日銀の政策金利引き上げにより、REIT市場は約31年ぶりの金利水準という新たな局面を迎えました。金利上昇はREIT価格にどのような影響を及ぼすのか。

さまざまなリスクを整理しつつ、この環境下で投資家が注目すべき財務指標や、長期視点での戦略を詳しく解説します。


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約31年ぶりの金利水準、REITへの影響は?

政策金利1%でREITに三つの逆風。「利回り差の縮小」で変わる長期戦略と銘柄選び
楽天証券「東証REIT指数」より著者抜粋

 2026年6月16日(火)、日本銀行は金融政策決定会合で政策金利を0.75%から1.0%へ引き上げることを決定しました。1995年以来約31年ぶりの高水準となります。


 中東情勢の影響による原油高に伴う物価上昇(インフレ)リスクの高まりを重視し、利上げによるインフレ抑制が必要と判断したとみられます。


 東証REIT指数は6月19日終値が1,774ポイント台となっています。1年チャートを見ると、2026年1月につけた2,100ポイント近くの高値から約15%下落し、2025年7月の安値水準に近づいています。移動平均線(5日、25日、75日)はいずれも下向きで、金利上昇局面における厳しい環境が続いています。


「金利が上がると不動産投資信託(REIT)は売り」という反応は教科書通りですが、下落の要因、織り込み度合い、今後の投資判断について確認していきます。


金利上昇がREITに与える「三つの影響」

 政策金利の引き上げは、REIT市場にどのような構造的変化をもたらすのでしょうか。金利上昇が投資判断に直結する


「イールドスプレッドの縮小」
「借り入れコスト」
「不動産価格への影響」


という三つの側面を解説します。なぜ金利上昇がREITにとって逆風となり得るのか、そのメカニズムを正しく理解しましょう。


【1】イールドスプレッドの縮小
政策金利1%でREITに三つの逆風。「利回り差の縮小」で変わる長期戦略と銘柄選び
楽天証券「日本国債10年」「東証REIT指数」より著者抜粋

 REITの魅力は「分配金利回りの高さ」でした。長らく10年国債利回りが0%台だった時代、REITの4~5%の利回りは圧倒的な優位性がありました。


 しかし、政策金利1%時代では状況が変わります。

10年国債利回りはすでに2.6%台まで上昇しており、REITと国債の利回り差(イールドスプレッド)は、大幅に縮小しています。


 リスクを取ってREITに投資する意義が薄れるため、REIT価格には下落圧力がかかりやすくなります。


【2】借り入れコストの上昇

 REITは物件取得のために多額の借り入れを行っています。有利子負債比率(LTV)が40~50%のREITも珍しくありません。


 金利上昇は、この借り入れコストに影響します。仮に1,000億円の借り入れがあるREITで金利が0.5%上昇すれば、年間5億円の利払い増加。これは分配金の減少につながる可能性があります。


 特に注意すべきは「変動金利の借入比率が高い銘柄」です。固定金利中心で調達しているREITは影響が限定的ですが、変動金利比率が高いREITは今後の決算で分配金下方修正リスクがあります。


【3】不動産価格への影響

 金利上昇は不動産市場全体にも影響します。不動産価格は「収益÷利回り(キャップレート)」で決まりますが、金利上昇はキャップレート上昇(=価格下落)を招きやすい傾向があります。


 REITが保有する物件の鑑定評価額が下がれば、純資産価値(NAV)も低下し、投資口価格の下落要因となる可能性があります。


金利上昇局面での用途別特徴

 全てのREITが同じ影響を受けるわけではありません。用途ごとに特徴は異なります。


政策金利1%でREITに三つの逆風。「利回り差の縮小」で変わる長期戦略と銘柄選び
筆者作成

 ポイントは「賃料を上げられるかどうか」です。物価上昇局面で賃料を引き上げられる用途は、金利上昇の影響を吸収しやすくなります。用途ごとの特性を踏まえた銘柄選びが重要です。


金利上昇局面での五つの投資戦略

【1】慌てて売らない

 すでに東証REIT指数は1月から15%以上下落しています。今回の利上げは事前に報道されており、かなりの部分が織り込み済みと考えられます。


 利上げ発表後は「事実売り」によりもう一段下げる可能性もありますが、「悪材料出尽くし」で反発するパターンも過去には多くありました。慌てて売却を判断するのではなく、冷静に状況を見極めたいところです。


【2】「NAV倍率」をチェックする

 現在の価格が割安かどうかを測る指標として「NAV倍率」があります。


NAV倍率 = 投資口価格 ÷ 1口当たり純資産価値


 1倍を下回っていれば「保有不動産の価値より安く買える」状態です。現在、NAV倍率が0.8倍を割り込んでいる銘柄も出てきています。長期投資家にとっては、こうした「解散価値割れ」の銘柄は要注目です。


【3】財務体質を重視する

 金利上昇局面では、借り入れコスト耐性が銘柄選別の鍵になります。


 チェックポイントは以下の三つです。


  • LTV(有利子負債比率):国内の不動産投資信託(J-REIT)平均は約45%。それを下回れば相対的に低い水準
  • 固定金利比率:80%以上なら金利上昇の影響は限定的
  • 平均残存年数:長いほど借り換えリスクが先送りされる

 決算資料の「財務の状況」を必ず確認しましょう。


▼借り入れ内容はどこで確認できる?

 財務体質の重要性は分かっても、具体的にどこを確認すればよいか分からない方も多いでしょう。


 各投資法人の公式サイト(IR情報)を見るのが最も簡単です。


 ほとんどのJ-REITは、ホームページの「財務情報」や「IR情報」ページ内に「有利子負債の状況」という項目を設けています。ここを見れば、以下の情報が一目で分かります。


政策金利1%でREITに三つの逆風。「利回り差の縮小」で変わる長期戦略と銘柄選び
筆者作成

 投資法人によって表記は若干異なりますが、「固定化比率90%以上」「平均残存年数4年以上」「LTV45%以下」あたりが一つの目安です。


 気になる銘柄があれば、まず公式サイトでこのページをチェックする習慣をつけると、決算短信を読み込むより早く財務体質を把握できます。


【4】「増配余力」のある銘柄を選ぶ

 一部のREITは内部留保を活用して分配金を維持・増加させる余力があります。また、物件売却益を分配に回せるREITは、一時的な減益を補填(ほてん)できます。


 過去の分配金推移を見て、安定的に増配してきた実績があるREITは、この局面でも底堅い動きが期待できます。


【5】分散投資と時間分散

 底値で買いたい気持ちはあっても、金利の天井は誰にも分かりません。日銀がさらに利上げを続ける可能性も否定できません。


 一括投資ではなく、数カ月に分けて少しずつ買い増す「時間分散」が有効です。また、用途を分散させることで、特定用途の急落リスクを軽減できます。


長期視点で考える、金利上昇=REITの終わりではない

 最後に、長期的な視点についても確認しておきます。


 金利が上昇しているのは、日本経済がデフレから脱却し、物価が上昇しているからです。これは不動産市場にとって必ずしも悪いことではありません。


 インフレ環境では、不動産という実物資産の価値は上昇しやすくなります。賃料も中長期的には物価に連動して上がっていきます。


 実際、米国では2022年以降の急激な利上げ局面でREITは大きく下落しましたが、その後は金利高止まりの中でも持ち直しています。「金利上昇=REIT売り」は短期的には正しくても、長期的には必ずしも当てはまりません。


まとめ 銘柄選びがより重要な局面に

 金利上昇時代のREIT投資で大切なのは、「指数全体」ではなく「個別銘柄」を丁寧に見ることです。


  • 財務基盤の強さ
  • 賃料上昇の余地がある用途
  • NAV倍率で見た割安さ
  • 分配金の持続性

 金利が上昇しても、REITが保有する不動産の収益力や資産価値が大きく損なわれるとは限りません。

これらを丁寧に分析すれば、政策金利1%時代でも投資妙味のある銘柄は見つかる可能性があります。


 相場が不安定な時期は、割安な銘柄を検討する機会にもなり得ます。長期的なサイクルで見れば、相場が厳しい局面こそ、振り返ったときに良い投資機会だったと気付くことも少なくありません。


(かつさんど)

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