■ほとんどの銀行の預貯金を上回る金利
昨今の金利上昇の中、個人向け国債の金利もうなぎ登りで、タイプによっては2%に迫る金利をつけています。その金利水準は、ほとんどの銀行等の預貯金を上回るといってもよいでしょう。
そんな中、私は先日、個人向け国債の変動金利10年物(2026年6月発行分)を、みずほ証券で500万円分購入しました。その購入に当たって、私は、どのタイプを、いつ、いくら、どこで買うか……をどういった基準で考えたのか、今回は、そんな私の個人向け国債購入の経緯を書いてみたいと思います。
個人向け国債は、その期間と金利(変動or固定)に応じて、変動金利10年物、固定金利5年物、固定金利3年物の3タイプがありますが、同じ時期に発行された場合でも、それぞれ金利水準が異なります。
たとえば、私が購入した2026年6月発行分(5月募集分)の金利は以下のとおりです。
■金利上昇期のセオリーとは
金利だけを見れば5年物が一番高いですが、5年物は固定金利なので、5年間ずっと金利は変わりません。
ですので、もし、これからますます金利が上昇すれば、相対的に低い金利で5年間も縛られることになってしまいます。一方で、変動金利であれば、世の中の金利が上がれば、その適用金利も上がるので、金利上昇リスクは抑えることができます。
ですので、いまのように、世の中の金利が上がっている(上がりそうだと予想する)ときには、変動金利か、固定金利であれば期間の短いタイプを選ぶのがセオリーとされています。
ちなみに私は、いまの金利上昇圧力は相当強いとみています。
つまり、個人向け国債においては、変動金利一択というのが、私の判断です。変動金利10年物の金利は、固定金利5年物に比べれば少々低くはありますが、それでも、一般的な銀行預金と比べれば、十分な水準と言えるでしょう。
■いつ、どのタイミングで買うか
個人向け国債は毎月発行されますが、そのときの金利状況に応じて、毎月、金利は異なります。ですので、購入した翌月発行分の金利は、自分が買ったときの金利よりも上がるかもしれませんし、下がるかもしれません。もし、翌月発行分の金利が上がれば、(もう少し待っておけばよかったと)悔しい思いをするでしょう。
とくに固定金利5年物だと、その金利は5年間変わらないので、金利差や購入額によっては相当な差となるわけですから。もし、翌月発行分の金利が0.2%上がっていたなら、購入額500万円の場合、その差は5万円(500万円×0.2%×5年間)にもなります。
もっとも、変動金利タイプなら、購入後も、世の中の金利状況に応じて適用金利は見直されるので大丈夫……と言いたいところですが、実は、その金利が見直されるのは半年ごとです。つまり、変動金利タイプでも、半年間は、金利は変わらないのです。
もし、翌月発行分の金利が0.2%上がったなら、購入額500万円の場合、その差は5000円(500万円×0.2%×0.5年)ですから、ちょっと美味しいものが食べられるくらいの差となりますね。ですので、変動金利タイプであっても、購入直後に金利が上がればそれなりに悔しく、購入するタイミングには悩むわけです(少なくとも、私は悩みました)。
■エイヤと買った、その理由とは?
私が購入した時点(2026年6月発行分)での、個人向け国債(変動金利10年物)の過去1年間の金利推移は図表2のとおりです。
いま、金利は上昇傾向にあり、この上昇が続くと思うのなら(そして、さらに上げ幅が大きくなると思うのなら)、待てば待つほど、高い金利が望めるので、待てばよいでしょう。
ただ、それだといつまで経っても買えませんよね。実際、個人向け国債の金利が、預金金利と遜色なくなってきた1年程前から、私は購入のタイミングをうかがうも、グングン上がる金利を見ながら、「もうちょっと待てば」……となかなか買えませんでした。
■購入が1カ月遅れる損失は0.14%
しかし、これだけ金利が上がってくると、買っていれば得られるであろう利子が得られないという、機会損失が大きくなってきます。
金利が1.67%なら、購入を1カ月遅らせると、その機会損失は約0.14%(1.67%÷12カ月)です。
一方で、購入を1カ月遅らせることによって、その翌月発行分の金利が年率0.3%上がったとしても、(当初の金利が変わらない)半年間での差は0.15%(0.3%×0.5年)ですから、その機会損失と変わりません。であればと、ウジウジ悩むよりも、もう買ってしまおうと、エイヤと買ったのでした。
金利の先行きは、誰にも分かりません。
一方で、1カ月、2カ月、3カ月と(購入をずっと見送り続け)資金を寝かしたままでいれば、機会損失が発生することは、明らかに分かっています。
であれば、少なくとも、その機会損失を避けるべく、資金が準備できたタイミングで買うべきだと思ったわけです。また、金利動向に一喜一憂し、どのタイミングで買えばいいのか……とずっと悩み続けるより、エイやと買ってしまった方が、精神衛生上良いことも言うまでもありません。
■購入後に金利は上がっても後悔なし
ちなみに、私が購入した翌月発行分(2026年7月発行分)の金利は1.74%と、私が購入したとき(2026年6月発行分)の金利1.67%よりも上がりました。もっとも、その上げ幅は年率0.07%なので、半年間では0.035%です。
一方で、(金利が上がって悔しい思いをするのが嫌と)購入を1カ月遅らせていれば、前述のとおり、その機会損失は約0.14%(1.67%÷12カ月)ですから、この場合、機会損失のほうが大きいですね。
ですので、今回は、エイやと買ってしまって正解だったわけです。もっとも、それは結果論ではありますが、たとえどのような結果(金利動向)であっても、後悔はしていなかったと思います。
ちなみに、先日発表された2026年8月発行分の金利は1.80%と、7月発行分からさらに上昇しましたが、その上げ幅はそれほどまでではなく(機会損失のほうが大きい)、やはり、エイヤと買っておいてよかったと思っています。
■金額はなぜ、500万円だったのか?
私は常日頃から、預貯金については、少しでも高い金利を求めています。ですので、預けている定期預金が満期を迎えれば、その時点で、一番金利の高い銀行(信金・信組)を探し、そこの預金に預け替えるようにしています。それが今回、この春に満期を迎えた定期預金の預け先を探していたところ、個人向け国債の金利が、(私の調べた限り)どの銀行の1年物定期預金よりも高い状況だったのです。
そして私は、個人向け国債の購入額は「投資枠」ではなく、「預貯金枠」として捉えています(※)。それゆえ、その満期を迎えた定期預金は、迷いなく、個人向け国債の購入に充てたというわけです。
今回、私が個人向け国債を500万円購入したのは、たまたま、その満期を迎えた定期預金が500万円だったということです。
※後述しますが、個人向け国債には、国の元本保証があるので
■購入先の決め手は、キャンペーン
個人向け国債は、銀行、証券会社、ゆうちょ銀行、JAバンクなど非常に多くの金融機関が取り扱っており、そしてどこで買っても、その商品内容には変わりありません。そこで、私が購入先を選ぶ決め手としたのが、キャンペーンでした。
金融機関の中には、個人向け国債を購入した人に、(一定条件を満たせば)キャッシュバックなどの特典を付与するキャンペーンを実施しているところも珍しくないのです。どうせ買うのなら、お得なキャンペーンが受けられるところにしようと考えるのは、自然な発想でしょう。
ちなみに、キャンペーンの内容は金融機関によって様々です。たとえば大和証券では、個人向け国債10年物を購入すれば、1万6000円ものキャッシュバック特典がありました。これはキャッシュバック金額が大きく魅力的でしたが、その購入金額は1000万円と予算的に厳しく、断念。
一方、SBI証券では、購入金額50万円からとグッとお手軽でしたが、キャッシュバック金額はわずか500円。もっとも、購入金額100万円で1000円、購入金額200万円で2000円と、その購入金額に応じてキャッシュバック金額も上がり、(私の予算額である)購入金額500万円では5000円でした。
他にもいろいろと探した結果、最終的に、私の購入条件(個人向け国債10年物を500万円購入)でのキャッシュバック金額が7000円と最も多かった、みずほ証券に決めたのでした。
※キャンペーン内容は、いずれも、私が購入した当時のもの
■銀行預金より有利になった個人向け国債
以上、私の個人向け国債購入の経緯でしたが、もちろん、個人向け国債の買い方に「正解」はありません。
中には、「いや、金利はしばらく上がらない、だから一番金利が高い5年物を買うぞ」や「5年も10年も国にお金を貸すのは不安だ、せいぜい3年物だな」など、さまざまな意見もあることでしょう。
今回は、あくまでも私の考え方に基づいた購入事例ではありますが、個人向け国債の購入に迷っている人には、少しでも、参考になれば幸いです。そして最後にはなりましたが、あらためて、個人向け国債の概要について、以下に示します。
個人向け国債は、国が発行する債券なので、(我が国の財政状況には警鐘を鳴らす専門家もいますが)一般的には、その信用力・安全性は非常に高いとされています。また、債券を(満期まで保有せずに)中途換金する際には時価での売却となり、元本割れのリスクがあるのですが、個人向け国債は、中途換金時には国が額面で買取ってくれるので、元本割れリスクはありません。
そして冒頭で書いたように、いま、個人向け国債の金利はうなぎ登りで、ほとんどの銀行預金を上回る水準となっています。とくに昨今の金利上昇局面においては、(購入後、世の中の金利が上がれば、連動して適用金利が上がる)変動金利型の10年物が注目されています。
すなわち、個人向け国債は「守り」と「攻め」の両方に優れた商品であり、また、その買いやすさ(多くの金融機関で取り扱っている)から、多くのファイナンシャルプランナーが推奨しています。
そして私自身も、相談やセミナー、執筆において大いに推奨しております。ですが、昨年末くらいまでは、個人向け国債よりも金利の高い銀行預金等も少なくありませんでした。
それゆえ、(少しでも高い金利を追い求める)私は個人向け国債を勧めながらも、実は、自身の安全資産については、そんな高金利の銀行預金等にばかり預けており、少々後ろめたく思っていました。
それがこの1年間で個人向け国債の金利は急上昇、いまや、個人向け国債の金利に軍配が上がる状況となっているわけです。これでようやく、私は個人向け国債を安全資産の一角として活用することができるようになり、これからは堂々と、個人向け国債を勧めることができるとホッとしております。
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藤原 久敏(ふじわら・ひさとし)
ファイナンシャルプランナー
1977年大阪府大阪狭山市生まれ。大阪市立大学文学部哲学科卒業後、尼崎信用金庫を経て、2001年に藤原ファイナンシャルプランナー事務所開設。現在は、主に資産運用に関する講演・執筆等を精力的にこなす。また、大阪経済法科大学経済学部非常勤講師としてファイナンシャルプランニング講座を担当する。著書に『株、投資信託、FX、仮想通貨… ファイナンシャルプランナーが20年投資を続けてみたらこうなった』(彩図社)など。
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(ファイナンシャルプランナー 藤原 久敏)

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