※本稿は、後藤和浩『親の「しんどい」が「大丈夫」に変わる 中学受験の味方』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■家庭での「過去問演習」の注意点は?
小6の夏休みが明けると、いよいよ実践的な対策として、塾で「過去問」を使った演習が始まります。
ただし、塾の授業で扱うのは志望校の過去問題とは限りません。個々の志望校の過去問については、生徒ごとに添削していく形で進められるのが一般的です。
ですから、過去問対策の中心は家庭での取り組みになります。家庭で過去問演習を行うためのポイントや注意点をお伝えします。
まず、市販されている過去問題集は実際の入試で使う用紙よりも小さいので、解答用紙は本番と同じサイズに拡大コピーして使いましょう。
というのも、解答欄の大きさは、いわば“学校からのヒント”だからです。
特に記述式の問題では、その解答スペースの大きさから、正解として求められている文字数の目安がわかります(解答欄の7割くらいを埋めるようにするといいでしょう)。何%で拡大すれば実寸大になるかは、それぞれの過去問題集に記載されています。
問題用紙のほうはそこまで気にしなくても大丈夫ですが、解答用紙はぜひ実寸大にして使いましょう。
■解く順番は「最新年度から」か「古いものから」か
次に、僕もよく質問される「取り組む年度の順番」についてです。
もっとも古いものから順に進めていき、本番間近になって最新年度版に取り組む、という人も多いようですが、僕は違う考え方です。
まずは、「最新年度」のものから手をつけましょう!
なぜなら、次の入試と出題形式や傾向が一番近いのは、最新年度の問題だからです。
そもそも入試問題は、毎年少しずつ形式や傾向が変化していきます。過去のものを見比べてみると、古いものほど最新のものとは違いがあることがわかるでしょう。翌年の入試にもっとも近いのは、やはり最新年度の問題なのです。
最新年度のものを実際に解くと、「本番もこんな感じで問題が出されるのか」といったリアルなイメージをつかむことができます。
■2年連続で同じ分野が出ることはまずない
ただ、ここで言っているのはあくまで問われ方や答え方といった出題形式・傾向のことであって、「電流が出る」といった具体的な出題内容はまた別です。
むしろ、前年に問われた内容が、翌年にもそのまま出ることは基本的にありません(過去問を見比べてみるとわかるはずです)。
うちの息子も、第一志望の最新年度に出題されていた「星座早見盤」がよく理解できていなかったのですが、「今年の入試には出ないだろうから、もういいことにしよう!」と、僕もそれ以上は深追いさせませんでした。
こうした点から考えても、最新年度の過去問を「プレ本番」のように考えて、ギリギリまで大事に取っておくのはもったいない使い方だと言えます。
どうせ今年は出ないのですから、早めに手をつけて出題形式と傾向をしっかり把握し、本番に生かすようにしましょう。
■4科まとめて解く「リハーサル」は何回必要か
家庭での過去問演習にあたっては、「リハーサルのように4科まとめて解いたほうがいいだろうけど、なかなか時間が……」と悩む親御さんも多いでしょう。
4科まとめて解くと、1回分を解くだけでも合計3時間程度はかかります。それが何年分もあり、加えて併願校のものもと考えると、とてもじゃありませんが時間が足りません。
4科まとめて解くのは3~4回できればいいのですが、最低1~2回できればよしとしましょう。小6の11月くらいに一度経験しておけるといいですね。
その際は本番さながらに、入試当日と同じ時間割で取り組んでみてください。
我が家ではさらに、(家庭の空気を和らげるつもりで)僕が家にいるときは試験官役を演じ、「机の上には筆記用具以外を置かないでください」「終了の時刻になりましたので、筆記用具を机の上に置いて、手は膝の上に置いてください」などと、ちょっとそれっぽく声をかけたりして、休憩時間なども実際に合わせました。
■「解くだけ」で終わらせては意味がない
また、過去問は解くのにも時間がかかりますが、それだけで終わってしまっては、取り組む意味が薄れてしまいます。テストや模試と同じように、採点したあとは見直しをして、解説を読んで理解することが大切です。
そのようなプロセスも含めると、過去問演習にはかなり時間がかかることがわかります。教科ごとに小分けにして解くとしても、ある程度まとまった時間が必要になりますので、平日だと、やれても1科目程度ですよね。
ですから休日も最大限に使って取り組むことになりますが、秋から始めて入試本番までに何回週末を迎えられるかを数えてみると、思ったより少なくて、ちょっと青ざめるかもしれません。
直前になって「これ、終わらないかも……」と思い始めると、それだけで気持ちに余裕がなくなってしまいます。
そのあたりのスケジュール管理は、親の出番ということになります。解くだけでなく、解説を読んだり解き直したりといった時間の確保も忘れずに。
そして、解説を読んでも理解できない問題があったら、まとめて塾に持っていって、先生に教えてもらうように子どもに伝えましょう。
■第一志望は「2周」はしたい
そのようなきちんとした見直しが大事という点で、過去問演習は「量より質」です。
ただ、第一志望の学校の過去問については、2周はしておいたほうがいいでしょう。加えて、一般的には試験回によって出題傾向が変わることはないので、自分が受けない試験回にも取り組むようにしてください。
12月には2周目に取りかかれるといいですね。ただし2周目では、すべての問題に再び取り組まなくても大丈夫です。
1回目に取り組んだときにできなかった問題に付箋やしるしをつけておき、2回目はその問題や、正解したけどまだちょっと不安な問題だけを解くようにすると、時間を大きく節約できます。
■「完璧」を目指す必要はない
解けるようになった問題は、付箋を外してしまいましょう。
なかには、何度やっても正解できず、なかなか付箋を外せない問題も出てくるかもしれません。でも、すべてを完璧にする必要なんてありません。直前の時期まできたら、思い切って付箋を外してしまいましょう。
入試本番でも、何問か解けない問題があったとしても合格点には届きます。付箋がたくさん立った状態から、スパッとなくなると気持ちいいですよ!
完璧な状態で受験する子どもなんていませんから、完璧を目指す必要なんてないことを、忘れないでくださいね。
■初めての過去問は解けなくて当たり前
そうそう、9月の時点で「よし、ついに過去問演習だ!」と張り切って最新年度に取り組んで、ひどい点数だったとしても、落ち込む必要はありませんよ。
なぜって、点数を取れなくて当然ですから。
それまで受けていた塾の毎月のテストや模試といったものは、癖のない典型問題が中心でした。しかし、実際の入試問題は学校ごとに個性があり、まったく違うタイプの問題ばかりです。
ですから、9月頃に初めて志望校の過去問を解く段階では、はっきり言って点数が1ケタでもおかしくありません。
いざ過去問に取り組み始めてみて、我が子があまりに点数を取れないことにショックを受ける親御さんは毎年たくさんいらっしゃいます。
お気持ちはわかりますが、大丈夫ですから焦らないでください。子どもの学力が上がっていくのは、むしろここからです。
■子どもの学力は本番当日まで伸びる
ただし、その上がり方は順調な「右肩上がり」ではありません。また、時間や努力に比例して上がっていくわけでもありません。
9月から本番の時期にかけて、じりじりじりじりと、得点が上がったり下がったりを繰り返しながら、全体としてはゆるやかに推移していくのが一般的です。それを見ながら、親は相当ヤキモキすることでしょう。
しかし、多くの受験生は、最後の最後、直前の直前に、得点力が急上昇します。それまで長い時間をかけて蓄えてきた知識やスキルが、バラバラのところから一気に結びついて形になっていくのは、本番間近のタイミングなのです。
さらに言えば、1月に入り、入試の時期を迎えてからも子どもの力はまだまだ伸びます。むしろここからが本当の勝負どころかもしれません。実際の入試を経験し、場慣れしていくことも、得点力に大きく影響してくるからです。
その日がくるまで、親が我慢できるかどうかの勝負とも言えます。
■「最新年度で低得点」ならむしろラッキー
うちの息子も、第一志望校の過去問の国語が合格者最低点に届いたのは、年が明けてからのことでした(その後、また取れなかったりもしましたが……)。
僕の知り合いのケースでも、入試の1週間前に算数の過去問を解いたら30点も取れず、親子で青ざめたまま入試に突入したそうです。その結果、1回目は不合格でした。
それでも、「もう諦める……」と言うお子さんをなんとか励ましながら受験会場へ向かわせて、結局2回目のチャレンジで見事合格しました。
なお、入試前に取り組んだ過去問の別の回では80点くらい取れていたそうなので、要は、苦手な単元などがその年に出るか出ないかによっても結果が大きく変わってくるということです。
過去問は、過去問で高得点を取ることが目的ではなく、本番に生かすことが大事です。合格点に届かない回があっても、そこで把握した苦手や弱点を補強することで、本番での合格の可能性を高めればいいだけです。
初めて解いた過去問が絶望的な点数でも、1ミリも心配する必要はありませんよ。動揺はするかもしれませんが、それが最新年度だったなら、むしろラッキーと考えましょう。だって、その問題は本番ではまず出ないのですから。
ひとまず出題の形式や傾向だけはしっかり把握して、よしとしておきましょう!
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後藤 和浩(ごとう・かずひろ)
声の教育社 代表取締役
塾講師を10年経験したのち、声の教育社へ入社。編集者時代は年間500回以上の入試問題をひたすら解き、解説を編集するという日々を過ごす。息子の中学受験も経験。三度の飯より過去問が好き。首都圏を中心に中学・高校入試の受験情報の発信などを行っている。
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(声の教育社 代表取締役 後藤 和浩)

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