日米の株式市場が最高圏で推移する一方で、中国株は出遅れ感が目立っています。昨年のディープシーク・ショックで注目された中華AIの熱気は冷めたかにも思えますが、日米同様にAI・半導体相場は力強く継続しています。
最高値を更新してきた日米株の一方で、出遅れ感のある中国株
今週の株式市場ですが、中東情勢への不安後退をはじめ、先週末のスペースX(SPCX)の株式の新規公開(IPO)が好調なスタートになったこと、そして、AI・半導体相場の継続という好材料が組み合わさったことを背景に、これまでのところ株価が上昇する展開が目立っています。
<図1>国内外主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年6月17日時点)
とりわけ、日経平均株価については、15日(月)から17日(水)にかけて連日で最高値を更新し、16日(火)と17日(水)の取引時間中には7万円台に乗せる場面を見せました。さらに、図1には記載されていない18日(木)の取引では、7万1,000円台まで上昇しています。
その一方で、やや出遅れ感があるのが中国株市場です。上海総合指数は足元で戻り基調を描いているものの、日米の株価指数と比べると水準がやや低く、香港ハンセン指数については昨年末比でマイナスに沈んでいます。
日米株式市場の上昇要因のひとつとして、旺盛な投資需要の継続を背景とするAI・半導体関連銘柄への買いが挙げられますが、約1年半前には、いわゆる「ディープシーク・ショック」によって「中華AI」への注目度が高まっていたことを考えると、足元の中国株は日米のAI・半導体相場の流れに乗れていないようにも感じてしまいます。
では、実際のところはどうなのでしょうか?
実は中国でもAI・半導体相場は続いている
そこで、中国株の状況をもう少し詳しく探っていきます。
<図2>「ディープシーク・ショック」後の香港ハンセンテック指数とNASDAQ100指数比較(2025年1月27日を100)(2026年6月17日時点)
図2は、ディープシーク・ショックが起こった2025年1月27日を100とした、米ナスダック100と香港ハンセンテック指数のパフォーマンス比較です。
ディープシーク・ショック直後に中華AIが注目された当初のハンセンテック指数のパフォーマンスはナスダック100を上回っていましたが、次第に両者の差は縮小していき、2026年1月に逆転してからは、ナスダック100が優位に推移している様子がうかがえます。
ハンセンテック指数の構成銘柄(30銘柄)のうち、上位4銘柄(テンセント(00700)、アリババグループ(09988)、BYD(01211)、SMIC(中芯国際集成電路製造:00981))だけで時価総額全体の60%を占めており、さらに、テンセントとアリババグループの2社だけでも40%を超えています。
<図3>ハンセンテック主要銘柄のパフォーマンス比較(2024年末を100)(2026年6月17日時点)
図3は、2024年末を100とした、テンセント、アリババグループ、SMICのパフォーマンス比較です。いずれの銘柄も2024年末比ではプラスを維持しているものの、2025年末の水準比では、SMICがプラスの一方、テンセントとアリババはマイナスです。
これだけの動きを見ると、「やっぱり、中国のAI相場はさえない動き」のように見えますが、アリババとテンセントはAI投資を活発に行っていて、厳密には定義できないものの、米国のハイパースケーラーに近いイメージです。
現在の米国株市場でも、ハイパースケーラー(マイクロソフト(MSFT)、アルファベット(GOOG、GOOGL)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、メタ・プラットフォームズ(META))は相場のけん引役ではないことを踏まえると、アリババとテンセントは、昨年末比でマイナスに沈んでいるマイクロソフトやメタ・プラットフォームズと似たような値動きをたどっているといえます。
また、中国最大手の半導体受託製造企業(ファウンドリ)であるSMICは、株価水準は違えども米国の半導体関連株と同様に、3月下旬より急反発を見せています。
日米のAI相場の経緯をたどると、当初はAIに積極的に投資を行うハイパースケーラー銘柄がけん引し、その後、半導体関連株や、データセンター周辺株、メモリー関連、電子部品関連へと次第に裾野を広げていきました。
となると、中国株でも同様に、物色される銘柄が広がっている可能性がありますが、その答えは中国の新興株市場にありそうです。
<図4>米中の株価指数比較(2024年末を100)(2026年6月17日時点)
図4は、先ほどの図2のチャートに、中国深セン市場の新興株市場である「創業板」の株価指数と、上海市場の新興株市場の「科創板」の指数を加えたものです。この二つの指数は、米SOX指数やナスダック100と同じタイミングで急上昇している様子が確認でき、米国の株価指数に劣っていない様子がうかがえます。
つまり、中国のAI・半導体相場は、主要株価指数(上海総合やハンセン指数)には表れていないものの、新興株市場を中心に継続している状況といえます。
中国株市場の注目AI・半導体関連銘柄は?
では、中国株市場ではどんな銘柄が注目されているのでしょうか?
それを探るヒントとして、海外投資家が香港経由で本土株を売買する「ストックコネクト(ノースバウンド)」のデータをチェックします。
<図5>「ストックコネクト(ノースバウンド)」の売買代金の推移(2024年6月~2026年5月)
図5は、「ストックコネクト」におけるノースバウンドの売買代金の推移です。
ストックコネクトとは、上海証券取引所または深セン証券取引所と香港証券取引所を相互に接続し、それぞれの証券市場の株式を、香港取引所を経由して売買できるようにする制度です。これにより、以前は直接取引が難しかった中国本土の株式にも、海外の個人投資家が香港市場を通じてアクセスできるようになりました。
海外投資家がストックコネクトを通じて、本土株を売買することをノースバウンド、中国本土の投資家が香港株を売買することをサウスバウンドと言います。
図5を見ても分かるように、ディープシーク・ショック直後に売買代金が増加し、その後も一定の水準で推移しており、中国株市場から資金が離れていない様子が確認できます。なお、直近では2月に売買が落ち込んでいますが、春節の連休による営業日の少なさが影響しています。
では、このノースバウンドでどんな銘柄が売買されていたのでしょうか?
<図6>ノースバウンド経由の売買代金上位銘柄(上海)(2026年5月分)
まずは、2026年5月における上海市場の取引上位10銘柄の状況です。黄色で塗りつぶされているのが、AI相場の関連銘柄で、それぞれの企業の概要は以下の通りです。
2位:「兆易創新科技(ギガデバイス・セミコンダクター)」(603986)
半導体(フラッシュメモリの設計・販売。IoT機器、民生用電子機器、自動車向けなどに幅広く提供している企業
5位:「中科寒武紀科技(カンブリコン)」(688256)
「中国のエヌビディア」とも呼ばれ、AI処理に特化した半導体チップの研究開発、設計、販売を行う
6位:「深セン佰維存儲科技(バイウィン・ストレージ)」(688525)
半導体ストレージ(記憶媒体)を手掛ける企業
8位:「江蘇亨通光電股份有限公司(ハントン・オプティック)」(600487)
中国の通信・電力インフラ分野をけん引する、光ファイバー・電線ケーブルの製造企業
9位:「澜起科技(モンタージュ・テクノロジー)」(688008)
データセンター向けメモリインターフェースチップの分野で、米国のラムバスと並び、世界で高いシェアを誇る
ちなみに、銘柄コードが688で始まるものが、科創板に上場している銘柄になります。
<図7>ノースバウンド経由の売買代金上位銘柄(深セン)(2026年5月分)
図7は深セン市場の上位10銘柄です。こちらは、ほとんどがAI相場絡みの銘柄がランクインしています。
2位:「中際旭創(ヂョンジー・イノライト)」(300308)
データセンターやクラウドコンピューティングで使用される、高速光通信トランシーバーモジュールの研究開発、製造、販売を行う
3位:「成都新易盛通信技術(エオプトリンク・テクノロジー)」(300502)
データセンター、通信ネットワーク、5G基地局などに使用する光通信モジュールを手掛ける
4位:「蘇州天孚光通信(TFCオプティカル)」(300394)
データセンター向け半導体分野の光通信・光部品を製造。米エヌビディアなどの重要サプライヤー
6位:「華工科技産業(ホワゴン・テクノロジー)」(000988)
レーザー技術および光通信インフラを手掛けるメーカー
7位:「蘇州東山精密制造(DSBJ)」(002384)
スマートフォンやEV向けフレキシブルプリント基板で世界第2位のシェアを誇り、テスラの主要サプライヤー。AIデータセンター向け光モジュール市場にも参入
8位:「立訊精密工業(ラックスシェア)」(002475)
米Appleの主要サプライヤーで、電子機器の接続ケーブル、コネクタ、アンテナ、音響部品などの大手メーカー
9位:「沪士電子股份(ウース・プリンティド・サーキット)」(002463)
AIサーバー向けの高多層プリント基板(PCB)を手掛けるメーカー、シェアが急拡大
深セン市場も、300および301で始まる銘柄コードのものが、創業板に上場している銘柄になります。
このように、日米の株式市場と同様に、中国株市場でもAI相場の中で物色されている銘柄が拡大していることが分かります。
パフォーマンスは抜群だが、投資のハードルは高い
では、先ほど見てきた銘柄のパフォーマンスはどのようになっているのでしょうか?
<図8>中国AI関連銘柄(上海)のパフォーマンス比較(2024年末を100)(2026年6月17日時点)
<図9>中国AI関連銘柄(深セン)のパフォーマンス比較(2024年末を100)(2026年6月17日時点)
図8や図9でも確認できるように、ここ2年足らずのあいだに、かなりの株価上昇を見せています。中には、株価が10倍を超えている銘柄もあり、中国株市場でもAI相場が盛り上がっていたことが分かります。
これだけのパフォーマンスを見せつけられてしまうと、つい中国株投資への魅力に惹かれてしまいますが、残念ながら、国内の個人投資家にとって、中国株市場の個別銘柄の売買はハードルが高く、ここで紹介した銘柄のほとんどが楽天証券でも取引することはできません。そのため、間接的にこれらの銘柄が含まれている上場投資信託(ETF)を通じて取引することになります。
【参考】中国上海・深セン市場のAI・半導体関連銘柄が組み込まれている主なETF
※楽天証券で売買可能なもの
(土信田 雅之)

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