清水邦広が語るネーションズリーグ男子と日本代表 後編

(中編:石川祐希は「なかなか調子が上がらなかったが......」 激化する正セッター争いも語った>>)

 7月15日からAsueアリーナ大阪で行なわれるネーションズリーグ(VNL)男子の日本ラウンド。日本代表は15日にイタリア、16日にカナダ、17日にベルギー、19日にアルゼンチンと対決する。

その日本ラウンドでも活躍が期待できる選手たちや注目ポイントについて清水邦広氏が語った。

【男子バレー】清水邦広が挙げたVNL日本ラウンドの「一番の山...の画像はこちら >>

【オポジットの西田、宮浦は「相手にとって脅威」】

――清水さんと同じポジション、オポジットについて聞かせてください。昨年、代表活動を休んでいた西田有志選手が復帰し、存在感を示しています。清水さんは大阪ブルテオンでも一緒にプレーしていましたが、あらためてどんな選手ですか?

「いつも思うのですが、西田選手は漫画の主人公みたいですよね(笑)。今回のVNLでは、攻撃はもちろん、ディフェンスにも注目してほしいです」

――具体的にどういった部分ですか?

「オポジットは、サーブレシーブのフォーメーションには入らないケースが多く、そのぶん、素早く助走に入ってスパイクを決めるという攻撃的なポジションです。だから、レシーブ力ではほかのサイドの選手より劣る傾向があるのですが、彼はレシーブ力を磨いてきました。

 自分の身長(186cm)が世界では小さいほうだと認識し、点を取る以外にどんなプレーでチームに貢献できるかをずっと考えてきたんでしょう。相手のフェイント、味方のブロッカーがワンタッチしたボールなど、ほかのオポジットなら拾いにいかないようなボールにも反応してつなぎます。

 持って生まれた瞬発力もあるでしょうが、僕が一緒に練習していた時も、誰よりも先に体育館に行って瞬発力を鍛えるトレーニングをしたり、レシーブの練習をしたりする姿を見てきました。だからこそ、あんな主人公みたいなプレーができるのだと思います」

――今の日本代表のオポジットは、宮浦健人選手もいて層が厚いですね。

「そうですね。もともと宮浦選手の持ち味は、ハイセットでも思いきり打ち抜くことができる豪快なスパイクでした。しかし2025-26シーズンからは、ウルフドッグス名古屋で、パワーを維持しながら速いトスを打つことに挑戦していますね。

 セッターの深津選手とプレーするのが1年目だったこともあり、リーグ中は少しそのトスに苦戦しているかなと感じることもありました。でも、徐々に慣れてコンビネーションを確立しつつあると思います。彼のパワーに速さが加われば、相手にとってさらに脅威になると思います」

【清水氏が個人的に気になる選手は?】

――アウトサイドヒッターでは、やはり清水さんが一緒にプレーしたことがある大塚達宣選手、富田将馬選手、甲斐優斗選手も随所で活躍しています。

「今の日本代表は、アウトサイドヒッターもレベルが高いですね。どのチーム、どの国でもレギュラーになれるくらいポテンシャルが高い。今名前が挙がった選手たちは途中出場が多いですが、そんななかでもしっかりと自分の役割を理解して、仕事をしています。

 彼らはもちろん、起用に関して不満を漏らすことはありませんが、内に秘める闘志はひしひしと伝わってきます。『自分が出た時は必ず活躍するんだ!』という思いがプレーに表れていますよね。控えの選手は準備の仕方が難しくて、考えることも多いと思います。そんななかでも気持ちを切らさずに準備ができているから、結果が残せているんでしょう」

――ほかのポジションで気になる選手はいますか?

「ミドルブロッカーの西本圭吾選手ですね。元気や勇気をもらえる選手です。スポーツ選手は、ファンに応援していただくことも大事。その点、西本選手のように1点を決めるごとに大声を出し、まるで優勝したかのように喜ぶ姿は見ていて気持ちいいですよ」

――2セットを先取されてから逆転したフランス戦も、西本選手の登場で流れが変わりましたね。

「点を決めたあとのパフォーマンス、喜び方で流れを変えられるのは彼ならではの持ち味だと思います。"お祭り男"になってほしいですね。もちろんプレーの質も高く、ブロックの能力、スパイクの決定力もあります。

 189cmという身長は、ミドルブロッカーとしては低いほうです。しかし動きの速さ、スパイクのキレなどを生かして活躍している。高さは瞬発力で補えるということを、国際舞台で証明していってほしいです」

【因縁のイタリア戦を乗り越えて全勝突破へ】

――日本ラウンドではイタリア、カナダ、ベルギー、アルゼンチンと戦いますが、見どころを教えてください。

「日本代表には、2023年の10連勝を上回る12連勝で、予選ラウンドを全勝通過してほしいですね。一番の山場は7月15日、世界ランキング2位(7月14日現在)のイタリア戦です。ここを勝てば、勢いに乗って全勝できると思っています。

 イタリアは日本代表にとって因縁の相手。僕が代表でプレーしていた2008年には、北京五輪の出場をかけたアジア予選兼世界最終予選で、日本が24対17とリードした場面から大逆転でセットを落とし、最終的にフルセットで敗れたことがありました。結果としてオリンピック出場権は獲得できましたが、あのイタリアの粘りは今でも忘れられません。

 そして記憶に新しい2024年パリ五輪の準々決勝では、2セットを先取して迎えた第3セットで、マッチポイントを奪ってから逆転負けを喫しました。最後の1点を取るまで、何が起こるかわからないのがイタリアというチームです。パリ五輪を経験した選手たちはそれを痛感していると思いますが、見ているみなさんも最後まで油断をせずに応援していただけたらと思います」

――VNLはスケジュールがハードな大会ですが、内容も厳しい試合が続いていますね。

「そうですね。フランスラウンドでも、セルビアに3-1で勝利したあと、1日空いてイラン、アメリカ、フランスと3日連続でフルセットを戦っています。僕は現役時代、3日連続でフルセットを戦った記憶はありません。それくらい珍しいことですし、体に相当な負担がかかっていたと思います。

 それでもフルセットの試合をすべて勝ってきたのは、自信につながったと思います。その自信と、これまでの勢いで日本ラウンドを戦ってほしいですね。日本のファンの前で試合ができる貴重な機会ですが、日本代表の選手たちは舞台が大きくなるほど、注目度が高くなるほど力を発揮できます。『俺が活躍するんだ!』という強い気持ちを持った選手ばかりなので、その持ち味を発揮して、必ず勝ってくれると思っています」

【プロフィール】

清水邦広(しみず・くにひろ)

所属:大阪ブルテオン

1986年8月11日生まれ、福井県出身。身長192cm、オポジット。

福井工大福井高校時代に春高バレーに出場するなど活躍。東海大学在学中の2007年に日本代表に選出され、翌年の北京五輪に出場した。2009年にパナソニックパンサーズ(現・大阪ブルテオン)に入団後、多くの個人タイトルを獲得するなど、チームを何度も優勝に導いてきた。2021年には東京五輪に出場し、日本代表のベスト8進出に貢献した。2025-26シーズン限りで現役を引退し、大阪ブルテオンのコーチングスタッフに就任した。

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