■雪だるま式に増える「複利」の威力
複利で増やす第一のルールは、不必要に中断しないこと
──チャーリー・マンガー
こんな昔話がある。ある若い発明家が、宮廷で王様に最新の発明品を紹介した。その名もチェスという。王様は新しいゲームが気に入ったので、望むものは何でもやろうと発明家に言った。
すると、発明家はこう答えた。「王様、私が欲しいのはお金でも宝石でもありません。ほんの少しのお米だけでいいのです。チェス盤の1マス目に1粒の米を、2マス目に2粒の米を、3マス目に4粒、4マス目に8粒、というように64マス分のお米をいただければ」
王様はずいぶんと控えめな申し出に驚きながらも、にこやかに大蔵大臣を呼んだ。
大蔵大臣が米粒を渡しはじめると、王様が申し出をみくびっていたことがはっきりした。1列目の最後のマス目では128粒。2列目の最後のマス目では3万2768粒。
残酷な王様だが、賢明な判断だった。あのまま続けていれば、発明家に1800京(18に0を18個つけた数だ!)以上の米粒を渡すはめになったのだから。
この忌まわしき物語ほど、自然界でも一、二を争う偉大な力の威力をまざまざと見せつけるものはないだろう。ぼくたちは、この偉大な力をきちんと理解して、お金の富に恵まれた人生を築く旅に生かさなければならない。
その力とは、複利だ。
■お金が生んだお金が、さらにお金を生む
複利とは、最初の元本とその利子の両方に支払われる利子のことである。複利は投資額を加速度的に増やしてくれる(王様のチェス盤での米粒の増え方のように)。
わかりやすい例を挙げると、今日、1ドルを年率10%の複利で投資運用しはじめたとする。そうすると、10年後には1ドルが約2.6ドル、20年後には約6.7ドル、30年後には約17.4ドル、そして50年後にはなんと117ドル以上になる。図にすると一目瞭然だろう。
複利について、ベンジャミン・フランクリンは「お金がお金を生む。お金が生んだお金が、さらにお金を生む」といかにも彼らしい簡潔にして要を得た表現をしている。
■バフェットは複利装置の邪魔をしなかった
ウォーレン・バフェットは史上もっとも有名な投資家だ。おもしろいのは、彼の伝説的なキャリアが始まるきっかけが、おそらくハーバードビジネススクールから入学を拒否されたことにある点だ。
かわりに彼はコロンビア大学に入学し、そこで出会った名高い投資家のベンジャミン・グレアムに師事する。そして在学中に、自身の投資哲学の根幹を成す信条を持つに至った。その信条とは「本質的な価値」「安全域」、そしてもっとも大事な「複利の力」だ。
長く華々しい投資人生のなかで、彼の総資産は1300億ドル超に達したが、さらに驚きなのは、その大部分が60歳の誕生日以降に築かれたことだ。彼の総資産は30歳の時点で推計100万ドル、45歳の時点で2500万ドル、50歳の時点で3億7500万ドル、56歳の時点で10億ドルだった。
つまり、資産が10億ドルになるまでに約32年(ベンジャミン・グレアムの下で働きはじめた24歳から56歳の誕生日まで)かかったが、そこから1290億ドルに達するまでは、37年しかかかっていない。
史上最高の複利運用装置を生み出してからの彼は、その装置の邪魔をすることなく、ひたすら自分のかわりに働いてもらっていた。
■大事なのは時間をかけて保有し続けること
複利の力を利用しようとする人は、みなバフェットを見習うべきだ。つまり、もっとも大事な要素は年平均リターンではなく時間なのである。
ベストセラーの『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』(ダイヤモンド社)や『SAME AS EVER この不確実な世界で成功する人生戦略の立て方 人の「行動原理」が未来を決める』(三笠書房)の著者であるモーガン・ハウセルは明快に説明する。
「複利とはリターンを時間で累乗することですが、時間は指数です。だからこそ、それを最大化すべきなのです(※1)」
複利の力を最大限に活かすもっとも普遍的で魅力的な方法は、株式や低コスト分散ファンドといった流動性の高い資産に投資して、それを保有しつづけることである。ファイナンシャル・アドバイザーや金融の専門家が複利運用を語るときは、こうした資産への投資を指すことが多い。
■投資素人でもリターンを得られる
人はえてして少しでも高いリターンを得ようとして、株式銘柄や資産の完璧な組み合わせを見つけることに膨大な時間とエネルギーをかけたり、高い手数料を払ってそれをファイナンシャル・アドバイザーに依頼したりする。でも、もっとシンプルに、分散インデックスファンドを買って複利運用すれば、時間や労力やリスクの調整後でも長期的にもっとも理にかなったリターンを得られるし、それは数学的に見ても明らかだ。
市場を上回る実績や専門知識を持つプロの投資家でもない限り、たえずインデックスファンドのリターンを上回る運用をすることなど、まずできない。だからこそ、平凡なリターンを受け入れつつ、市場にいる時間を極力長くして莫大な報酬を得られるようにするほうが賢明なのだ。
ベストセラー『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』(ダイヤモンド社)の著者のニック・マジューリは、長期的なバイ・アンド・ホールド投資戦略の主唱者である。ぼくが、若いときの自分にいちばん伝えたいアドバイスは何ですか、と訊ねると、彼は、若いうちから貯蓄と投資に励む大切さだと答えた。
■22歳からS&P500に投資していれば…
早期からのひんぱんな投資は、お金の富を築く確実な方法なのだ。この方法が効率的な理由として、マジューリは「早期に投資したほうが、あとから投資するよりも増え方が大きいこと、(そして)複利で増やすほうが貯蓄で増やすよりも簡単であること」の2点を挙げた。早いうちに投資を始めれば、モーガン・ハウセルがその大切さを強調する「時間という指数」をしっかり味方につけることができる。
有名な格言を言い換えれば、「始めるのに最適な時期は20年前だった。その次に最適な時期は、今日である」のだ。
平均的なリターンでも長期複利運用することで、並外れた成果が得られる(※2)。
・1980年1月に22歳の人がS&P500銘柄に1万ドル投資した場合、現時点では、退職後の生活資金として100万ドルをゆうに超える金額を受け取れる(その間、配当金を再投資に回していた場合)。
・同じ人が、この初期投資のあとに毎月100ドルを積み立てていれば、現時点での総資産は200万ドルをゆうに超えている。
・また、毎月1000ドルを積み立てていれば、現時点での総資産は1000万ドル超になっている。
■複利を理解していない人は損をする
覚えておいてほしいのは、これらの数字を生み出すには、特別な投資知識も専門知識も洞察も必要ないことだ! 必要なのは、投資を始めること、時間を敵ではなく味方にすること。それだけである。
アルバート・アインシュタインが複利を「世界の8番目の不思議」と呼び、「複利を理解している人はそれで儲ける。
あなたはいっさい邪魔をせず、かわりに複利の魔法に働いてもらおう。
※1 Tim Ferriss, “Morgan Housel?The Psychology of Money, Picking the Right Game, and the $6 Million Janitor (#576),” The Tim Ferriss Show (podcast), March 5, 2022, https://tim.blog/2022/03/05/morgan-housel-the-psychology-of-money-transcript.
※2 Nick Maggiulli, “S&P 500 DCA Calculator,” Of Dollars and Data (blog), 2024, https://ofdollarsanddata.com/sp500-dca-calculator/.
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サヒル・ブルーム
作家、起業家、コンテンツクリエイター
隔週配信のニュースレター〈The Curiosity Chronicle〉を通じて、数百万人がその発信に触れている。SRB Holdingsのオーナー、アーリーステージ投資ファンドSRB Venturesのマネージング・パートナー。スタンフォード大学で公共政策学修士号、経済学・社会学学士号を取得し、在学中は4年間、大学野球部でプレーした。
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(作家、起業家、コンテンツクリエイター サヒル・ブルーム)

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