ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

――春のGIシリーズもいよいよフィナーレを迎えます。最後を飾るのは上半期のグランプリ、GⅠ宝塚記念(6月14日/阪神・芝2200m)です。

早速ですが、出走メンバーをご覧になっての率直な印象を聞かせてください。

大西直宏(以下、大西)いいメンバーがそろいましたね。ダービー馬2頭に、グランプリホースが3頭。上半期の総決算と呼ぶにふさわしい面々が名を連ねたと思います。

――確かに好メンバーがそろって見応えのある一戦になりそうですが、今回の舞台で勝ち負けを演じるためにはどういった点がポイントになりますか。

大西 スピード一辺倒ではなく、パワーも秘めていることが大事だと思います。というのも、宝塚記念が行なわれる阪神・芝2200mというコースは、スタート後と最後のゴール前と急坂を2度、上らなければならない過酷な舞台だからです。内回りで直線が短く、後半がロングスパート戦になりやすいことも、レースの厳しさを一層高めています。

 加えて、芝の状態が悪化しやすい梅雨の時期の開催。それも相まって、最後はズブズブの追い込み決着になることも少なくありません。イメージとしては、末脚がキレるというよりも、どんな条件であってもしぶとく脚を伸ばせるタイプを狙いたいところです。

――そうしたタフなレースにあって、今回大西さんが最も注目している馬はどの馬ですか。

大西 昨年末のGⅠ有馬記念(12月28日/中山・芝2500m)を制したミュージアムマイル(牡4歳)です。

 東京のGⅠではキレが足りずに勝利を挙げられていませんが、反対に持久力やタフネスさが求められる中山では、GⅠ2勝を含めて重賞で4戦3勝。この実績は、僕が先ほど述べた宝塚記念で好走できる馬のイメージとぴったり合致します。

 振り返れば、昨春のGⅠ皐月賞(中山・芝2000m)では、断然の1番人気だったクロワデュノール(牡4歳)を退けて完勝。先述の有馬記念でも、ダノンデサイル(牡5歳)、レガレイラ(牝5歳)、メイショウタバル(牡5歳)らを一蹴し、今回も顔を合わせる強豪ライバルたちをことごとく下しています。

 条件が違えばまた別ですが、この舞台での適性は最上位。休み明け初戦ですが、現役最強格らしい走りを見せてほしいと思っています。

――このミュージアムマイルに続く存在はどのあたりになりますか。

大西 対抗に挙げたいのは、ダノンデサイルです。一昨年のGⅠ日本ダービー(東京・芝2400m)を快勝しているため、「東京向きの馬」という見方も多いようですが、当時は鞍上の好リードもあっての快走でした。近走の内容を見ると、長い直線が好走の絶対条件といったこともなさそうですし、阪神・芝2200mでも上位争いを演じられるだけの能力を十分に備えていると見ています。

 同じくダービー馬であるクロワデュノールは今回、3番手の評価としました。

実力だけで評価するなら、真っ先に本命を打つべき存在ですが、今回は個人的に少し引っかかっていることがあります。

 それは、この馬の臨戦過程です。GⅠ大阪杯(1着。4月5日/阪神・芝2000m)、GⅠ天皇賞・春(1着。5月3日/京都・芝3200m)ときて、迎える宝塚記念。すなわち"春の古馬三冠"と言われる、王道のGⅠ3連戦に挑むわけです。

 しかしそれは、同馬の父キタサンブラックでさえ最後に疲れを隠せなかった(大阪杯1着、天皇賞・春1着のあと、宝塚記念では9着惨敗)、非常にハードなローテーション。前走の天皇賞・春での勝ち方がギリギリだったことを考えても、この春3度目となる熾烈かつハイレベルな大一番は、クロワデュノールにとって大きな"壁"となるはずです。

 ただ逆に、この壁をも容易に乗り越えてしまうようであれば、今後はクロワデュノールに対する評価をさらに上方修正する必要があるでしょう。

――実績ある強豪馬が集って、上位激戦が予想されます。その争いに伏兵の入り込む余地はないように思えてしまうのですが、大西さんはどう見ていますか。

大西 過去にも強いメンバーが顔をそろえながら、実力どおりの決着にならなかった例は数多くあります。

実際、過去10年の宝塚記念の結果を振り返ってみても、1番人気はわずか2勝。一方で、ふた桁人気の馬が5回も馬券圏内(3着以内)に入っており、ひと筋縄ではいかない一戦であることは間違いありません。

 よく言われるように、競馬に絶対はありませんから。常に波乱が起こる可能性は考慮しておくべきでしょう。

――では今回、大西さんが目をつけている穴馬候補はいますか。

大西 スティンガーグラス(牡5歳)に一発の可能性を感じています。3歳の後半から長い距離のレースを使われてきているように、スピードタイプというよりはパワーやスタミナが持ち味。僕が考える宝塚記念で好走する馬のイメージに近いです。

【競馬予想】宝塚記念は舞台合うミュージアムマイルが最有力 同...の画像はこちら >>
 また、年明け初戦の前走、GⅢダイヤモンドS(1着。2月21日/東京・芝3400m)は転厩初戦。陣営としては、馬の能力や適性を見極める叩き台だったと思うのですが、そこできっちり結果を出した点も見逃せません。

 より態勢を整えて臨む今回は、一段とパフォーマンスを上げてくるでしょう。

鞍上が気鋭の岩田望来騎手であることもプラス材料です。

 これらの要素を鑑みて、スティンガーグラスを今回の「ヒモ穴」に指名。宝塚記念での大駆けを期待したいと思います。

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