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 2026年後半の原油相場は、高水準で推移する見通しです。中東情勢の緊迫化やOPECプラスの減産継続が供給不安を招き、価格を押し上げる要因となります。

一方、米国の金融政策や備蓄動向、イランとの協議も鍵を握ります。地政学リスクや輸送コスト上昇を背景に、強含みの展開が予想されます。


2026年後半の原油市場は強含みの展開を予想

2026年下半期の原油相場、複数要因が下支え

 図1は、2014年以降のニューヨーク原油先物相場(日次平均)の推移です。2026年は中東情勢の悪化を受けて一時100ドルを超えたものの、米国・イランの両政府が停戦合意をしたことを受け、情勢が悪化した時の水準である70ドル前後まで急落したことが分かります。


 この値動きは、足元の原油相場が需要と供給だけでなく、地政学的リスクなどがもたらす需要と供給への「思惑」をも反映していることを示しています。また、急落したとはいえ、2020年のコロナ禍や2021年以前の水準と比較すると依然として高値圏を維持しています。時間軸が長い上昇圧力が同時進行していることも分かります。


図1:NY原油先物相場(中心限月 日次平均) 単位:ドル/バレル
2026年後半の原油市場は強含みの展開を予想
出所:Investing.comのデータを基に筆者作成

 図2は、2026年下半期の原油相場を左右する主要な要因を整理した資料です。足元、大きな関心事になっている中東情勢に関しては、米国とイランによる60日間の停戦合意が8月中旬ごろに期限を迎える見込みですが、この間の協議で最終合意に至った場合は、供給懸念が後退し、原油相場が大きく下落する可能性が浮上します。


 一方、協議が不調に終わり、軍事的な緊張が再燃すれば、再び供給懸念が台頭し、原油相場は急反発する可能性もあります。2026年の3月以降に発生した急騰・急落のように、中東情勢の動向(基本的に悲観、トランプ米大統領など要人の発言を受けてしばしば楽観)が原油相場に大きな影響を与える展開が再来することが予想されます。


図2:2026年下半期の原油相場の動向を占う重要な要素
2026年後半の原油市場は強含みの展開を予想
出所:各種資料を基に筆者作成

 米国の金融政策も、2026年下半期の原油相場を占う上で重要な要素です。3月から6月にかけて原油価格が急落したことを受け(110ドル近辺→70ドル近辺)、夏から秋にかけて、市場では米国の利上げ確率が低下し、株式市場が堅調に推移して景気回復期待が大きくなり、原油需要の増加が意識されやすくなる可能性があります。


 また、2025年にトランプ米大統領が述べた「予防的な利下げ」の可能性が高まれば、景気の下支え効果が大きくなり、原油需要の増加がさらに意識されやすくなる可能性があります。原油が影響を与える物価動向や、それに関わる今年11月の米国中間選挙に向けた要人の思惑も、原油相場を動かす要因になり得ます。


 供給面では、OPECプラスの動向が引き続き焦点となります。自主減産縮小(≒増産)が終了するタイミングとほぼ同時期に行われる石油輸出国機構(OPEC)・非OPECの閣僚会議では、足元の原油相場の水準などを踏まえながら、今年12月までとなっている協調減産を延長するかどうかを決定する見通しです。


 減産が延長されれば、需給が引き締まりやすい状態が長期化する思惑が強まり、原油相場の下支え要因になり得ます。同時に、米国の原油戦略備蓄は中東産の代替として主に東アジア向けに輸出されており、急減状態にあります。下半期、在庫の積み増し需要に季節要因による需要が加わることも、原油相場の下支え要因になり得ます。


 さらに、ホルムズ海峡の封鎖リスクは、一時的な出来事ではなく「常態化」しつつある点にも留意が必要です。仮に海峡封鎖のような極端な事態に至らなくても、輸送コストや保険料の上昇が恒常化すれば(イラン革命防衛隊が課す可能性がある通行料を含め)、原油相場はさらに支えられやすくなります。


 全体として、2026年下半期の原油相場では、中東情勢、OPECプラスの生産動向、米国の金融政策・原油在庫など、複数の要因が同時進行することが予想されます。


 中東情勢をきっかけとした短期的な上下の圧力にさらされるだけでなく、米国の在庫減少やOPECプラスの協調減産継続、世界的な需要回復「期待」などがもたらす中期・長期的な上昇圧力を受ける構図になる可能性があります。複数の材料を総合的に捉えながら動向を見守る必要があります。


最終合意には複数の奇跡の同時実現が必要

 図3は、2026年6月に米国とイランが署名した最終合意に向けた協議に関する覚書の概要と、協議の際の要点をまとめた資料です。この覚書への署名は、最終合意(戦闘終結の協定)に向けた協議の前提に合意し、その前提に基づいて協議を開始するという、いわば合図です。この署名をもって、恒久的な停戦が実現したわけではないことに留意が必要です。


 トランプ米大統領、バンス米副大統領、イランのガリバフ国会議長が覚書に署名し、6月18日に60日間の協議が始まりました。覚書の内容(14項目)を見ると、協議は大きく四つの分野で構成されていることがうかがえます。


 一つ目は「停戦・安全保障」に関する内容です。恒久的な停戦やお互いの主権を尊重することに加え、双方の海上封鎖の解除やホルムズ海峡における航行の正常化が盛り込まれています。実際に、この内容により、一部の船舶が同海峡を航行し始めたことが報じられています。


 しかし、署名から1週間足らずで、米国とイラン(イラン革命防衛隊)との間で、同海峡の航行を巡り、攻撃の応酬が散見され、再び同海峡を巡る情勢は緊迫化しつつあります。


 二つ目は「外交・核問題」に関する内容です。60日以内の最終合意を目指し、イランにおける核問題や同問題に関わる交渉の手順、さらには国際連合(国連)の承認プロセスまでを視野に入れています。


 しかし、核開発問題は米国とイランの対立の核心であり(2月28日に米国と同時にイランを攻撃したイスラエルの大きな関心事でもあり)、短期間で妥協点を見いだすことは容易ではありません。米国が「イランは核兵器を保有しない」との立場を堅持している一方で、イランは自国の安全保障を主張しており、交渉は平行線をたどる可能性があります。


図3:米国・イランの覚書について
2026年後半の原油市場は強含みの展開を予想
出所:筆者作成

 三つ目は「経済・制裁」です。イランへの制裁解除やイランの原油輸出再開・凍結資産の解除が実現すれば、同国の経済回復だけでなく、世界の原油供給増加にもつながる可能性があります。特にイラン産原油の市場への復帰は、世界の原油需給を緩和させ、原油相場に下落圧力をかける要因になり得ます。


 四つ目は「復興・履行管理」です。イランの復興を支援することや最終合意が守られているかどうかを監視する制度の整備は、合意内容を実効性のあるものとするためにかかせません。過去にも合意が履行されなかった(イランが合意をほごにして核開発を進めた)例があるため、監視する制度を整備できるかどうかは、大変に重要な点になると考えられます。


 核開発関連の案件については、同開発に強く反対するイスラエル側の意向をくんだ米国と、自国の安全保障を主張し、かつ非西側諸国の思惑を意識するイランの意見は折り合わず、協議が難航する可能性があります。


 14項目以外にも懸念点があります。イランが将来的にホルムズ海峡の利用にサービス料を課す可能性を示唆していることや、イスラエルとイラン革命防衛隊が協議に直接的に参加していないことです。特に後者は、協議が破談になる可能性を生む、大変に大きな懸念点です。


 今回の覚書への署名は、中東情勢の安定化に向けた重要な第一歩ではあるものの、最終合意・恒久的な戦闘終結に至るまでには、多くの高いハードルを同時に乗り越える必要があります。


 1970年代のイラン革命にまでさかのぼって、わだかまりを解く必要もあると考えられます。

複数の奇跡が同時に起きなければ、最終合意・恒久的な戦闘終結には至らないのではないかと、筆者はみています。


中東情勢、米金融・エネルギー政策を左右

 図4と図5は、2026年の中東情勢の動向が、米国のガソリン小売価格と原油の戦略備蓄(SPR)の政策に大きな影響を及ぼしていることを示しています。両図をあわせてみると、米国政府が中東情勢の変化に対応しながら、エネルギー価格の安定化を図ろうとしている様子がうかがえます。


 図4の米国のガソリン小売価格を見ると、価格は2022年のウクライナ戦争勃発直後に1ガロン当たり5ドルを超える記録的な高値を付けた後、2023年以降は3ドル前後を中心に推移していたことが分かります。


 しかし、2026年、中東情勢の悪化を受けて再び急騰しました。同地域の軍事的な緊張が高まったことを受けて原油相場が高騰し、その影響で米国のガソリン価格も高騰しました。一時、ウクライナ戦争勃発直後の水準に迫りました。


 しかし、米国とイランによる停戦協議のための覚書への署名により、情勢が鎮静化することへの期待が高まり、供給懸念が後退し原油相場が反落、その動きを受けて米国のガソリン小売価格も反落しています。


 足元では3ドル台前半まで低下しているものの、原油相場のように情勢悪化時の水準まで下落はしていません。調達や精製などにかかる時間によるタイムラグであると、考えられます。その意味では、先行した原油相場につられて、目先、米国のガソリン小売価格も下落する可能性があります。


 このことは、短期視点で米国のインフレ(物価高)鎮静化→利上げ確率低下→株高→原油高というシナリオを推進する要因になり得ます。


図4:米国のガソリン小売価格(週次)  単位:ドル/ガロン
2026年後半の原油市場は強含みの展開を予想
出所:EIA(米エネルギー情報局)のデータより筆者作成

 図5は、1990年代半ば以降の米国のSPRの週次の増減を示しています。

2022年のウクライナ戦争時には、大規模な備蓄放出が実施され、週当たり800万~900万バレル近い大幅な削減が見られました。


 これは主に、ウクライナに軍事侵攻をしかけたロシアに対する制裁がきっかけで、ロシア産原油を買わなくなった欧州諸国への輸出が増加したためでした。


図5:米国の原油戦略備蓄(SPR)の前週比 単位:千バレル
2026年後半の原油市場は強含みの展開を予想
出所:EIA(米エネルギー情報局)のデータより筆者作成

 さらに注目されるのは、2026年のイラン戦争のさなかに、2022年を超える規模の放出が行われていることです。2026年5月には過去最大となる1,000万バレル弱の放出が行われました。これは、中東情勢の悪化によって同地域から原油を調達することが難しくなった東アジアの国々向けの輸出を増加させるための策が続いているためだと、考えられます。


 しかし、大規模な備蓄放出を続けることには限度があります。SPRが減少すれば、将来の危機発生時に対応できる余力が低下してしまうためです。そのため、米国政府はいずれ、ウクライナ戦争勃発直後と同様、備蓄の水準をもとに戻す可能性があります。


 目先はまだ、これまでどおり、備蓄急減→需給ひっ迫→原油高、という流れが続く可能性がありますが、一巡すれば、備蓄積み上げ→新たな需要増加→原油高、という流れが目立つ可能性があります。


 図6は、中東の主要な産油国における、財政収支(歳出と歳入)が均衡するために必要な原油価格の推移を示しています。サウジアラビア、イラク、クウェートはいずれも80~100ドル程度の原油価格を必要としていることが分かります。


 経済の多角化を目指して大規模なインフラ投資を行っている、政治・経済の基盤が安定していない、原油に依存したまま(天然ガスの開発のスピードが比較的遅い)、などの特徴が目立つ産油国ほど、財政収支が均衡するために必要な原油価格が高い傾向があります。


 このことは、OPECプラス全体で行っている「協調減産(自主減産ではない)」を2027年1月以降も継続する動機になり得ます。足元の原油相場の水準では財政収支は均衡しないため、原油相場を高みに向かわせる必要があるためです。


図6:主要産油国の財政収支均衡に必要な原油価格  単位:ドル/バレル
2026年後半の原油市場は強含みの展開を予想
出所:IMF(国際通貨基金)のデータを基に筆者作成

 現在実施している協調減産は、2026年12月まで実施することになっています。今年の11月に予定されているOPEC・非OPEC閣僚会議で協調減産の延長を決定する可能性があります。今回の中東情勢の悪化を受けて減少した分の増産を可能にし、それ以上の生産を抑制する形で協調減産を継続すると、筆者は考えています。この策は原油相場を長期視点で支える要因になり得ます。


産油国減産延長とホルムズリスク常態化

 図7は、ホルムズ海峡の封鎖リスクを概念的に示した資料です。もともと同リスクは発生頻度が大変に低いが発生した場合に甚大な影響をもたらす「テールリスク」に分類されていました。テールリスクは発生頻度が大変に低いため、関係者の備えも限定的になる傾向があります。


 しかし、今年2月28日の米国とイスラエルによるイラン攻撃をきっかけに、ほぼ起きないと目されていたホルムズ海峡の封鎖が現実のものになってしまい、同リスクは「日常的に発生するリスク」に分類されてしまいました。


 今回の中東情勢悪化は、多くの専門家が「最も解決が難しい政治問題の一つ」と位置付けるイスラエル・パレスチナ問題の延長線上で起きていると考えられます。その意味では、「安全なホルムズ海峡」を取り戻すこともまた、解決が難しい政治問題の一つになってしまったと言えます。もうほとんど「安全なホルムズ海峡」は戻ってこない、と言えるのではないでしょうか。


図7:ホルムズ海峡封鎖リスクのイメージ
2026年後半の原油市場は強含みの展開を予想
出所:筆者作成

 こうした変化は原油相場に大きな変化をもたらしたと、筆者は考えています。今後、同海峡を通過する際の輸送コストや保険料の上昇が恒常化して(イラン革命防衛隊が課す可能性がある通行料を含め)、原油相場はさらに支えられやすくなる可能性があります。


「複数要因の同時進行」が分析のコツ

 図8は、2014年以降のNY原油先物価格の推移と、2026年下半期の原油相場を左右する主な要因を示しています。2026年前半、原油価格は中東情勢の悪化を受けて一時100ドルを超える水準まで急騰したものの、その後、停戦協議の一歩目となる覚書の署名が行われたことで70ドル前後まで下落しました。


 しかし、図が示すように、足元の原油市場には価格を押し上げる複数の材料が存在しており、今後、再び上昇基調を強める(暴落する可能性がより低くなる)可能性があります。


図8:NY原油先物価格(中心限月 日次平均) 単位:ドル/バレル
2026年後半の原油市場は強含みの展開を予想
出所:Investing.comのデータを基に筆者作成

 全体として、2026年下半期の原油相場では、中東情勢、OPECプラスの生産動向、米国の金融政策・原油在庫など、複数の要因が同時進行することが予想されます。


 中東情勢をきっかけとした短期的な上下の圧力にさらされるだけでなく、米国の在庫減少やOPECプラスの協調減産継続、世界的な需要回復「期待」などがもたらす中期・長期的な上昇圧力を受ける構図になる可能性があります。複数の材料を総合的に捉えながら動向を見守る必要があるでしょう。


 原油相場は一つの材料だけで動いていません。このことは全てのコモディティ(国際商品)に共通することです。消費国に住むわたしたちだからこそ、このことを強く意識する必要があります。


[参考]エネルギー関連の投資商品(一例)

国内株式(NISA成長投資枠活用可)

INPEX(1605)
出光興産(5019)


国内ETF・ETN(NISA成長投資枠活用可)

NNドバイ原油先物ブル(2038)
NF原油インデックス連動型上場(1699)
WTI原油価格連動型上場投信(1671)
NNドバイ原油先物ベア(2039)


外国株式(NISA成長投資枠活用可)

エクソン・モービル(XOM)
シェブロン(CVX)
オキシデンタル・ペトロリアム(OXY)


海外ETF(NISA成長投資枠活用可)

iシェアーズ グローバル・エネルギー ETF(IXC)
エネルギー・セレクト・セクター SPDR ファンド(XLE)


投資信託(NISA成長投資枠活用可)

シェール関連株オープン
HSBC世界資源エネルギー オープン


海外先物

WTI原油(ミニあり)


CFD

WTI原油・ブレント原油・天然ガス


(吉田 哲)

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