不動産事業にも進出。2022年6月、YouTubeチャンネル「不動産Gメン滝島」をスタート。不動産業者に騙されないための情報、物件の見方など、ユーザー目線の情報をコワモテで語る動画が人気を集め、登録者数70万人を突破した。毎回、不動産の知識がない人が損しないための情報を発信している、不動産業界ナンバーワンのインフルエンサー。

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(不動産インフルエンサー/株式会社光文堂インターナショナル代表 滝島 一統)
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