日銀の利上げを背景に、長期金利が上昇しています。通常、金利上昇は株価にとってネガティブなイメージですが、中には金利上昇が株価にとってプラスに働く銘柄も少なくありません。
金利上昇で「株価が上昇する銘柄」の特徴は?
米イラン交渉の進展期待に伴う原油相場下落から、物価上振れ懸念が和らぎ、小康を保っていた日本の10年金利ですが、「骨太の方針」の原案が公表された6月末を境に再び騰勢を強め、3%が視野に入ってきました。
2026年7月8日: 10年金利3%超へ、上昇行き過ぎれば日銀は国債購入を増やすのか(愛宕伸康)
長期金利の上昇で恩恵を受ける業界は、主に金融(銀行、保険、証券)と借入依存度の低いキャッシュリッチ企業です。
銀行は貸出金利が上昇する一方、預金金利の上昇は緩やかで、利ざや拡大により収益が大きく改善します。生命保険会社は長期債券の運用利回りが上昇し、運用益が増加します。証券会社は債券販売や投資商品の需要増加で手数料収入が拡大します。
また、無借金企業や現金保有が多い企業は、金利上昇による利息収入増加と財務負担の軽さから相対的に評価が高まる傾向があります。
今回は、これらの業界のうち銀行業界にフォーカスし、中でも同業他社比較の観点で割安度が高い銘柄を探してみました。
ただ割安なだけでは不十分…「投資妙味のある割安銘柄」の探し方
どの銘柄が割安かを知るためには、その企業の「収益性」と「株価の評価」との比例関係を利用します。
<株価評価と収益性はおおむね比例関係>
実際に、国内上場の都市銀行・地方銀行のうち、「2025年度当期黒字」かつ「2026年度増益見通し」の67行について、収益性(自己資本利益率(ROE))と株価の評価(株価純資産倍率(PBR))の比例関係をチャート化しました。
<国内銀行67行のPBRとROEの関係>
この関係に基づき、67行各行の割安度合い・割高度合いが解消された場合の株価を計算しました。その結果、特に割安感が高い銘柄トップ10は次の通りです。
割安銀行株トップ10
<国内銀行割安銘柄トップ10> 順位 社名 本店所在県 証券
コード ROE
(%) PBR
(倍) 株価 割安感解消 PBR 株価 上昇率 1 豊和銀行 大分 8559 3 0.1 466 0.4 1,800 286% 2 じもとHD 宮城 7161 3 0.2 493 0.4 1,450 195% 3 筑波銀行 茨城 8338 7 0.5 631 1.0 1,320 109% 4 宮崎太陽銀行 宮崎 8560 3 0.3 2,339 0.5 4,410 89% 5 大光銀行 新潟 8537 4 0.3 2,690 0.5 4,490 67% 6 トマト銀行 岡山 8542 3 0.3 1,532 0.5 2,550 66% 7 鳥取銀行 鳥取 8383 3 0.3 1,672 0.5 2,550 52% 8 筑邦銀行 福岡 8398 3 0.3 2,100 0.5 3,110 48% 9 北日本銀行 岩手 8551 5 0.5 5,650 0.7 8,350 48% 10 佐賀銀行 佐賀 8395 7 0.7 5,550 1.1 8,040 45% ※株価は2026年7月9日終値
出所:各社資料などより作成
これらトップ10に入った銀行は、大きく、「再編候補バンク」グループ、「地域密着の中堅バンク」グループ、「地方の主力バンク」グループに分けられます。
「再編候補バンク」グループとは?
このグループは、規模が小さく収益力が相対的に低い上に、地域人口の減少や産業構造の変化により貸出収益の伸びが見込みにくい状況が続いていました。
しかし、現在の金利上昇環境下においては、利益の伸びが見通せる状況となっています。
<「再編候補バンク」グループ> 順位 社名 証券
コード 当期純利益(億円) 2025年度 2026年度計画 増加率 1 豊和銀行 8559 8.2 8.3 1% 2 じもとHD 7161 25.8 36.0 39% 4 宮崎太陽銀行 8560 14.8 15.0 1% 8 筑邦銀行 8398 11.5 15.5 35% 9 北日本銀行 8551 43.6 45.0 3% 出所:各社資料などより作成
また、このグループは再編圧力が強く、周辺地方銀行との統合や持株会社化の可能性が常に意識されていることも特徴です。普段は株価が極端に割安で放置されることが多いものの、再編が起きれば株価が急騰するケースもあるでしょう。
「地域密着の中堅バンク」グループとは?
このグループは地域密着型で、貸出規模は中堅クラス。財務は安定しているものの、地域人口の伸びが弱く、貸出成長力は限定的です。収益力は平均的で、突出した強みはないものの、極端な弱点もない「中庸型」の銀行といえるでしょう。足元ではやはり金利上昇環境の恩恵を受けて、利益の伸びが見通せる状況となっています。
<「地域密着の中堅バンク」グループ> 順位 社名 証券
コード 当期純利益(億円) 2025年度 2026年度計画 増加率 5 大光銀行 8537 28.0 33.0 18% 6 トマト銀行 8542 19.7 20.0 2% 出所:各社資料などより作成
これら2行についても再編の可能性はゼロではありませんが、財務が崩れているわけではなく安定感が相応にあるため、現在の体制を維持し続ける可能性が高いでしょう。
なお、大光銀行(8537)は破産した全東信に15億円を貸し出しており、その全額について今年度第1四半期に引当処理する予定も、通期の業績予想に変更はないとのことです。また、トマト銀行(8542)も債権者リストに含まれていますが、金額については明らかになっていません。
「地方の主力バンク」グループ
このグループは地方銀行の中でも地域の「主力バンク」として機能しており、貸出規模、顧客基盤、財務の健全性が比較的高い点が特徴です。自己資本比率や不良債権比率が安定しており、景気変動の影響を受けにくい堅実な収益構造を持っています。
そのため、金利上昇局面では利ざや改善の恩恵を確実に受けられるため、株価が割安な場合は評価見直しが起こりやすい層です。
<「地方の主力バンク」グループ> 順位 社名 証券
コード 当期純利益(億円) 2025年度 2026年度計画 増加率 3 筑波銀行 8338 66.7 67.0 0.4% 7 鳥取銀行 8383 15.8 16.0 1% 10 佐賀銀行 8395 85.9 93.0 8% 出所:各社資料などより作成
なお、佐賀銀行(8395)は破産した全東信に6億円を貸し出していますが、通期の業績予想に変更はないとのことです。また、鳥取銀行(8383)も債権者リストに含まれていますが、金額については明らかになっていません。
(西 勇太郎)

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