体型管理のコツは何か。元三菱商事でhandsoming代表の宮村和宏さんは「『なんとなくのYES』が、体型管理の最大の敵である。
三菱商事に勤めていた若手時代、おかずが美味しくてボリュームのある定食屋さんで『ご飯、大盛り無料です』と言われて、激務でもシュッとしている一人の先輩は無料だからと『YES』を言うのではなく、スマートな対応をしていた」という――。
※本稿は、宮村和宏『太らない 人生を変える体型管理戦略』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。
■仕事では絶対にしない判断を、なぜ食事ではしてしまうのか
何十億円ものプロジェクトを緻密に管理できる人でも、自分の数kgの体重はなぜか管理できない。
私が三菱商事で働きながら不思議に思っていたことの1つです。
仕事では、「無料だから」「みんながやっているから」「せっかくだから」という理由だけで意思決定することはまずありません。その選択に本当に価値があるのか、コストに見合うリターンがあるのかを冷静に考えます。
ところが、食事になると、その当たり前の判断が突然消えてしまうことがあります。
そのことを私が強く実感したのが、三菱商事の二人の先輩でした。
三菱商事に入社して間もない若手時代、「飲み会が続いてダイエットを諦めた」と語っていた完璧主義の長谷川先輩と、後日また話をする機会がありました。
「そもそも先輩、どうやって痩せようとしていたんですか?」と聞くと、先輩は事もなげに答えました。
「痩せるのは簡単だよ。太りやすいものを削ればいいって分かってるじゃん。
俺、ラーメン二郎が大好きなんだよね。あれ、めっちゃ太るからさ。だからダイエット期間中は二郎を我慢するんだよ。あれさえ我慢すれば、簡単に痩せるんだよね」

「でも先輩、それって辛くないですか?」

「そりゃ辛いよ。でも、痩せたいからさ」
先輩はそう笑っていましたが、私は心の中で「あっ、これ違うぞ」と考えていました。
もし二郎を我慢して一時的に目標体重を達成したとして、この先輩は一生ラーメン二郎を我慢できるのだろうか。
絶対に無理です。
あの中毒的うまさにハマッた人は、またどこかで強烈に食べたくなるはずです。そして、再び食べ始めれば確実にリバウンドします。
■「大盛り無料」へのスマートな返答
ここで、もう一人の先輩木村さんの話をさせてください。
木村先輩は、長谷川先輩と同じように激務をこなし、会食にもよく来るのに、いつも体型がシュッとしている先輩です。
木村先輩はストイックに飲み会を断るようなタイプではなく、美味しいものもお酒も大好きで、飲み会の場を全力で楽しむ人でした。

ある日、長谷川先輩と木村先輩を含む数人で、おかずが美味しくてボリュームのある定食屋に入ったときのことです。
店員さんが「ご飯、大盛り無料です」と言いました。
長谷川先輩は迷わず、「じゃあ大盛りで。無料なんだから。せっかくだし」と笑いました。一方で、シュッとしている木村先輩はというと、「僕は普通で」とスマートに答えていました。
■自分にとって価値が高いものは何か
木村先輩に「せっかくなのになんで大盛りにしないんですか?」と聞くと、先輩はこう答えたのです。
「この店でうまいのはおかずでしょ。別に米が特別うまいわけじゃない。だったら、米を大盛りにしても満足感も幸せもそんなに変わらないじゃん。俺はこのうまいおかずが食べられればいいんだよ。ここで余計にカロリーを摂っても、あんまり意味なくない?」
この二人の違いこそが、体型管理における「コスト」の捉え方の決定的な差です。

長谷川先輩は、自分にとって最も価値が高く「心的コスト」が甚大なものを削り、その一方で無料の大盛りご飯という「どうでもいい惰性のカロリー」を無意識に積み上げていました。
木村先輩は、うまいおかずや楽しいお酒は全力で味わう(価値を残す)代わりに、自分の満足感に貢献しない「無料だから」というだけの無駄なカロリーをあっさりと捨てていたのです。
■「なんとなくのYES」が体型管理の最大の敵
冒頭のエピソードで、太ってしまっている長谷川先輩が選んだ「無料だから大盛り」。
これは、多くのビジネスパーソンが無意識にやっている無駄なカロリー積み増し行動の典型です。
「無料ならもったいない」という感覚は理解できます。
でも、その判断の結果として毎回200~300kcalが追加されているとしたら、月に換算すれば数千kcal、体重にして1kg近い話になります。
問題は、「本当に食べたいから大盛りにした」のではなく、「無料だから反射的に大盛りにした」という点です。
この「なんとなくのYES」が、体型管理の最大の敵です。
さらに言うと、その無料で本当に得をしているでしょうか?
時間軸を広げてください。
その大盛りは無料です。ただ、それを頼み続けることによってあなたの体重は確実に増えていきます。
その体重増加によるコストは如何ほどでしょう?
ビジネスでは当たり前の思考で、たとえ瞬間的にプラスを得られたとしても、将来大きな負債につながる施策に手を出すことをあなたは許さないはずです。

その当たり前の思考を体型管理でも持つことがとても大切です。
そして、「なんとなくのYES」を、少しだけ「本当に食べたいか?」という問いに変える。
つまり、体型管理のために新しい能力を身につける必要はないのです。仕事ですでに使っている合理的な判断基準を、自分の食生活にも向ければいい。
それだけで、現実はかなり変わります。
■「重要な会議」や「必要な予算」は削らない
「ダイエット期間中だけ飲み会を減らそう」とか「大好きなものを我慢しよう」などと、一生継続できないことを一時的に我慢しても、いずれ限界が来ます。
限界が来て再開すれば、元の食生活に戻り、元の均衡点へ返る(リバウンド)だけなのです。
つまり、リバウンドしないためには、一生続けられる食習慣に変える必要があるのですが、実はこれ、ビジネスにおける「無駄な会議の削減」と全く同じ構造をしています。
会社の利益を出すために、「重要な会議」や「必要な予算」を削ってしまったらどうなるでしょうか。
一時的に時間やお金の余裕は生まれますが、必ず業務に支障が出ます。
「やっぱりあの会議はやらないとダメだ」と元の状態に戻さざるを得ず、継続性はありません。
一方で、誰も目的を理解していない「無駄な会議」を削ったらどうでしょう。

誰にも支障が出ないどころか業務は効率化され、その快適な状態が「新しい当たり前」として無理なく定着するはずです。
■「ロースカツ」「煮卵」を淡々と手放す
体型管理も全く同じです。
業務上必要な飲み会、大好きな料理、家族との外食など、「自分の仕事や人生の満足感や幸せにつながっている重要なカロリー」を削ってはいけません。重要な予算を削るのと同じで、必ず支障が出て破綻してしまいます。
見直すべきは、あなたの満足感にほとんど貢献していない「無駄なカロリー」の部分です。
なんとなく惰性で大盛りにする。

トンカツ屋でなんとなくロースカツを頼む(代わりに、ヒレカツにする)。

ラーメン屋でなんとなく煮卵をトッピングする(代わりに、海苔やメンマをトッピングする)。
こうした「なくしても人生の幸せがほとんど減らないカロリー」を見つけて、淡々と手放していく、置き換えていく。
我慢をして重要なものを削るから続かないのであって、自分にとっての無駄だけを削るから、無理なく続くのです。
人生の楽しみはそのままに、自分にとっての無駄だけを省き、新しい均衡点をつくる。
我慢をやめ、日常の食習慣を継続可能な形でつくり替えることこそが、体型管理のカギを握っています。


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宮村 和宏(みやむら・かずひろ)

handsoming(ハンサミング)代表取締役CEO

横浜国立大学卒業後、三菱商事に入社。石炭のトレーディング、事業投資、グループ・本部の経営企画部にて戦略立案に携わる。本業の傍らで、脳科学・行動心理学を活用し、①論理的に正しい、②実行可能、③継続可能な体型管理法であるハンサミングメソッドを開発。2023年に三菱商事を退職、handsomingを創業し、代表取締役CEOに就任。また、アスリートとしても活動しており、2019年に長崎で開催された日本ウルトラロングディスタンストライアスロン選手権で総合2位、その後もハワイでのアイアンマン世界選手権に2度出場。フルマラソンの自己ベストは2時間44分などの実績がある。

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(handsoming(ハンサミング)代表取締役CEO 宮村 和宏)
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