「辛い!」不寝番を廃止へ

 韓国の新聞東亜日報は2026年7月24日、韓国国防部が兵舎内に防犯カメラを設置した部隊に限り、大隊長以上の指揮官の裁量で、兵士の「不寝番(夜間警備勤務)」を廃止できるようにする部隊管理訓令改定案を行政予告したと報じました。

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 この管理令が行政予告される前、韓国軍では夕方の点呼から翌朝の起床点呼まで、2人1組、1~2時間交代で、兵舎や廊下の見回りを行っていました。

 韓国では今のところ徴兵制が施行されており、この不寝番の役目は徴兵されて入隊した兵士にも回ってきます。韓国の徴兵制は原則として18歳から26歳の男性を対象としていますが、大多数は大学生活や就職に影響が出にくい、20歳から21歳(満年齢)で入隊しています。この年齢は、一番眠りたい盛りでしょう。

 20歳で入隊した筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)の韓国人の知人も、「起こされて不寝番を務めるのは、兵役期間中に辛いと感じたことの一つ」だと述べていました。

 人間による不寝番が、不審者の侵入や脱走などに即座に対処する上で有効なのは間違いありません。にもかかわらす不寝番を廃止する方向に進んでいるのは、兵舎の施設近代化により、警戒作戦用または部隊管理用の防犯カメラが普及したためだと韓国国防部は説明しています。

 この防犯カメラの普及を含めた兵舎の近代化は、韓国軍、というより韓国が直面している少子化対策の一環として行われたものです。

少子化で国境警備もままならない?

 不寝番が特に“堪える”のは、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との停戦ラインである、いわゆる38度線でしょう。

 韓国と北朝鮮は2026年8月現在も、1953年に発効した朝鮮戦争の休戦協定に基づく休戦状態にあります。一時期に比べると両国間のトラブルは減少しているものの、韓国軍にとって事実上の国境である38度線の警備は依然として重要な任務です。

 ただ、38度線の長さは約250kmにおよび、冬の夜間の平均気温は氷点下10度、体感気温は氷点下40度近くまで低下することもあります。この環境で人員による警戒監視を行うことは容易ではなく、かねて問題視されていました。

15年前の「無人車両」も全て「少子化をにらんでいた」か?

 筆者は2011(平成23)年10月にソウル郊外で開催された防衛装備展示会「ADEX2011」で、韓国の国産UGV(無人車両)を目にしました。この時展示されていたUGVは、後で述べる「有・無人複合分隊」に採用されたものに比べれば単純な構造でしたが、人員には過酷な、国境地帯の警備を想定して開発されたものでした。

 韓国で兵器開発を主導する防衛事業庁とメーカーの方々は、「政府は少子化対策を進めているが、解決する目途は立っていない。その状況下で国防を維持していくためには、UGVに限らず各種無人装備品の開発と、有人装備の省人化、兵士の勤務環境の改善を進めていかなければならない」と述べていました。

 まだ日本には無人装備の導入概念が存在しなかった2010年代前半から、韓国が各種無人装備品の開発や兵舎の近代化を進めてきたのは、すべて少子化をにらんで行われてきたのではないかと筆者は思います。

 そして韓国陸軍は2026年7月29日に、UAS(無人航空機)、多脚ロボット、多目的UGV、自動運転車両という4種類の無人システムを1つのチームで運用する「有・無人複合分隊」を第11機動師団の中に新編し、戦闘実験に乗り出しました。これは、無人システムの導入と有人装備の省人化、国防を両立させる軍改革計画として2010年代なかばから進めてきた「アーミータイガー」の一環として行われたものです。

「徴兵は国とってマイナス」 日本は何を学ぶ?

 李在明大統領は2026年8月14日に、「少子化のため、現在のような歩兵中心の非効率的な軍構造を維持するのは不可能であり、望ましくもない。選択的募兵制を導入し、わが軍を先端装備と技術中心のスマート精鋭強軍に変える国防改革を迅速かつ着実に推進しなければいけない」と述べ、徴兵制による国民皆兵から、志願兵を中心とする軍隊に再編する方針を明らかにしています。

韓国軍が「寝ずの番」廃止へ 辛い任務も徴兵制も「国にとってマイナス」 異次元の“少子化”への向き合い方
2026年7月に行われた韓国陸軍「有・無人複合分隊」の発足式典(画像:韓国陸軍)

 選択的募兵のシステムはまだ明らかにされていませんが、徴兵制は韓国が建国から半世紀以上堅持してきた制度です。これを選択的募兵制とする背景には、ただでさえ少ない若年層の貴重な時間を短期間とはいえ徴兵のために犠牲にすることは、産業面を含めた国家の存立にとってマイナスが大きいという考え方が、韓国国内で定着してきているからなのではないかと思います。

 日本は合計特殊出生率(一人の女性が一生の間に出産する子供の人数)で韓国(0.8人・2025年)をかろうじて上回って(1.14人・同)いますが、早晩、少子化により自衛隊が現在の約21万人(2025年の実数)を維持するのは困難になると思います。

 その時、解決の目途が立たない少子化と国防をいかにして両立していくかのヒントは、同じ少子化という問題を抱える韓国にあるのではないかと筆者は思います。

【これで守ってます】韓国軍の国境警備用「無人車両」たち(写真で見る)

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