株を買いやすくするために、株数を増やし株価を下げる目的で行われる株式分割。価格面でも株数面でも買える人が増えるため、結果的に株価にプラスだ、という人もいますが、逆に株式分割で株価が下がってしまうケースも。

株式分割と株価の関係を解説します。


「株式分割」っていったい何?株価への影響は?の画像はこちら >>

最近よく聞く「株式分割」って、いったい何?

 株式分割とは、企業が1株をいくつかに分割して、発行する株の総数を増やす手続きのことです。


 例えば「1株を3株に分割」する場合、持っている株数は3倍になりますが、株価は3分の1になります。そのため、分割の前後で持ち株の価値(時価総額)自体は変わりません。


 ではなぜ企業は株式分割を行うのかというと、主な目的は「株を買いやすくすること」です。


 株価が高すぎて手が届かなかった個人投資家でも、分割により少額から投資できるようになります。投資家が増えれば買い注文が集まりやすく、結果として株価が上昇するケースもありますが、逆に売却が増えて下がることもあり、株価への影響は需給バランス次第と言えます。


株式分割を行う企業が増えている

 2026年6月、日経平均株価が7万円を突破し、個別銘柄も大きく値を上げるものが数多くあります。


 現在、上場している個別銘柄の売買単位は100株ですが、株価が高くなると、1単位当たりに要する金額が大きくなってしまいます。


 株価が2万円、3万円となれば、1単位買うのに200万円、300万円必要ですから、個人投資家にとっておいそれと手を出すことも難しくなります。


 そこで株価が大きく上昇した企業は、個人投資家にも株を買いやすくするために株式を細かく分割することで株価を下げるということがよく見られます。


 8月25日には、東京海上ホールディングス(8766)が、1株を15株に分割することを発表し、話題になっています。


 8月28日時点での、東京海上HDの株価は7,693円ですから、仮にこの株価を基準とすれば、15分割により1株の株価は513円になります。現在は、東京海上HDの株を買おうとすると約77万円必要ですが、15分割後は5万円ちょっとで東京海上HD株を買えることになります。


株式分割をすると企業価値はどうなるのか?

 株式分割をすると通常株価は下がります。株価1万5,000円の銘柄が1:3の株式分割をすると、株価は3分の1の5,000円になります。


 これだけ見ると、この株を持っている株主は損をするようにも見えますが、その分株数が3倍になるので、「株価×株数」で計算すると、保有者の総額は変わりません。


 もともと100株保有していたのであれば、「1万5,000円×100株=150万円」が、「5,000円×300株=150万円」となるだけです。


 また、株式分割はその名の通り単に株式を細かく分けるだけですので、ファンダメンタルズの面で見た企業価値には一切影響はありません。


なぜ株式分割をすると株価が上昇するといわれるのか?

 企業価値には影響がないにもかかわらず、株式分割をすると株価が上がるとよくいわれます。それはなぜでしょうか?


 最も大きな理由は、「株を買える投資家が増える」ということです。上の東京海上HDの例でいえば、77万円は出せないが、5万円なら出せるという個人投資家は大勢いるでしょう。


 株式分割により買いたいと思う投資家が増え、それが買い需要の増加につながって実際に株価が上がるという理屈です。


 つまり、ファンダメンタルズや企業価値には何ら影響しないものの、「買いやすくなる」という需給の良化に伴い株価が上昇しやすくなるのです。


最近は株式分割をすると株価が下がることも多い

 しかし近年は、株式分割をすることで逆に株価が下がることも多くなっています。これには、株式分割によって逆に売り需要が増えてしまうことが一因です。


 上の東京海上HDの例で、すでに100株保有している株主の立場で考えてみます。


 100株しか保有していない場合、100株全て売るかそのまま保有するかの2択になってしまいます。そうであれば保有を続けるという株主も多いでしょう。


 でも、ここで1:15の株式分割が行われると株数は1,500株に増えます。1,500株あるなら、そのうちの3分の1の500株くらいは売っておこうかな、と考える株主も結構いるはずです。


 株式分割を行うことで株主が保有株を売りやすくなる、つまり、既存の株主からの新たな売り需要が発生し、これが株価下落につながるのです。


結論:株価が上がるか下がるかを決めつけないようにしよう

 上記から分かる通り、株式分割にはファンダメンタルズ面の効果は何らないものの、新たに買いの需要を生じさせる要因と、新たに売りの需要を生じさせる要因という、相反する二つの要因が生まれることを理解する必要があります。


 そして新たな買い需要と新たな売り需要の綱引きにより、強い需要の方に株価が引っ張られていくのです。


 最近、株式分割をする企業の株価が軟調なのは、新たな買い需要(新規にその株を買いたいという需要)より、新たな売り需要(既存株主からの保有株の一部売却の需要)の方が強くなっているため、と推測されます。


 もちろん、銘柄によって買い需要の方が強いか、売り需要の方が強いかは異なりますし、事前にそれらを予測することはできません。


 従って、株式分割によって株価が上昇する、もしくは下落すると安易に決めつけるのは危険であり、株価のトレンドに従って行動することが望まれます。


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(足立 武志)

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