「5月に売って休暇を取れ」という格言があるほど、米国株には夏場に上値が重くなる季節性があります。日本株も、その影響を受けてしばらく上値が重くなる可能性があります。


 ただし、経験則では「夏枯れ」は次の上昇に向けて割安銘柄を仕込むタイミングともいえます。時間分散しながら買い増ししたいと思います。


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気になる夏場のアノマリー:夏枯れ

 今日は、日本株の夏場のアノマリー【注】について書きます。


【注】アノマリー
 経験的に観測される株式市場の「規則性」。理由がはっきりしないものの繰り返し起こるパターン。


 株式市場には、いろいろな言い伝え、アノマリーや格言があります。その一つに、「夏枯れ」があります。夏場に株式市場の上値が重くなる、下がりやすくなる、というアノマリーです。なぜ、そうなるのでしょうか? 理由を考える前に、まず、事実かどうか、過去のデータを検証しましょう。


 グラフ1は、過去30年の日経平均の、月別の平均騰落率を表しています。


グラフ1:日経平均の月別、平均騰落率:1996年1月~2026年7月までの平均
「夏枯れ」はピンチかチャンスか?アノマリーから読む、日本株「押し目買い」戦略(窪田真之)
出所:QUICKほか各種資料より楽天証券経済研究所作成

 ご覧いただくと分かるとおり、過去30年のデータで見ると、7~9月は平均リターンがマイナスです。


 これはただの偶然でしょうか? あるいは、何か理由があることなのでしょうか?


 ただの偶然ならば、今後も繰り返すとはいえませんが、何か理由があれば繰り返す可能性があります。


 私は、理由があると思います。

一番大きい理由は、米国株に「夏枯れ」の季節性があることです。米国株の影響を受けて、日本株も同じ動きになることが多いといえます。


米国株の季節性「セル・イン・メイ」

 米国株に有名な相場格言があります。日本で「セル・イン・メイ(5月に売れ)」として知られる格言です。


Sell in May and go away and take vacation. But remember to come back in September.
「5月に売って(株式市場から)立ち去り、休暇を取れ。でも9月に戻ってくるのを忘れるなよ」


 ユーモアあふれる表現ですが、要するに「5月に売って、9月に買い戻せ」という格言です。


 この教えは有効なのでしょうか? まずは、米国株を代表するS&P500種指数の過去30年の月別騰落率を見てください。


グラフ2:S&P500の月別、平均騰落率:1996年1月~2026年7月までの平均
「夏枯れ」はピンチかチャンスか?アノマリーから読む、日本株「押し目買い」戦略(窪田真之)
出所:QUICKほか各種資料より楽天証券経済研究所作成

 米国株は、長期的に大きく上昇していますが、それでも、8月、9月はマイナスとなることが多いのが分かります。「夏枯れ」と言ってもいいのですが、そうは言わず、米国の相場格言では「セル・イン・メイ」として知られています。過去30年のデータを示していますが、過去50年で見ても傾向は同じです。同じような季節パターンを米国株は繰り返しています。


 これは単なる偶然でしょうか? 何か理由があって、こうなるのでしょうか? 私は、はっきり理由があると思います。


 米国経済には、はっきりとした季節性があります。

米国株は、毎年繰り返す米国経済の季節性を反映する結果、「セル・イン・メイ」のパターンを繰り返すことが多いと考えています。


 米国経済が一番盛り上がるのは、クリスマス商戦のある10~12月です。クリスマス商戦明けの、寒い1~3月は経済活動が停滞する閑散期となります。4~6月から経済活動が少しずつ回復し、7~9月にかけてクリスマス商戦向けにつくりだめし、10~12月が1年間の最盛期となります。


 このため、10~12月の米国株は大きく上昇しやすくなります。その反動で、1~3月の米国株はやや低調となります。4~6月は、次の10~12月に向けて経済が盛り上がる期待で、株価が上昇します。


 ところが、4~6月に先取りして上昇した分、7~9月は安くなることが多い。そして、最後の10~12月に一年の締めくくりで、株価が大きく上昇します。これが、米国株のアノマリーにつながっていると思います。


 米国の国内総生産(GDP)統計は、季節調整をして計算されています。従って、先ほど述べた季節性は、季節調整後のGDPの四半期別成長率に表れません。

それでも、人々は肌感覚で、10~12月の盛り上がり、1~3月の停滞を感じます。それが、米国株のトレードに表れやすいと、私は考えています。


 もちろん、コロナショックやリーマンショックなど激変がある年は、この季節性が働きません。季節性通りに動くのは、特別な出来事のない年です。


今年はどうか?

 よく繰り返すアノマリーでも、毎年、必ず繰り返すわけではありません。とはいえ、今年も年後半にかけて、同じパターンとなる可能性は十分あると思います。今年の米国株は中東危機で急落・急騰しましたが、8月18日時点で、S&P500(米国株を代表する指数)は年初来12.4%上昇しています。おおむね例年の上昇パターンに乗っているとみることもできます。


 ところが、足元、以下三つの不安が出て、上値が重くなっています。8~9月にかけてスピード調整して、年末にかけて再度上昇することも考えられます。


【1】AI過剰投資懸念
【2】中東危機再燃
【3】インフレ・金利上昇懸念


 足元の不安の中で特に、長期金利の上昇には注意が必要です。米国10年金利が5%まで上昇すると、需給悪化懸念から米国株が調整するリスクが高まると思います。

日本の10年金利は3%乗せが近づいています。こちらも、株から債券への資金シフトを生じる可能性があり、注意が必要です。


グラフ3:米国・日本の長期・超長期金利推移:2019年末~2026年8月19日
「夏枯れ」はピンチかチャンスか?アノマリーから読む、日本株「押し目買い」戦略(窪田真之)
出所:QUICKほか各種資料より楽天証券経済研究所作成

 以上、今日は、アノマリーを意識した短期的な見通しについて書きました。


 私は、日本株は割安で長期的な上昇余地が大きいと考えていますが、短期的には上値の重い展開が続く可能性があります。夏枯れで株価がさえない動きをする中で、少しずつ時間分散しながら買っていけばよいと思います。


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(窪田 真之)

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