この苦境から脱するべく、磐田は26/27シーズンに向けて秋葉忠宏監督を招聘。ご存じの通り、2025年までお隣のライバルクラブ・清水エスパルスで足掛け3シーズン指揮を執り、2024年にはJ1昇格に成功している。その実績を買ったのだろう。この半年間はヴィッセル神戸でコーチを務め、磐田に赴いたが、その指揮官に同行する形になったのが、38歳のMF乾貴士だ。清水時代も含め“秋葉監督の申し子”とも言えるほどの存在が加わったことで、磐田としても非常に大きな力を得たのではないか。
「また新しい環境でできるので、イチからやり直せるなという感じです。自分も38歳なので。自分が24歳、25歳ならまだ神戸にいたと思いますけど、38歳でサッカー人生も短いので、好きなようにやっていきたいなと。試合に出たいという思いも強かったですね」
乾は沖縄・糸満キャンプ最終日だった7月14日のザスパ群馬との練習試合後、偽らざる胸の内を吐露した。秋葉監督との共闘を続けるアドバンテージに関しては「別にないです」とアッサリしたものだったが、やはり「もっともっとピッチに立ちたい」という思いが沸き上がって、再びJ2に身を投じる決意を固めたということなのだろう。
実際、神戸での半年間は非常に厳しいものとなった。ミヒャエル・スキッベ監督は乾の才能を高く買っていると思われたが、J1百年構想リーグの出場はわずか6試合でうち先発は2試合。
「今までのキャリアでこういうことはいっぱいあった。ドイツでも出られない時期はありましたし、スペインでもそうだった。日本に戻ってきてからも、清水に移籍して最初は出してもらいましたけど、途中で出られなくなったりもしたので、経験はあります。そういう中でシンプルに(試合に)出たいという気持ちにはなりましたね」と38歳のサッカー少年は純粋な思いを明かした。
とはいえ、秋葉監督と一緒に磐田に赴いたからと言って、定位置が約束されているわけではない。今季の磐田は4−2−3−1がベースになる見通しで、乾はもちろんトップ下が主戦場となるが、ロサンゼルス五輪世代の成長株・川合徳孟もそのポジションを虎視眈々と狙っているのだ。14日の群馬戦を見ても、1本目と2本目途中まで出場してなかなか決定機を作れなかった乾とは対照的に、2本目後半から出てきた川合が立て続けに2ゴールをゲット。秋葉監督に「貴士もウカウカしていられないと思いますし、なんだったら年齢が若い分、徳孟の方が面白いんじゃないかと思いますから」と言わしめるだけの強烈なアピールを見せたのだ。
「徳孟はいい選手ですよ。
「今はもう暑すぎてコンディションが上がらないのが正直なところ(苦笑)。だからあまり焦っていないです。チームとしても若い選手が躍動してくれたら、勢い付いていいと思いますし、自分は慌てずにやっていきたいです」と大ベテランはポジティブな見方を示している。
確かに気温が下がってくる秋から冬にかけて乾のパフォーマンスがグングンと上がり、圧倒的な違いを作れるようになってくれれば、磐田としても助かることは間違いない。1シーズンを戦い抜くためには、乾一人でも難しいし、川合一人だけでもダメ。群馬戦で左サイドに陣取っていた角昴志郎がトップ下に陣取ることもあるだろうし、マテウス・ペイショットと渡邊りょうが2トップを形成する形もあり得るだろう。
そうやってさまざまな強みを発揮できる集団になれれば、2024年以来のJ1返り咲きの道も開けてくるはず。乾もキーマンの一人になれるように、17日からの静岡・御殿場キャンプで状態を引き上げ、新たなチームへの順応を進めるべき。秋葉監督もそう強く望んでいるに違いない。
取材・文=元川悦子

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