SR400の派生モデルにして独立した支持を得たヤマハ・SRX250

 1980年代中盤、バイク好きの若者の多くが速くて高性能な2ストロークのレーサーレプリカに注目しました。しかし、そのブームの影で、実は各社ともライトユーザー獲得を目指し「250cc・4ストローク・単気筒」のバイクをリリース。

水面下で切磋琢磨しあっていました。

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 車検不要で維持費が安く、軽量コンパクト、かつシンプルな構造で扱いやすいエンジンを搭載した「250cc・4ストローク・単気筒」は、2026年現在もライトユーザーに人気の高いジャンルです。当時を知る多くの人にとって、この時代の斬新なモデルとして頭に浮かぶのは、1984年発売のヤマハ・SRX250ではないでしょうか。

 1978年に発売されたヤマハ・SR400は、発売から80年代後半まで、その素晴らしさが市場になかなか伝わらず、複数回のモデルチェンジがなされました。キャストホイールに進化したのにスポークホイールに戻ったり、ディスクブレーキになったのにまたドラムブレーキに戻ったりと迷走を繰り返していました。

 結果的には80年代後半以降、爆発的なブームを起こすわけですが、その迷走の最中でSR400の派生シリーズとして登場したのがSRXシリーズでした。

 SRXシリーズもまたシングル(単気筒)にこだわっていたわけですが、角断面パイプを用いたダブルクレードルフレームを採用し、ガソリンの匂いを感じさせないようなスリムでスタイリッシュな斬新なデザインを実現しました。

 またこれらの構成によって乾燥重量121kgという軽量モデルとなり、それまでにバイクを乗ったことがなかったユーザーや女性からも支持を集めました。良い意味で本家・SR400のクラシカルなイメージと差別化し、独立した支持を得ていきました。

 SRXシリーズは各モデルとも1990年にフルモデルチェンジを果たしますが、このころには本家・SR400が爆発的にヒットし、また後述するホンダ・GB250クラブマンにも人気が派生しネオクラシックブームが起こりつつあった時代です。

 ネオクラでも気鋭レーサーでもないSRXシリーズはどことなく所在なき立場となり、90年代中盤までに姿を消しました。

「カジュアルスポーツ」でありながら実はジャジャ馬!? カワサキ・CS250

 ヤマハ・SRX250登場の翌年1985年には、カワサキからも同クラスのモデルが発売されます。

それがCS250で、これもまた「250cc・4ストローク・単気筒」モデルでした。「CS」とは「CASUAL SPORTS」の略で、バイク初心者や女性でも気軽にバイクを楽しんでもらえるモデルとしての登場でした。

 SRX250同様、ダブルクレードルフレームのモデルですが、SRX250が角断面パイプを採用したのに対し、CS250は丸パイプ。それでもSRX250よりさらに軽い乾燥軽量118kgを実現し、良い意味でカワサキらしくない赤などのカラーリングと相まって、確かに初心者や女性でも扱いやすそうなバイクではありました。

 しかし、実際のパワーは凄まじく、最高出力25kWを実現。「カジュアルなバイクに見えて、実際はジャジャ馬」というクセあるモデルしたが、このせいかヒットには至らず、やがて人知れず姿を消しました。今となっては、一部マニアがその存在を知る程度で、多くの人にとって「マイナー車扱い」なのが残念なバイクです。

ライトユーザー向けにしては「スポーツ寄り」すぎて…スズキ・NZ250

 ライトユーザー層獲得を意識した「250cc・4ストローク・単気筒」モデルは、1986年にスズキからも登場します。NZ250というモデルで、丸パイプと角パイプを複合的に採用したかなり細めのバックボーンフレームで、これまた乾燥重量118kgを実現。

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1986年発売のスズキ・NZ250(画像:スズキ)

 また、トレールモデル・CR250Sのものをベースに大幅に改変したエンジンは、カワサキ・CS250に近い24kWを発揮しました。

 ただし、ヤマハ・SRX250のようなカジュアルで洒落た感じはなく「スポーツバイク寄り」の外見と仕様だったこともあり、同時代のライトユーザーのニーズとは合わずセールス的には振るいませんでした。

 結果的に、NZ250はわずか2年という短命で姿を消し、以降のスズキは、250ccクラスではレーサーレプリカなどの高性能モデルの開発に注力し続けることとなります。

本気で「ライトユーザー向け」モデルを目指したホンダ・CBX250RS

「カジュアル路線のライトユーザー向けモデル」と考えつつもカワサキ・CS250、スズキ・NZ250がどうもその路線に完全に舵を切れず、スポーツバイク寄りとなってしまった要因は、もしかしたら1983年発売のホンダ・CBX250RS、1985年発売のホンダ・CBX250Sの影響かもしれません。

 ネイキッドタイプのCB250RSの後継モデルとして登場したCBX250RSは高性能で、かつ乗りやすいベーシックスポーツモデルを追求して開発された経緯があり、高出力にして低燃費のモデルとして注目を集めました。当時の年間販売計画は1万8000台。実際はおそらくそこまで売れなかったと思いますが、ホンダの強い自信がうかがえる数字ではあります。

 ちなみに、後にヤマハ・SR400と並んで単気筒のネオクラシックブームを牽引することになる1983年発売のホンダ・GB250クラブマンは、実はこのCBX250RSの姉妹車。後に「ライトユーザー」を引き込むことになったのは、カフェレーサーのようなスタイルのGB250クラブマンのほうでした。

 CBX250RSは他社の同等・同コンセプトのモデルより、やや車格が大きかったことから1985年に、よりコンパクトにしたモデルCBX250Sを発売。独自開発のセミダブルクレードルフレームを採用し、当時の「250cc・4ストローク・単気筒」では最も軽い乾燥重量115kgを実現しました。

 女性にとっての乗りやすさを追求し、足つき性も良くしたCBX250RSでしたが、カワサキ・CS250、スズキ・NZ250同様にセールス的にはふるわず、1987年までのわずか2年間の販売で生産終了に至りました。

一番ライトユーザーに刺さったのは…? GB250クラブマン

 ここまでを振り返ると、各社のテーマだった「カジュアル路線のライトユーザー向けモデル」として、実際に結果を残したのはヤマハ・SRX250、ホンダ・GB250クラブマンだったように感じます。

「いや、速くなくていいんで…」 80’s熱狂時代の裏で「初心者歓迎フツーにいいバイク」開発競争 250cc・4スト・単気筒の系譜
ライトユーザー向けのモデルの先駆けとして登場した1983年発売のホンダ・CBX250RS(当時のカタログより)

 SRX250は本家・SR400とはまた違う先進的な魅力を放つモデルとしてライトユーザーはもちろん、ヘビーユーザーからも注目を浴び、90年代中盤に姿を消しながらも、その強いインパクトを思えば成功したバイクだったと言って良いでしょう。

 また、ホンダ・GB250クラブマンは発売当初こそ目立つ存在ではなかったものの、90年代のネオクラシックブーム期にはSR400と並ぶ支持を得たモデルとなりました。

「多くのライトユーザーをバイクの世界へといざなった」ことを考えれば、十分すぎる意義を持つバイクだったと言えると思います。

 ただし、ヒットに至らず本来の目的を達成しなかった他のモデルも、当時各社がかなり力を込めて開発し、切磋琢磨しあったバイクだったことには違いがありません。改めてこれら「知られざる名車たち」に注目してみてはいかがでしょうか。

【画像】あの頃に実は増えてた「フツーを極めた」バイクたち(写真で見る)

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