2026年7月11日(土)・12日(日)の2日間、蕨市文化ホールくるる(埼玉県蕨市)で「わらてつまつり2026」が開催されました。子どもから大人まで楽しめる内容ですが、実はこのイベントでミニ新幹線が走ることには、大きな意義が存在していました。
「わらてつまつり」は1893(明治26)年に蕨駅が開業して120周年の2013(平成25)年に、「蕨市賑わい創出プロジェクト~元気を見つけに出発進行~」をテーマに始まりました。コロナ禍の休止を乗り越え今年で11回目。メインのミニ新幹線乗車や鉄道模型の展示運転会、トレインシミュレータなどが企画され、多くの人々が訪れます。
今のJR蕨駅といえば京浜東北線が停車する駅で、始発や終着の電車もなく、あまり車両基地や特別な施設に関係するイメージはありません。しかし、その昔は蕨駅の構内から分岐する線路の先に、車両を造る日本車輌製造東京支店蕨工場がありました。蕨駅から南浦和方面に進むと線路の西側に広がる芝園団地がその跡地です。
1934(昭和9)年4月の移転開業以来、ここで製造された鉄道車両は数知れず。そして今や国内の移動に欠かせない新幹線の、最初の試作車である1000形A編成は1962(昭和37)年4月に完成。5月18日、在来線用の仮台車を装備し、引き込み線のある蕨駅から神奈川県・鴨宮のモデル線へ輸送されました。
試作車も量産車もここから旅立ったさらに1964(昭和39)年2月19日には、日本初の新幹線となった0系の量産車が工場を出発、蕨駅から輸送されました。つまり、試作車・量産車ともに日本車輌製造の蕨工場で造られ、蕨駅から在来線上を牽引(けんいん)されたのです。
工場が存在した場所は行政区分上こそ川口市であるものの、蕨には鉄道と深いつながりがあるのです。
かつて日本車輌製造に勤務し、現在は日本鉄道史研究家として活躍、「わらてつまつり」の立ち上げから関わっている実行委員の荒井貞夫さんは、「工場の跡地である芝園団地に記念碑があるように、蕨の街は新幹線車両が初めて線路を走った場所でもあります。東北貨物線(湘南新宿ライン)の線路脇には当時の引き込み線も残っています。常に最新技術を取り入れ進化し続ける新幹線、その発祥の地とも言えるこの街で、鉄道に関わりのあるイベントを開催することを考案しました」と話してくれました。
また、「講演会などで子どもたちに“蕨は新幹線が最初に走った街なんですよ”と伝えると、皆驚いた表情をします。初めての新幹線を送り出した街として、もっと誇りに思ってもらえたら」と期待を寄せていました。
「わらてつまつり2026」のミニ新幹線は、多くの家族連れを乗せJR東日本川口駅長と子ども駅長の出発合図とともに出発しました。その昔、新幹線の門出となった引き込み線の近くを行く、小さな新幹線。この日の思い出を胸にした子どもたちが、やがて日本の鉄道を支えていくことになるかもしれません。

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