MUFG不動産研究所では、不動産マーケットリサーチレポートを発行しているが、Vol.314では「『働きたい街』の就業者はどこから通うのか」をテーマに市場の分析を行っている。働きたい街とは? どこから通勤しているのか? レポートを見ていこう。

【今週の住活トピック】
【不動産マーケットリサーチレポート】VOL.314 「働きたい街」の就業者はどこから通うのか/三菱UFJ信託銀行 MUFG不動産研究所

「働きたい街ランキング2026」の上位は東京駅周辺や新宿

まず、三菱UFJ信託銀行が、“働きたい街”としてどのオフィス街が選ばれているかを調べた「働きたいオフィス・働きたい街ランキング 2026」※を見ていこう。なお、今回のレポートを執筆した三菱UFJ信託銀行 / MUFG不動産研究所のシニアリサーチャー・舩窪芳和(ふなくぼ よしかず)さんは、住宅の所有比率が極めて低く、賃貸住宅に住むケースが多いと考えられる20代のランキングに注目している。
※調査対象:1都3県(東京・神奈川・埼玉・千葉)在住の20~59歳。会社・団体の経営者、会社員(正社員)

全体・20代のいずれを見ても、働きたい街の上位には、東京駅周辺の「丸の内・大手町・日本橋」と「新宿」がランクインしている。どちらも複数路線が乗り入れ、東京都区部以外からも通勤しやすいターミナルだ。

家賃高騰でも若者世代の職住近接ニーズはアップ中!働きたい街で人気の東京駅周辺・新宿駅への通勤時間の実態とは?

出典:MUFG不動産研究所【不動産マーケットリサーチレポート】VOL.314より転載

働きたい街への乗降駅間(通勤定期券面上)の乗車時間は平均35分前後

では、こうした働きたい街で働く人たちは、どこから通っているのか?
舩窪さんは、働きたいオフィス街(東京駅・大手町駅・日本橋駅エリアと新宿駅エリア)への通勤状況を国土交通省「大都市交通センサス」の通勤定期券発行情報を使って分析した。

まず、乗車駅(区間開始駅)と降車駅(区間終了駅)の情報に、通勤時間帯の実際の乗車時間情報を組み合わせて分布状況を見ると、「東京駅・大手町駅・日本橋駅」では30~39 分、「新宿駅」では20~29 分がボリュームゾーンとなった。平均値は、「東京駅・大手町駅・日本橋駅」で36分、「新宿駅」で34分だった。

次に、働きたい街への通勤定期券の発行数が多い駅のランキングを調べた。舩窪さんが注目したのは、乗車時間が30分台までに収まっていることや、住宅の賃料で割安感のある駅がランクインしやすいことだという。また、新宿駅については、通勤定期券が発行される範囲が、東京市部や神奈川県東部などの西側に広く分布しているのが特徴だった。

家賃高騰でも若者世代の職住近接ニーズはアップ中!働きたい街で人気の東京駅周辺・新宿駅への通勤時間の実態とは?

出典:MUFG不動産研究所【不動産マーケットリサーチレポート】VOL.314より転載

働きたい街に通勤する人たちが住む賃貸住宅の賃料は上昇!?

「東京駅・大手町駅・日本橋駅」と「新宿駅」に、通勤する人たちが住む街の賃料について、さらに詳しく見ていこう。

賃貸マンション(シングルタイプ/25平米換算)の平均賃料は、通勤定期券面上の駅からの乗車時間が遠くなるほど安くなっていく。この賃料を過去5年間の変化で見ると、おおむね10%~30%ほど上昇しているが、ボリュームゾーン(通勤定期券の発行が多い)の39分以内で見ると、20%~30%の賃料上昇が見られる。これについて、舩窪さんは「40分以内の時間距離帯での賃料上昇率の高さも考慮すると、近年の賃貸マンションの賃料高騰は、特に職住近接を求める若年層の通勤環境への影響が大きいと考えられる」と分析している。

家賃高騰でも若者世代の職住近接ニーズはアップ中!働きたい街で人気の東京駅周辺・新宿駅への通勤時間の実態とは?

出典:MUFG不動産研究所【不動産マーケットリサーチレポート】VOL.314より転載

職住近接ニーズに対応した賃貸マンションの供給も増加

実際に、若い世代の職住近接ニーズの高まりを意識した賃貸マンションも登場している。三井不動産レジデンシャルの「パークアクシス五反田スカイタワー」は、複数路線を利用できる五反田立地で、地上29階建て、単身からファミリーまでに対応した間取りのある、総戸数183戸の賃貸マンションだ。

車寄せやプライベートワークルーム、フィットネスルームなどを備え、上層階からの眺望の良さも加わった、高価格帯の賃貸レジデンスとなっている。現在の申込者の7割が、20~30代の若い世代だという。

家賃高騰でも若者世代の職住近接ニーズはアップ中!働きたい街で人気の東京駅周辺・新宿駅への通勤時間の実態とは?

パークアクシス五反田スカイタワー。車寄せのあるタワー外観(住宅ジャーナリスト/山本久美子撮影)

家賃高騰でも若者世代の職住近接ニーズはアップ中!働きたい街で人気の東京駅周辺・新宿駅への通勤時間の実態とは?

1LDK40.29平米のモデルルーム、賃料30万円前後を想定(住宅ジャーナリスト/山本久美子撮影)

最近では他のデベロッパーも、職住近接を実現する立地に、高価格帯の賃貸マンションや共用部を充実させたコワーキング型の賃貸を数多く供給している。

賃料が高くなっても職住近接な立地を選択できるという人は限られるだろうが、通勤時間を短くしたい、乗り換えなしで通勤ストレスを軽減したいといったニーズは高まっているようだ。通勤時間を短縮したり、通勤ストレスを軽減したりして、プライベートの時間を充実させたいといったニーズが背景にあるのだろう。

●関連リンク
三菱UFJ信託銀行 MUFG不動産研究所【不動産マーケットリサーチレポート】VOL.314 「働きたい街」の就業者はどこから通うのか

編集部おすすめ