「株はハイリスク、債券は安全」と信じていませんか? 確かに一般論としては正しいですが、個別銘柄の世界では必ずしもそうとは限りません。今回は、利回り10%の債券と高配当株を比較しながら、「債券のリスク」について、クイズ形式で分かりやすく解説します。
クイズ
以下二つの投資対象のうち、どちらに投資すべきでしょうか?
【1】NTT(9432)株:株価154.3円、予想配当利回り3.5%(2026年7月27日時点)
【2】円建て債券:償還まであと1年、予想利回り10%
【注】NTT株の予想配当利回りの計算方法
同社の今期(2027年3月期)1株当たり配当金(会社予想)5.4円を、7月27日株価154.3円で割って算出。5.4÷154.3×100=3.5%
はじめに「アセット・アロケーション」を考える
クイズの答えを書く前に、アセット・アロケーション(資産配分)について説明します。
長期の資産運用を決める時、最初に考えなければならないことはアセット・アロケーション(資産配分)です。日本株・外国株・国内債券・外国債券などに何%ずつ投資するか決めることから始めます。長期の投資成果はほとんどアセット・アロケーションによって決まるからです。
参考まで、日本最大、かつ世界最大の公的年金、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の基本ポートフォリオは以下の通りです。
次に投資銘柄を選択
アセット・アロケーションが決まったら、次に何を買うか決めます。その時、注意しなければならないことがあります。
株と債券では、一般的に「株の方がリスクは高い(債券の方が安全)」と考えられています。一般論としては正しいですが、個別銘柄について、正しくないこともあります。
幅広く分散投資しているインデックスファンドに投資するならば、株より債券の方がリスクは低いといえます。例えば、投資信託で日経平均インデックスファンドと国内債券インデックスファンドに投資するならば、株の方がリスクは高い(債券の方が安全)といえます。
ところが、インデックスファンドではなく、個別銘柄を選別して投資する場合は、必ずしも債券の方が安全といえません。
「リスクフリー・レート」といわれる10年国債利回りは約2.8%
欧米の投資理論において「リスクフリー・レート(リスク無し利回り)」という概念があります。欧米先進国において、「国は破綻しない」【注】という前提に基づいて、10年もの新発国債利回りを「リスクフリー・レート」と定義しています。
【注】「国は破綻しない」前提
実際には国は破綻することがあります。対外負債の大きい新興国では、国債のデフォルト(債務不履行)が起こることもあります。アルゼンチン国債は過去にデフォルトを起こしたことがあります。
日本も、第2次世界大戦後に国債のデフォルトを起こしました。ただし、現在の日本の国債については、デフォルトとなるリスクは極めて低いと判断できます。国債は「満期まで保有するならば元本は確保される」と予想されています。
日本のリスクフリー・レート(10年もの新発国債利回り)は7月27日時点で2.77%です。日本銀行の異次元金融緩和で2020年くらいまで0%に抑え込まれていましたが、2021年以降、金融正常化が進むにつれ利回りが上がってきました。
理解できるリスクを負って利回りを確保する
リスクフリー・レートを上回る利回りの債券には、何らかのリスクがあります。円建て債券についていうと、リスクフリー・レートが約2.8%なので、それを上回るレートの債券には、何らかのリスクがあることになります。
それでは、クイズの答えを解説します。
正解:投資するならNTT株の方が良い
NTT(9432)は、株の中では、相対的にリスクが低めです。とはいっても株ですから、決して低リスクではありません。あくまでも、相対比較としてリスクが低いと言っているだけです。
NTTの予想配当利回りは3.5%です(7月27日時点)。10年国債利回りが約2.8%ですから、十分魅力的な利回りです。配当利回りを目当てに長期投資して良いと思います。
NTTは、成長性が高いとはいえません。ただし、日本の通信インフラを独占しているので、ビジネスの安全性は極めて高いと言えます。
世界中のネット企業が日本でネット事業をするにはNTTの通信網を借りる必要があります。NTTは、安価に通信網を開放する義務があるので、そこで大もうけできませんが、安定的に収益を得ることができます。
NTTには、NTTドコモ(9437)・NTTデータグループ(9613)という優良子会社があります。ドコモで安定高収益を稼ぎ、NTTデータで成長していく期待があります。
NTTグループ全体として、世界景気の影響をあまり受けないディフェンシブなビジネスで、連結営業利益率は安定的に10~14%くらいの水準を保っています。財務良好で収益基盤も安定的な配当利回り株として、長期投資に適していると考えられます。
ただし、株式投資には当然リスクが伴います。最終的な投資判断はご自身でなさってください。
1年で利回り10%の債券には投資すべきでない
債券投資にも、さまざまなリスクがあります。代表的なリスクは、信用リスク(破綻すると元本が毀損[きそん])、金利上昇リスク(金利上昇時に値下がりするリスク)、流動性リスク(売りたい時に売れないリスク)などです。デリバティブ(先物取引、オプション取引、スワップ取引など)を使ってもっと複雑なリスクを負っている債券(仕組債)も存在します。
10%のリターンは、相当高いリスクを負わないと得られません。そのリスクが何であるか、理解しないまま、投資すべきでありません。残存1年ならば、流動性リスクと金利上昇リスクはあまり問題となりませんが、信用リスク、あるいはデリバティブが絡むリスクについてしっかりチェックする必要があります。
きちんとリスクを調べたら「リスクが高すぎて投資すべきでない」という結論になる可能性が高いと思います。
ファンドマネジャー時代の経験
私は、ファンドマネジャー時代に、残存1年で利回り10%の円建て債券に積極的に投資したことがあります。1992~1993年くらいです。
当時、日本株は、バブル崩壊が始まったばかりで急落していました。そうした中、日本企業が発行した転換社債(株式への転換権のついた社債)も投げ売りされていました。
アドバンテストなどの優良銘柄の転換社債で、残存年数の短いものまで投げ売りされて高利回りとなっていました。当時ファンドマネジャーだった私は、投げ売りされていた高利回り転換社債を積極的に買いましたが、とても良い投資となりました。
このように、残存1年で高利回りの債券について、「どういうリスクがあるか」「負う価値のあるリスクか」判断した上で買うのは、問題ありません。
どういうリスクがあるか理解しないまま「債券だから安全」と考えて投資するべきではありません。リスクフリー・レートを超える利回りの出る債券には、必ず何らかのリスクがあります。それがどういうリスクか、考えるようにしてください。
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2026年7月28日: 利回り3.5%のNTT、買いと判断する三つの理由(茂木春輝)
(窪田 真之)

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