良好な親子関係を築くためには、どんなコミュニケーションが有効なのか。元小学校教員で子育てコーチの潮田学さんは「多くの現代人は効率主義や成長主義といった、外の世界の基準に翻弄されている。
その結果、自分の本音を置き去りにし、良かれと思って子どもをコントロールしようとしてしまう場合がある」という――。
※本稿は、潮田学『「あなたのため」をやめましょう 親のエゴを手放せば子どもは動き出す』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■現代人に強く根付いている“外側の基準”
本書では、ここまで、私たちが過去に受けてきた教育の傷や、そこから形づくられた「呪縛となっている3つの中核信念」について見てきました。
しかし、ここで無視できないもう一つの要素があります。
それは、私たちの中に強く根付いている“外側の基準”です。
今この瞬間、私たちが生きている外側の基準(現代の社会システム)そのものが、私たちの「エゴ」をさらに強固にし、子どもへの純粋な愛情を覆い隠してしまっているのです。
それを一言で表現するならば、多くの現代人が侵されている「頭でっかち症候群」です。
■「良かれと思って」子どもをコントロール
本書で定義する「頭でっかち」とは、「認知のすべてが外側の世界にのみ向けられ、自分の内側の本音(感覚・感情・願い)が完全に遮断されている状態」を指します。
私たちは、成果や効率、成長といった価値観が当たり前とされる、資本主義という巨大なOS(基本ソフト)の上で生活しています。
そして、このOSは、常に私たちに「外側」を見るように強制しています。
・自分の心がどう感じているかよりも、「効率」がいいのはどちらか

・自分たちが何を大切にしたいかよりも、どんな「成果(数字)」が出るか

・目の前の子どもがどうあるかよりも、「他者と比較」して優れているか

・自分の直感が何を伝えているかよりも、世の中にある「最適解(正解)」は何か
このように、意識のすべてが「外側の基準」に向いてしまうと、私たちの視界は曇り、自分や、目の前の子どもが見えなくなってしまいます。
外側の基準から外れることを極端に恐れ、常に不安にかられてしまう。

これが「頭でっかち症候群」です。外の世界の基準に翻弄され、自分の本音を置き去りにしたまま、私たちは「良かれと思って」子どもをコントロールしようとしてしまいます。
■「そんな無駄なことしないで」
ここからは、いくつかのチェック項目を通して、あなた自身の中にどれくらい「外側の基準」が入り込んでいるのか、一緒に見ていきましょう。
①効率主義の影響:効率的なものは良い、非効率なものはダメという価値観を植え付ける。子どもの非効率的な言動や試行錯誤、その過程にある失敗を「無駄なロス」と感じ、最短ルートを強要していませんか? よくある口癖をあげるので、チェックしてみてください。
よくある口癖

「そんな無駄なことしないで」

「だから最初からこうすればよかったじゃん」

「ボーッとしてる暇ないよ」

②成果主義の影響:成果が見えるものが良い、成果が出ないものはダメという価値観を植え付ける。テストの点数や習い事の合否など、目に見える数字だけで子どもの価値を判断していませんか?
よくある口癖

「で、結果は?」

「何点だったの?」

「偏差値いくつなの?」

■「もっと頑張ろうね」
③成長主義の影響:常に成長し続けることが良い、立ち止まることや現状維持はダメという価値観を植え付ける。子どもが今できていることや、ありのままの姿を認めるよりも、「次は?」「もっともっと!」と、常に成長を求めていませんか?
よくある口癖

「もっと頑張ろうね」

「次はもっと上を目指そう」

「これで満足しないでね」

④正解主義の影響:外側にある「絶対的な正解」を探し、自分の感覚から目を逸らしていませんか? 目の前の子どもから答えを見つけることを忘れていませんか?
よくある口癖

「ネットにはこう書いてあったから」

「それじゃダメって専門家が言ってたよ」

「こうするのが正解なんだって」

⑤損得思考の影響:損か得かという計算で、子どもの今の喜びを奪っていませんか?
よくある口癖

「今やっておいたほうが得でしょ」

「それやってなんの意味があるの?」

「将来役に立つことをしなさい」

いくつチェックがつきましたか?
一つもない人はほとんどいないと思います。それだけ「社会の価値観」が私たちの当たり前になっているからです。まずはその影響に気づくこと。「当たり前」が「当たり前」じゃないのかもしれないという視点を持つこと。
そのことも本来の自分に戻っていく大切なプロセスになります。

■「あなたのため」の本音
あなたが頭でっかちになり、「こうあるべき」といった外側の基準に従い、振り回されるほど、「本来の子どもへの愛情(本音)」が見えなくなっていきます。
なぜなら、外側の世界(社会の期待や数字)からはみ出すことは怖いことだからです。
するとあなたは、自分の不安を鎮めるため、子どもを「外側の正解」に常に当てはめるようにしてしまいます。
「あなたのためを思って言っているのよ」という言葉は、実は「外側の世界に合わせてあなたが変わってちょうだい(そのほうが私が安心だから)」というエゴの裏返しなのです。
このことに気づくのは、とても痛みを伴う作業かもしれません。しかし、今あなたが「私は頭でっかちになっていたんだ」と自覚できたなら、その瞬間から外側の基準に従って生きる人生から一歩抜け出す準備が整っています。
本来、目の前にいるのは「あるがままの子ども」です。それを良い悪いと切り分けているのは、あなたの中にある“基準”にほかなりません。
■「当たり前」の正体
そしてその基準は、幼少期の体験だけでなく、今私たちが生きている資本主義という社会の仕組みにも、大きく影響を受けています。つまり、あなたが今「当たり前」だと感じているその価値観は、もともとあなたの中にあったものではなく、資本主義という仕組みの中で少しずつダウンロードしてきたものなのです。
それは、あなた自身そのものではありません。ましてや絶対的な正解でもありません。
あくまで、これまで生きてくる中で身につけてきた「ものの見方」や「捉え方の癖」にすぎないのです。

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潮田 学(うしおだ・まなぶ)

子育てコーチ・教育者

小学校教員として15年間、担任や特別支援級、通級指導教室などで多くの子どもと保護者に関わる。自身の学級崩壊の経験から、心理学・脳科学・コーチング等の人間理解を体系的に習得。コーチングスクールを経て独立し、現在は仲間と立ち上げた学習教室で塾長を務めながら親子関係改善の講座を提供している。Instagramでは子育ての声かけやマインドを発信し、フォロワーは8万人超(2026年6月現在)。親子関係を根本から整える「声かけ」と「心のあり方」をテーマに精力的に活動中。

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(子育てコーチ・教育者 潮田 学)
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