メモリー・半導体相場が崩落しています。市況解説では、AI需要の先行き懸念などと理由付けされがちですが、AI企業は依然として好業績であり、未来に前向きです。

では、いったいなぜメモリー・半導体株の下落が止まらないのか。好業績株を手放す投資家の動機と、この状況から導かれる投資対応をご案内します。


メモリー・半導体株相場の崩落…「超」がつくほど好業績でも株価...の画像はこちら >>

サマリー

●メモリー・半導体相場は、ファンダメンタルな評価からは、すでに割安な買い場水準と判断
●しかし、現状の下落は、ファンダメンタルではなく、行動学的にまだ長引くリスクがある
●ファンダメンタルには買い場、タイミング的にはまだ要注意という見方に基づく対応は?


7月に急落した米・韓・日のメモリー株

 米国、韓国、日本のメモリー株は、関連する業種の銘柄を巻き込み、4~6月の相場に強烈なラリーを形成しました。しかし、7月には劇的な自律調整に見舞われています。


 速く高い相場には、相応の反落リスクを伴うもの。筆者は日ごろから、このことを相場の波動力学の基本として解説してきました。ただし、今回の反落は、通常の自律調整を超える力が働いています。


 このレポートでは、その力とは何か、通常ではない力が発揮された相場はどうなるか、そして、この自律調整が一巡した後の相場をどう展望するか、を順に明らかにしていきます。


相場反落の異常な力学

 急速な相場ラリーの反落は、悪材料のニュースなど何らかのショックをきっかけに起こるばかりでなく、往々にして自律的なポジション調整として発生します。


 急上昇し続ける相場には、一獲千金を夢見る投資家が参集します。そして含み益が増えるほど、自らの相場観の正しさを確信し、リスク判断が甘くなり、前のめりになりがちです。そして、含み益があるのだからと、いざとなればいつでも売り逃げられるとの慢心も漫然と生まれるものです。


 ところが、相場が速く高まると、新規マネーの購入が鈍り、相場を支持する力が鈍る段階に至ります。既参入の投資家が売り逃げる時の出口(受け皿)は買い手です。

しかし、いざ相場が下がると、買い手はますます細り、売り逃げようとする投資家は、「出口も隘路(あいろ)※化」現象に直面します。


※隘路…狭くて通りにくい道、物事を進めるときの大きな障害(ボトルネック)


 うまくすれば相場が回復して助かるかもしれない、しかし、逃げ遅れるほどひどいダメージを受ける恐れがある、この不安定な損益状況こそが、逃避者を迷わせ、焦らせ、最もパニックに陥らせやすくする条件といえるでしょう。


 相場というのは、ラリーの後にパニック的売り逃げを誘発するメカニズムそのものです。そして日ごろ観察される相場波動の下落は、健全なポジション調整と理解されます。


 しかし、マクロ環境や政策、業績、新発明など、何らかの裏付けがあって、相場ラリー自体がラリーを正当化し、強化するループになって、過剰な相場高になると、その反落もより深刻なものになりがちです。


 今回のメモリー株相場は、大手AI企業によるデータセンター建設への巨額な設備投資が明らかになり、供給不足でボトルネックになると危惧されたメモリー価格が急騰したことが、ファンダメンタルな裏付けとして沸き立ちました。


 その相場上昇、そして反落を劇的に強めた力学要因は、レバレッジをかけた投機の集中です。特に、世界のメモリー供給トップである韓国2銘柄(サムスン電子とSKハイニックス(SKHY))は、レバレッジ型上場投資信託(ETF)があり、個人投資家もプロも熱狂的に購入しました。


 日本でも、メモリー企業としてキオクシアホールディングス(285A)1社にレバレッジをかけた信用買いが殺到。それぞれ相場を祭り上げました。


 相場上昇時には、供給不足のメモリー価格の上昇が当該企業の業績を直接押し上げるために、ファンダメンタルズに裏付けられたラリーとされました。しかし、いざ自律調整に転じると、レバレッジでリスクを高めた投資家のパニック的な売り逃げが、相場を異常な力で押し下げています。


メモリー株崩落の行方

 群集パニック的な売り逃げが、相場のなだれ現象をもたらしています。


 上昇相場を裏付けるとされたファンダメンタルな材料は、下げ相場を追認して、ほぼ全てネガティブな解釈に転じています。巨額のAIデータセンターの設備投資は、巨額の債務負担に耐えられるのか、採算に乗るのか、そもそも実現可能なのかと、今や懸念の元凶のような扱いです。


 メモリー供給企業の業績を裏付けるとされた価格急騰も、それら企業の設備投資強化、中国メモリー企業の台頭で、持続性に疑いの目が向けられています。


 このように、相場が上がる時に強調された好材料が、相場が下がる時には悪材料のように扱われるのは、相場追認という情報解釈の常です。


 ニュースメディアなどの市況解説は、相場が下がる間はずっと、値動きを追認して、「AI需要の先行きに懸念が出て…」などと定型句のような理由付けをしがちで、そのことが逃避に気迷う投資家の不安をあおりがちです。


 最近は、決算で「超」が付くほどの好業績を示した企業の株でも反落し、他の株の下落を連動させる展開が増えています。しかし、これらの企業トップが語るのは、すさまじいAI需要による前向きな未来がほとんどです。


 好業績の株であっても売り急ぐ投資家が抱くのは、「AI需要の先行きへの懸念」ではなく、自分自身の投資ポジションの不安定な損益状況への恐怖です。それだけに、好業績株でも、彼らの売り圧力で反発できないと見ると、不安に駆られて、連鎖売りになるのです。


 まして、レバレッジをかけたポジションの損益状況への不安自体が、レバレッジをかけられています。こうして強化される群集なだれによって、相場の下落はまさかという水準にまで至っているのです。


相場崩落、そしてその後

 レバレッジ取引が極端に集積したメモリー株相場は、すでに過剰なまでに売られつつあります。

その程度が特にひどいのが韓国株です。日本もキオクシアHDの極端なレバレッジ状況が、他の関連銘柄の売りにも波及し、業績対比で過剰な売り領域に入ってきています。


 つまり、ファンダメンタルな評価からすれば、メモリー株、および連れ安となっている関連株は既に割安で、買い場水準になりつつあると判断しています。


 悩ましいのは、今売り急いでいる勢力が見ているのは、ファンダメンタルズではなく、自らの投資ポジションの不安定な損益状況だということです。つまり、損失を抱えたレバレッジ・ポジションの解消がある程度進まないと、相場の持続的な上昇も起こりにくいことを留意する必要があります。


 相場が軟調な間は、相場追認で、AI設備投資の過剰やメモリー価格上昇の持続性への懸念がくすぶるでしょう。


 しかし、設備投資を担う企業に、その計画を下方修正する気配はありません。実現に向けた意欲は、引き続き旺盛です。そして、メモリー価格は2027年も高いままで、その供給企業の業績は極めて良好。こうした状況で、株価が割安に低迷したままとは考えにくいでしょう。


 つまり、短期投資でメモリーなどAI関連株の購入をしたいなら、まだタイミングを熟慮する必要があるでしょう。中長期投資なら、銘柄を慎重に選びつつも、時間分散で仕込んでいける水準感になりつつあると考えています。


 タイミングを計るには、まず韓国でデレバレッジ(レバレッジ・ポジションの巻き戻し)の進捗(しんちょく)具合を注意深く観察しましょう。ただし、米国株市場のリスクテイカーたちが売り飽きて、押し目買い優勢になるのが先かもしれません。


 そして、相場に復調動意が広がると、AI設備投資の裏方的な技術で世界を先導する日本企業への需要の裾野の大きさが、再認識されると期待しています。


「厳しい下げ相場の中でこそ次のチャンスが育まれる」というのが、慎重に前向きな投資家の心得です。


*本稿は個別銘柄を推奨するものではありません、投資はご自身の判断と責任において行ってください。


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(田中泰輔)

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