日経平均株価が7万円を超えたあと、乱高下している。26日の終値は前日比3,005円(4%)安の6万9,360円。

依然として、6万9,000円前後の高水準で推移している。「日本株は低PERで割安」という見方もあれば、「AI相場バブル」の崩壊を懸念する声も。過去のバブルを振り返り、これからの日本株市場の見通しを考える。


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株価のバブルとは?

 まずは、株価の「バブル」の大まかな定義ですが、企業の収益性や資産価値などのファンダメンタルズから大きく乖離(かいり)して高騰し、株価上昇そのものが投機的対象となる状態と、位置付けられています。


 日本株のおおよその資本コスト(6%)、現在の金利水準(10年国債利回り:2.6%)、今年度の企業業績成長率(大手証券見通し:4~5%)を前提とするならば、現在の日本株全体の株価収益率(PER)水準が20~25倍の評価は十分に妥当な範囲と言えそうです。


 しかしながら、PER70倍に達した1990~1991年当時でもその水準を正当化する言説はありました。


 当時は不動産価格が高騰しており、時価ベースの資産価値を基準とする「Qレシオ」という概念から高騰した株価に根拠付けがなされていました。確かにロジック的には合理性は担保されているようですが、前提となる不動産価格が低金利と銀行の貸出し競争から実体(=収益性)から大きく乖離して上昇していたことが背後にはありました。


 バブル崩壊までは企業業績も好調でした。本業だけではなく、資産価格上昇による好景気に加えて、「財テク」によって企業収益は押し上げられていました。「特金・ファントラ」と呼ばれた企業向け資金運用は10%の利回りが半ば保証された状態にありました。


 仮に企業がPER50倍の株価で時価発行増資により資金調達を行い、調達した資金を「特金・ファントラ」と呼ばれた企業向け資金運用を行えば、8%の差益を得ることができます。それによって企業業績が押し上げられ、株価が上昇すればさらに増資で資金調達を行うというループが描かれました。

そのため、増資の発表は株価上昇要因でした。


 当時、筆者はまだ駆け出しのアナリストでしたが、『これはどう考えても異常だ!』と感じたことは今でも鮮明に記憶に残っています。


過去のバブルから学ぶ~「リーマン・ショック」が起きたわけ

 株式市場が「バブル」であるか否かは、単純に株式市場だけを見ていたのでは判別できない可能性もあります。


 その典型例が、「リーマン・ショック」と呼ばれた2008年の世界金融危機です。日経平均株価は、「リーマン・ショック」急落前(2008年8月)は1万3,000円台でPERは15倍前後でした。それが2009年2月には8,000円割れとなり、PERも10倍を割り込む水準に低下しています。日本株の株価水準はバリュエーション面では全く割高感は見られませんでした。


「リーマン・ショック」と呼ばれたのは、米大手投資銀行であるリーマン・ブラザーズの破綻がきっかけになったことからです。同社の危機に際して米国政府は救済を見送りましたが、それを引き金として信用不安が世界中の金融機関に広がり、信用収縮によって全世界に景気後退がもたらされました。


 根源的には米国での信用力の低い個人向け住宅ローン(サブプライム・ローン)の膨張でした。信用力の著しく低い層にまでローン提供を行ったことによる返済滞納の急増とサブプライム・ローンを組み込んだ証券化商品のリスクが不透明であったことが混乱を大きくしました。


 バブルの要素が日本経済や日本株市場にはなかったとしても、株価指標面での割高感はなくても、海外要因(特に米国)で株価が暴落する可能性は残ります。


AI・半導体株ブームは続くのか

 時間を現在に戻します。足元の日経平均株価の上昇は、AI・半導体株の株価押し上げによって生じました。

背景には、AI技術の急速な進化や、データセンターをはじめとした設備投資需要の拡大があります。


 では、設備投資需要はさらに続くのでしょうか? その投資に見合う需要が果たしてあるのでしょうか? AI企業は十分な利益を確保できるのでしょうか? 競合関係にあるオープンAI、アンソロピック、アルファベット(Google)、メタ・プラットフォームズおよびスペースXといった企業が皆そろって利益を享受できるのでしょうか?


 競争の果てに終わりはやってきます。それは今ではないとしても、1年後か2年後か、あるいはもう少し先か。いずれにしてもそれほどは遠くではないことは意識しておく必要があると思います。結果的に将来の企業収益と先行して上昇した株価との乖離が大きければそれはバブルだったということになるのでしょう。


日経平均だけが上昇。日本株全体はそれほど上がっていない

 日経平均株価は2025年末から6月16日までに+37.9%の上昇となりました。一方で、同期間の東証株価指数(TOPIX)の上昇は+17.1%、東証グロース250指数は+5.8%の上昇にとどまっています。


 日経平均株価の内訳を見ても、差があります。2025年12月26日から6月16日の期間における、日経平均株価への寄与度上位25銘柄の上昇率は+51.6%ですが、それ以外の200銘柄は+13.8%とTOPIXも下回るパフォーマンスにとどまっています。


 現在の日経平均株価の上昇は、日経平均株価への寄与度が高い値がさ株がけん引していると言えるでしょう。


日経平均株価への寄与ウエイト上位25銘柄
日経平均7万円超えから乱高下。上昇どこまで?過去のバブル崩壊と金融危機から考える
出所:日経平均のプロフィルに基づき藤根作成

 日経平均株価への寄与度が高い上位25銘柄のうち、半数はAI・半導体関連としてメリットを受ける企業です。


 この25銘柄は、日経平均株価の構成比で3分の2以上(67.3%)を占めています。まさに、これら銘柄群は時価総額での構成も大きく、TOPIXの上昇にも大きく寄与しています。


 一部のAI・半導体銘柄だけが株価上昇をけん引する歪な構造は、インターネットバブルを想起させます。


 なお、キオクシアホールディングスの日経平均株価への採用は本年4月1日であり、3月31日時点の株価は1万9,080円。4月1日から6月16日までの日経平均株価の上昇に対する寄与分は2,535円と算出されます。


米国株式市場に対する危険なシグナル

 AI相場が始まった2024年春ごろから米国のイールドスプレッドがマイナスとなる状態が続いています。イールドスプレッドはPERの逆数である株式益回りから長期債(10年国債)利回りを引いた数値です。イールドスプレッドがマイナスであるということは、株式投資よりも債券投資の方が高利回りであり、株価に割高感があることを示しています。


 足元のS&P500種指数の株式益回り4.43%に対して、米10年国債利回り4.46%であり、イールドスプレッドはマイナス0.03%です。過去の米国市場のイールドスプレッドの平均的な水準は3~4%であり、マイナス圏となるのはドットコムバブル時以来になります。


 日本株市場においてイールドスプレッドは株式益回りではなく配当利回り(加重平均ベース)が用いられることが一般的です。この値も2025年12月からマイナス圏に突入しています。


日本経済・金融市場にも死角あり

 インフレは株価にとってプラスであるといわれています。インフレになることで企業は製品価格の引き上げを行えるようになり、政府は税収が増えるとみられています。


 確かに需要が拡大して供給を上回る状態が安定的に継続するのであればポジティブですが、現状は必ずしもそうではなく、円安による輸入品価格の上昇と、ホルムズ海峡封鎖から生じた原油などのエネルギー価格上昇によってもたらされたコストプッシュ型インフレの要素が強くなっています。


 6月16日、17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)において政策金利は据え置かれましたが、フォワードガイダンスにおいては年内1回の利上げが見込まれ、米連邦準備制度理事会(FRB)は利下げから利上げへと転換しつつあり、円安圧力が一段と強まっている状況です。


 日本の実質賃金は2026年春以来、歴史的な春闘の賃上げ効果や、電気・ガス、ガソリンなどエネルギー価格への政府補助による物価上昇の抑制から、プラス圏での推移が続いています。


 しかし、秋以降の食品などの値上げやタイムラグで発生するエネルギー価格の上昇を受けた政府の支援方針次第では、実質賃金は再びマイナス圏に陥ることが懸念されています。


 エネルギー支援や、食品に対する消費税1%への引き下げなど、政府の歳出拡大が円安に拍車をかける可能性もあり、楽観はできません。


 円安は製造業など輸出企業の業績を好転させる可能性はありますが、国内物価上昇によって消費の停滞を引き起こし、家計への支援拡大による政府財政への不安からさらなる円安を招く懸念があります。


バブルに向かっている可能性に注意

 バブルとは何かという定義をもう一つ加えるとしたら、株価上昇がさらなる株価上昇の理由となることではないかと考えています。機関投資家も持たざるリスクから買わなければならない(売ることができない)、上がるから買う、上がるから買わざるを得ない。こうした構造が形成された状態がバブルの典型的な特徴ではないでしょうか。


 そしてまた、株価のピークに向かうほど、上昇が加速していく傾向があります。昭和末期~平成初期のバブルも、2000年のインターネットバブルもピーク前の株価上昇は勢いがあったように記憶しています。それを狙うのも個々の投資家の判断次第ですが、リスク要因に十分目配せをしながら、降りる局面をイメージすることが肝要と考えます。


(藤根 靖晃)

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