子どもを賢く自立した大人に育てるにはどうしたらいいのか。家庭教育コンサルタントの岩田かおりさんは「家事は勉強の土台で、子どもはお手伝いをすることで国語・算数・理科・社会の力が上がる。
そして、お手伝いのハードルを低くするためのとっておきの短い言い方がある」という――。
※本稿は、岩田かおり『お手伝いで自分から楽しく学べる子になる戦略的ほったらかし教育』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
■「チーム」になるために家事がある
大変な時期に助けてくれた人との絆は本当に強くなります。
仕事で考えてみるとわかりやすいと思いますが、自分がギリギリの状態で進めているプロジェクトを同僚が「手伝うよ」と言ってくれたら、とても感謝しますよね。逆に、自分の大変さを見て見ぬフリをされたら、腹立たしく思うはずです。
産後の時期に「夫が手伝ってくれなかった」ということが恨みとして残りやすいのは、ホルモンバランスにもよりますが、「大変な時期に、自分の気持ちをまったくわかってくれなかった!」という思いが原点になっているのでしょう。大変だったときに相手が協力してくれなかったことを人は根に持ちやすいのです。
言い換えると、大変な思いをしているときはチームとなりやすいタイミングでもあります。家事はチームをつくるためにとてもよいきっかけになります。
■買い物帰りの家族のオペレーション
わが家はリビングが2階にあります。夏の暑い日などに買い物から帰ってくると、もうクタクタ。スーパーでも歩き回っているし、子どもがまだ家にいるときは5人分の大量の食材を買い込んで腕がもげそうになっていました。

自宅に辿り着くだけでヘトヘトになっているのに、2階に荷物を持って上がる気力も体力ももうない。そんな自分が大変な思いをしているときに、家族の誰かがリビングのソファでゴロンとしていたら、とてつもなく腹が立ちます。
だから、私が買い物から帰ってくると、家にいる家族がバーッと玄関に集合して、買い物袋を冷蔵庫に運ぶというオペレーションになっています。冷蔵庫は何をどこに入れればよいかわかるように仕組み化しているので誰でも収納できます。
最初の頃は、私から「集合お願いしまーす!」と声をかけたり、子どもの好きなおやつを買ってきて「手伝ったらいいことがあるかも」と思わせたりする作戦をとっていました。
しかし、冷蔵庫に運び入れるオペレーションが当たり前になってくると、自分はチームの一員だという自覚が芽生え、自ら参加するようになります。
こうしたサポートが当たり前になった背景には、私自身も子どもたちが大変なときは全力で味方になってきたからだと思います。
絶対に遅刻できない日に、朝の仕度がバタバタしてピンチのときは、子どもを全速力で学校まで走らせ、私が荷物を自転車に乗せて並走したこともあります。学校指定の青いタオルがないのが前日の夜に発覚しても、なんとか開いているお店を探して、一緒に町内を駆け巡りました。そんなピンチを乗りきってきたからこそ、子どもたちも私が大変なタイミングで駆け寄ってくるようになったのではないでしょうか。
大変な時期をともに乗り越えてチームになっていくこと。これも家族の醍醐味です。

■家族は「関係の質」を高めて成長する
戦略的にほったらかす仕組みをつくっても、うまくいくかどうかは「深い信頼関係の有無」にかかっています。
子どもやパートナーが自分から家事に関わってくれるようになるためにも、「関係の質」を高める必要があります。
マサチューセッツ工科大学(MIT)のダニエル・キム博士が提唱した「成功循環モデル」をご存じでしょうか。これは、組織が成長し続けるためには「関係の質」→「思考の質」→「行動の質」→「結果の質」のサイクルを回すことが重要だという考え方です。
たとえば、子どもに「片付けをやってほしい」と思っているとします。
「子どもが自主的に片付けをする」は「結果」です。焦りや不安から、結果の質ばかりに目を向けてしまうと、
「声をかけても動画ばかり見ていて動いてくれない」

「目の前で自分が片づけていてもやろうとしない」
などとガミガミ言ったり、ピリピリしたりしてしまいます。結果が出ないことにイライラして、家族の関係もどんどん悪化します。
■自然に手伝いができる子にするコツ
それもそのはず。関係・思考・行動の質を無視して、「片付けしてよ!」と言っても子どもは動きません。子どもが自分から楽しく動くようになるのは、「関係の質」が育ってからだからです。
「関係の質」を高めるためには、家族が常に仲良しこよしというわけではなく、自分の意見をありのままに言い合える関係性が欠かせません。
時には議論もしながら、家族には何でも言い合える、いつでも頼れると思える「心理的安全性」を高めることが重要です。
その後、前向きに物事をとらえる「思考の質」が育ち、主体的なチャレンジにつながる「行動の質」が育ちます。「関係の質」→「思考の質」→「行動の質」ができて初めて「結果の質」につながるのです。
これが自分から積極的に行動する子になるための「グッドサイクル」です。
先ほどの例で言えば、まず親子の信頼関係を築くこと。対話をし、お互いを尊重し合います。すぐに手出し・口出しをしてしまうのをグッとこらえ、子どもを信じてみましょう。
関係の質が高まると、子どもは親の様子を見て「今、自分が片付けたらよさそうだな」と気づくようになります。すると、声をかけなくても子どもが片付けを始めます。自然と「結果」である「子もが自主的に片付けをする」に向かっていくのです。
「宿題をやらない」「手伝ってくれない」といった結果にばかり目を向けてしまったのなら、まず「関係の質」から見直してみてください。
■家族が動き出す「戦略的ひと言」
子どもや夫に家事を手伝ってほしいあまり、気持ちが先走り、「大変なんだから手伝ってよ!」「ちょっと! 見ていればわかるでしょう?」などと声をかけてしまうこともあるかもしれません。

こうした状態になっているのは、精神的な余白のなさも大いに関連しています。余白をつくっていくとともに、家族を巻き込むために声かけの工夫をしてほしいのです。
たとえば、私は「~だけ、して」とよく使います。
「大きいお鍋を持っていくから、テーブルだけ片付けお願いしまーす!」

「洗濯物だけ入れておいてくださーい」
こんな感じです。「テーブルだけ」ってなに? と我ながら思いますし、言いながらセコいなーと思ってはいますが(テーブルが片づけてほしい箇所のすべてですから)、「~だけ」と言われるとほんの少しのことのように感じるものです。そんな効果を期待して、「~だけ」を多用しています。
■「友達、どれだけいるん~?」
また、とんでもない量の子どもの靴が玄関に出ていたら、「友達、どれだけいるん~?」とすっとぼけたひと言をかけます。
嫌味は嫌味なのですが、ポップに言うのがコツ!
時々、イライラや鬱憤を溜めに溜めて、ドンと吐き出すように伝えている方がいます。第一声で「なんでこんなに靴が出ているの! 片付けなさいっ!」と叱ってしまう。それでは家族の関係性は悪くなる一方です。「また怒っているな」とスルーされるようになったり、子どもが親の顔色をうかがって過ごすようになってしまったり……。そんな状態は望んでいませんよね?
だから、溜め込む前に軽いひと声をかけていく。
そのひと声が大切なのです。

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岩田 かおり(いわた・かおり)

家庭教育コンサルタント

ママプロジェクトJapan代表取締役。幼児教室勤務、そろばん教室の運営を経て、「子どもを勉強好きに育てたい!」という想いから、独自の教育法を開発。「子どもを学び体質に育てる」と「親を幸せ体質にする」ことを目指し、親がガミガミ言わずに勉強好きで知的な子どもを育てる作戦『戦略的ほったらかし教育』を全国へ展開中。また、3児の母親で、『戦略的ほったらかし教育』を実践した子どもたちは、中学生で起業、経団連の奨学生としてインドへ高校留学、学費全額奨学金で海外大学進学、塾なしで慶應義塾大学合格など、3人とも自分で自分の道を切り開いてきた。『「天才ノート」を始めよう!』(ダイヤモンド社)がある。著書『自分から学べる子になる戦略ほったらかし教育』(ディスカヴァー)は、現在6万部突破のベストセラーに。

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(家庭教育コンサルタント 岩田 かおり)
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