※本稿は、後藤和浩『親の「しんどい」が「大丈夫」に変わる 中学受験の味方』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■勝負の夏、でも完璧でなくていい
小6の夏は「勝負の夏」「受験の天王山」などと言われ、親御さんもプレッシャーを感じることでしょう。
力をつけるのにとても貴重な時期であることは間違いありませんが、「完璧」を目指す必要はありません。学びきれずにこぼれた内容も、またあとで取り組むタイミングが必ずあります。
心がけてほしいのは、長い夏を「完走」させることです。
夏期講習で朝から晩まで勉強漬けの毎日が続きますので、子どもに「栄養」と「睡眠」をしっかりとらせることを第一にしましょう。
精神面でも、はっぱをかけるのは塾の先生に任せて、自宅は「休息の場」としてください。
連日のハードな勉強に疲れていて、勉強に身が入っていないようなときは、思い切って半日休みにして休息させたり、博物館などに行ってもいいかもしれません。
■受験生である前に小学生
とは言え、夏期講習から帰ってきて、ソファでだらけている子どもの様子を目の当たりにすると、親としては「こんなことで大丈夫なの?」と心配になりますよね。
先に結論を言ってしまいましょう。大丈夫です!
もちろん、気休めで言っているわけではありませんよ。
僕の知る限り、大半の子は、親に言われたり、周りの友達に誘われたりして塾通いを始めて、“なんとなく”中学受験をすることになります。
そもそも、受験生である前に小学生。遊びたい盛りの年頃ですから、勉強したがらないのはあたりまえです。
基本的には、中学受験をなかなか「自分ごと」にできない子がほとんどだと思って間違いありません。
■子どもの頑張りは目に見えない
なかには、精神的に成長が早かったり、うまいことスイッチが入ったりしてバリバリ勉強している(ように見える)子もいるかもしれませんが、ごく一部です。そのような子と、お子さんとを比べる必要はありません。
やる気がなさそうに見えても、子どもは子どもなりに、できる範囲で頑張ってくれているものです。
夏期講習にちゃんと通っていて、宿題などもなんだかんだやっていれば、十分に頑張っていると言えます。
そもそも中学受験しない子と比べれば何倍も勉強をしているのですから、すごいことですよ!
■「早く勉強しなさい!」と言いたくなったら…
親御さんはみな、お子さんの豊かな未来を願って中学受験に取り組んでいるはずです。にもかかわらず、中学受験のために親子関係にヒビが入ってしまっては、元も子もありませんよね。
先述した通り、子どもは「受験生である前に小学生」で、「子どもなりに頑張っている」もの。ですから親の側は努めて冷静に、温かく見守りたいところですが……。
「早く勉強しなさい!」
「こんな点を取るなんて、合格する気があるの⁉」
「やる気がないなら中学受験(塾)なんてやめなさい!」
つい、こんなふうに言いたくなってしまったことはないでしょうか。あるいは、もし言ってしまったことのある人がいたら、教えてください。
それを言われた子どもは、発奮して頑張ってくれたでしょうか?
■「時間」と「空間」をあけて感情を抑える
……残念ながら、そうはなりませんよね。それどころか、互いにヒートアップして、親子喧嘩に発展するかもしれません。
親に対して不信感を募らせたり、心を閉ざしたりしてしまうと、子どもは弱音を吐いたり頼ったりする先を失ってしまいます。そうなっては中学受験どころの話ではありません。
腹が立ってひとこと言いたくなる気持ちはよ~くわかるのですが、そこはぐっとこらえましょう。子どもをやり込めたところで、得られるものは何もありません。
そういった場合のアンガーマネジメントとしては、怒りの感情がこみ上げてきたら一瞬我慢して「時間」と「空間」をあけてみることが有効です。時間は十数秒でも構いませんし、空間も別の部屋に移動するだけで効果があります。
とにかく感情の波が少し引くだけでも、冷静に考え直せるようになるはずです。
■キレてしまったら「短く謝る」
……と、かく言う僕も、息子を傷つけてしまった経験があります。
ある単元について、本人は「しっかり勉強した」と言っていたのに、テストでは全然点数が取れていませんでした。それでついイラッとしてしまい、「『勉強した』と言っても、できるようになっていないならやっていないのと同じだ!」なんて言ってしまったのです。
落ち着いて考えてみれば、小学生は忘れっぽい生き物ですから、一度や二度の学習で定着するわけがありません。それにもかかわらず、理屈で押してしまったわけです。今思い返しても、本当にかわいそうなことをしたと心が痛みます。
翌日の朝一番。息子と顔を合わせるなり、「昨日は悪かったね、言い過ぎた」と短く謝りました。こういうときは言い訳無用。謝りの言葉自体も短く、謝るまでの期間も短く。とにかく謝罪の意思を示しました。
息子としては「許さないぞ」と思っていたかもしれませんが、謝るくらいしか僕にできることはありません。
偉そうに言っておいて翌朝すぐに謝るなんて、少々きまりの悪い思いをしましたが、だからこそ、「もう同じようなことを言わないようにしよう」と、自分への戒めになりました。
親だって人間ですから、思わず強い言葉が口から飛び出してしまうこともあるでしょう。そんなときは、できるだけ早いタイミングで謝ることをおすすめします。きっと次からは感情のブレーキをかけることができるようになりますよ。
■中学受験で「叱るべきタイミング」はない
感情に任せて「怒る」のは良くないにしても、「叱る」ことが必要な場面はあるのでしょうか?
僕は、基本的なスタンスとして、中学受験においては「子どもを叱ったほうがいいタイミング」はないと考えています(あくまで“中学受験においては”ですが)。
仮に、模試や塾のテストの結果を隠していたり、塾の先生に言われたことを黙っていたりするようなことがあっても、です。
嘘をつかれたり隠されたりすると、親は悲しくもなりますし、腹も立つでしょう。でも、「なぜそんなことをしたのか」の背景と、そのような行動を取った子どもの気持ちを想像してみてほしいのです。
■遊びたい盛りの子どもが“頑張れる”理由
先ほど、“なんとなく”中学受験に向かっていく子はたくさんいると書きました。“なんとなく”なのに、遊びたい気持ちを我慢して、塾に行って勉強するのはなぜでしょうか。
そこには、「親に行けと言われたから」だけでなく、「親にほめてもらいたいから」という気持ちも少なからずあるのではないでしょうか。
勉強して良い成績が取れれば、親は嬉しそうにほめてくれる。でも、そうでなかったらがっかりさせてしまうかもしれない。
逆に考えると、以前に親御さんが強く叱った経験が、「隠す」「嘘をつく」といった行動を引き出してしまった可能性もあるかもしれません。
■「答えを出す」のではなく「聞いてあげる」
もし、明らかに子どもの気が抜けていたり、塾の宿題をいいかげんにやっていたりして、ひとこと言いたくなったら。
叱りつけるのではなく、子どもと話をしてみましょう。「どうしたの?」と声をかけてみてください。
「疲れた」「もう勉強したくない」「つまんない」などと子どもが返してきたら、「そうなんだね」と、ひたすら話を聞いてあげてください。
子どもが言ってくることに対して、「解決しよう」「結論を出そう」と考える必要はありません。ただ「頑張っているね」と聞いてあげればいいのです。
安心して弱音を吐くことができれば、それだけで子どもはまた頑張れます。
■夏期講習の成果は遅れて出てくる
夏を通して頑張り抜くことができたらぜひ、「苦手分野が克服できた」とか、「長時間集中して取り組めるようになった」とか、お子さんの成長を見つけてたくさんほめてあげてください。
お子さんにとっては、これまでの人生でもっともハードな夏になったはずです。
そうそう、ひとつ覚えておいてほしいのは、夏期講習の成果は数字(偏差値や順位)にすぐには表れないということです。お子さんだけではなく、みんな頑張っていますからね。
この講習で得た力が発揮されるのは、応用問題を繰り返すことで個々の知識が結びついてくる秋以降です。夏休み明けのテストで順位が芳しくなくても、気を落とす必要はまったくありませんよ。
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後藤 和浩(ごとう・かずひろ)
声の教育社 代表取締役
塾講師を10年経験したのち、声の教育社へ入社。編集者時代は年間500回以上の入試問題をひたすら解き、解説を編集するという日々を過ごす。息子の中学受験も経験。三度の飯より過去問が好き。首都圏を中心に中学・高校入試の受験情報の発信などを行っている。
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(声の教育社 代表取締役 後藤 和浩)

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