高齢になっても生き生きと過ごすには何を心がけるべきか。医師の和田秀樹さんは「『タバコと同じくらい体に悪い』と警鐘を鳴らす声が上がるくらい、健康・早期死亡リスクが高くなる行動がある。
いくら運動してもそのリスクは回避できない」という――。
※本稿は、和田秀樹『80歳から始めてよかった100のこと』(永岡書店)の一部を再編集したものです。
■1日8時間以上、座っている人は要注意
1日8時間以上、座っている人はご注意を。「タバコと同じくらい体に悪い」と警鐘を鳴らす声が上がるくらい、1日の座位時間が長いほど健康・早期死亡リスクが高くなり、いくら運動してもそのリスクは回避できないと指摘されています。
しかも、体勢をあまり変えずに同じところにずっと座ったままでいる「座りっぱなし」は、より深刻だというのです。
高齢になると、筋肉量が減って自分の体を支えるのもしんどくなってきますし、体力がなくなって疲れやすくなることもあり、どうしても座っている時間が長くなりがちです。それなら、意識的に座りっぱなしの時間を減らすしかありません。
座ってテレビを観るにしても読書をするにしても、勉強や趣味に没頭していても、こまめにブレイクを入れましょう。
■定期的に姿勢を変え、30分に一度立つ
● 定期的に姿勢を変える(肩を回す、足を組み直す、座り方を変えるなど)

● 座ったまま、足踏み・かかと上げ・足首回しをする(意外なことに“貧乏ゆすり”もよいようです)

● 30分に一度は、一瞬でも立ち上がる

● 1時間おきに下半身を動かす(腰を軽くひねるなどの軽いストレッチ、ふくらはぎをもむなどのマッサージ)
座りっぱなし対策のポイントは、主に足全体の血流を滞らせないことです。テレビのリモコンは手元に置かない、小さいコップで飲み物を用意して何度も注ぎに行くなど、こまめに動く工夫をしてみてはいかがでしょうか。
「行動が変われば習慣が変わる」(作者未詳)――心理学者のウィリアム・ジェイムズや、ヒンズー教の教えといわれている名言の一部。座りっぱなしを防ぐための行動が、健康によい習慣へとつながっていくのです。

■脳の老化を防ぐにはラジオが役立つ
脳の老化を防ぐには、ラジオが大いに役立ちます。ラジオを聴く時は、耳で聴いた言葉を想像力でカバーしているので、能動的に脳を使っているからです。想像力をかき立てられると、ワクワクしませんか?
この瞬間、脳内からオキシトシンが放出されて気分が高まり、心地よさが感じられます。脳科学者の加藤俊徳先生監修のもと行われた実験では、ラジオを聴き続けると脳が成長することがわかりました。
この実験は1カ月間、毎日2時間以上ラジオを聴いた結果、イメージを記憶として定着させる力と聴く力が強化されたというものです。このように、ラジオは脳や心を刺激してくれるのです。
ラジオ業界では、ご長寿のパーソナリティが今なお現役で活躍しています。「さて、みなさん」と始まる“浜村節”で有名なラジオ業界のレジェンド、浜村淳さんは90歳を超えてなお、MBSラジオの冠番組を50年以上続けています。
大阪のコミュニティFM局では、人生で初めてパーソナリティに挑戦したという90歳超えの女性もいます。こうした諸先輩方は、今日は何を話題にしようかと頭をフル回転させて、本人もきっと楽しんで話をしているのでしょう。
90歳になってもまだまだ力を発揮できるのだと、私たちに勇気を与えてくれます。
また、ラジオはテレビとは違って、自分に語りかけてくれているような気がしませんか? 老後の孤独感を和らげてくれるのもまた魅力のひとつです。
時に話の内容に共感したり、考えを巡らせたり……、ラジオは脳と心の“元気の源”といえるでしょう。
「私が付けるのはラジオだけよ」(マリリン・モンロー/女優)――寝る時に身につけているものを聞かれた時の彼女の答え。「シャネルN°5」と答えたほうが有名ですが、さみしい夜にはラジオが寄り添ってくれたのかもしれませんね。
■70代のテレビ視聴は平均5時間超
私はこれまでさまざまなメディアで、テレビの悪い面をさんざんぶった切ってきましたが、改めてお伝えしたいのは、テレビの使い方・視聴の仕方を改めようということです。まず指摘したいのは、「テレビの観すぎ」です。
総務省の調査(2024年)を見ると、70代のテレビ視聴(リアルタイム)の平均時間は5時間を超過しています。1日8時間睡眠としたら、活動時間の3分の1をテレビに費やしていることに。また悪いことに、テレビを観ている時は「座りっぱなし」になりがちです。
オーストラリアの調査(2008年)では、1日に6時間以上テレビを観る人は、まったく観ない人に比べて寿命が4.8年短くなることが明らかになりました。25歳以降に観たテレビ1時間ごとに余命が約22分縮む計算ですが、恐ろしいことだと思いませんか?
続いて、みなさん、「テレビを信じすぎ」です。信用するに足る番組もありますが、特に高齢者の健康に関する情報は間違いだらけ。垂れ流されるウソの情報を鵜呑みにしないように注意してください。

■自分の頭で考えながら観る
また、「かくあるべし思考」を植えつけたり、むやみに不安を煽ったりする番組も少なくありません。テレビに洗脳されないように、自分の頭で考えながら観るという意識も大切です。必要以上にテレビを観ない、適当な情報番組やワイドショーを観ない、テレビはボーッと観ない。
この3点を肝に銘じて、テレビとうまくつきあっていきましょう。できれば、インターネットテレビで好きな番組を観ることをおすすめします。自分の興味や意思を持って、視聴する番組を選ぶようにしましょう。
「いい質問ですねぇ」(池上彰/ジャーナリスト)――池上さんがテレビの情報番組で司会を務める際、よく発しているひと言です。「いい質問ですねぇ」と言われるような疑問を持ちながら、テレビを観るように意識しましょう。
■1つ1つ「できた」体験を積み重ねる
「疲れているからゴミ出しはあとで」「時間がないから銀行に行くのは明日に」などと、必要なことを先延ばしにしてしまう時、何かと理由をつけていませんか? 実はこの時、矛盾した認知が起こっています。
ゴミ出しも銀行に行くのも「やったほうがいい」のはわかっているのに、同時に、やると疲れるから、行く時間がないから「やらないほうがいい」と思ってしまう。そして、多くの人は「やらない」選択をして、「やる・やらない」の矛盾をなくそうとします。
ただ、やらないわけにはいかないので、次の方法を試してみてください。

●「5秒ルール」で動く
「やらないほうがいい」理由を考えてしまう前に、「5、4、3、2、1」とカウントダウンして、5秒以内に動き始めましょう。物理法則と同じで、動き出す時はエネルギーを使いますが、あとは小さい力で動き続けることができます。
●できることから先にやる
やることの優先順位はさておき、まずは「できること」から取りかかりましょう。わりと簡単にできることや時間のかからないこと、自分の得意なことから手をつけ、1つ1つ「できた」体験を積み重ねていくと、やる気が続きます。
順々にものごとが片づいていくので、気もラクになってくるでしょう。
年をとると、時間はあっても、どうしても体力や気力が落ちてくるので、疲れやすくなったり、何もしたくなくなったりすることがあるものです。だからこそ、考えるよりも先に行動に移す癖をつけましょう。
「見るまえに跳べ」(ウィスタン・ヒュー・オーデン/詩人)――向こう側に行く必要があるのに、足元を見て崖があったら、跳ぶのをためらうでしょう。前へ進むためには、時に考えるよりも先に、思い切って行動することも大切です。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)

精神科医

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。
東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。幸齢党党首。立命館大学生命科学部特任教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、40年にわたり高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。

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(精神科医 和田 秀樹)
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