日本代表・史上最強の検証(5)
前回のカタールワールドカップから4年。当時と現在の森保ジャパンでは、何が変わり、何が変わっていないのか。
2022年カタールワールドカップ。森保一監督が率いる日本代表は、グループリーグでドイツ、スペインを下して決勝トーナメントに進出し、クロアチアと戦っている。
結果は1-1のまま120分を戦ってもケリはつかなかった。その後のPK戦で日本は3人が外して敗れたことによって、「日常的にPK練習を採り入れるべき」などという的外れな意見も出た。
クロアチアとは確かに接戦だったが、勝負の趨勢はチーム力で決まっている。
前半の日本は、鎌田大地を筆頭にした能力の高い選手たちがうまくボールをつなぎ、クロスから惜しい場面も作っていた。前線の前田大然がひとつの範を示すように、猛然としたプレスで相手を追い込んで、相手に余裕を与えなかった。攻守ともに順調に見えた。得点の気配も漂った。
40分、前田が前線でボールを収めてバックパス。
そして43分、堂安が左足でファーにクロスボールを送る。この直前にも同じような攻撃で相手を脅かし、ひとつの形になっていた。さらに際どくなったクロスの軌道により相手ディフェンスがうまく処理できず、こぼれたボールを抜け目なく前田が左足で押し込んだ。日本は堂々とぶつかり合い、前半終了間際に先制に成功した。
しかし、同時に嫌な予感も漂っていた。気持ち、魂を感じさせる戦いは、心身の消耗も甚大だった。90分間も同じ律動は続かなかったのである。
【明瞭だった日本の弱点】
後半、日本は鎌田や遠藤が惜しいシュートを放ったが、徐々に相手にペースを奪われる。後半も同じことを続けられる体力はなかったし、相手にも戦い方を読み取られていた。森保ジャパンは3-4-2-1で戦っていたが、戦術に適応したクロアチアに苦しみ、弱点は明瞭になった。
たとえば右サイドの守備には、ウイングバックの伊東純也が入っていた。戦う前から弱点だったが、左サイドから入ってくるイヴァン・ペリシッチに脅かされながらも、仕返しのように攻め上がることで押し返していた。しかし全体が押し込まれ始めると、綻びが出ることになった。
後半10分、正面に近い右サイドからのなんでもないクロスに対し、ファーでペリシッチに入られてしまう。誰も体を合わせられない状態で、ハンマーで叩くようなヘディングを叩き込まれた。
セオリー的に言えば、伊東がしっかりとマークに下がって対応する必要があったが、背中を追う形になっていた。攻撃の枚数を増やすためにウイングバックに配された伊東は、得点に絡むプレーを期待される一方、宿命的に失点のリスクを背負っていたのだ。
グループリーグのドイツ戦、スペイン戦は、相手が前半、日本を軽んじて飛ばしてくれたことで、後半勝負ができた。しかし、クロアチア戦は前半で自分たちが消耗してしまい、後半は圧力に負けて受け身に回ってしまった。クロアチアも日本の戦いを研究し、後半に余力を残していたのだろう。
クロアチアの選手たちは老獪で、戦術構造的な脆さをとことん突いてきた。右ウイングバックの伊東のところへのクロスだけではない。
【3バック+ウイングバックへの固執】
森保監督が信奉する3バック+ウイングバックという形は、守りに回ったときに陣形として歪みが出る。それぞれ高さが違うため、必然的にズレが生まれてしまう。そもそも4人でそれぞれのレーンを守るより、5人のほうが重なる部分は多く、人はいても綻びは出やすくなる。3バックでの攻撃的な運用は非常に難しく、だからこそ3バック+ウイングバックは世界で主流になっていないのである。
森保ジャパンは今回の北中米ワールドカップも、3バック+ウイングバックで挑むのだろう。「攻撃的な布陣」という触れ込みだが、カタールの時と同じく、本質は守備的で、攻撃の選手に守備をさせているにすぎない。要は人海戦術で、カウンター一発が頼みの綱となる。
現在、シャドーで使われている久保建英、伊東、ウイングバックでの起用が多い堂安律、中村敬斗は、本来はウイングに適性がある。ケガで選ばれなかった三笘も典型だ。日本には、1対1で勝って状況を打開できるジョーカーのような人材がこれだけいるのだが......。
また、彼らはそれぞれ持ち味が違う。たとえば久保は単独ドリブルや切り込んでの左足シュートだけでなく、中盤の選手のようにプレーメイクできるし、縦に持ち込んでのクロスなど多彩さを武器にしている。そのコンビネーション力はラ・リーガでも屈指だ。また、伊東は右サイドを重戦車のように突っ切って、その強度によってクロスやシュートなどゴールに迫れる。中村はユーティリティな才能を持っているが、左サイドの高い位置にいることで勝負を決めるプレーができる選手だ。
なぜ、彼らに守備を強いるウイングバックをやらせるのか。単純に考えれば4バックにして、右サイドは攻めに久保(もしくは堂安、伊東)、守りに菅原由勢、左サイドは攻めに中村、守りに冨安健洋(もしくは伊藤洋輝)と、所属クラブで担当してきたポジションと同じように使い、それぞれの持ち味を掛け算にすることのほうが理にかなっているはずなのだ。
個人的には、大会直前の今でさえも、布陣に関しては再考の余地があると考えている。
今回、過去のワールドカップの敗北の記憶を辿ってみると、掘り下げるほどに目の前の現実と、これから起ころうとしている未来と強く結びついていた。いかにして、過去の轍から学ぶことができるか。それを望みたいところだが、ほとんどの場合、歴史は同じ過ちを繰り返す。たとえ一歩の前進であっても、そこで手打ちにするしかないのだろう。
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