「このまま黙っていれば、公務員は取り残されてしまう」——。役所の窓口や保育園、図書館で住民と日々接する職員の中には、1年ごとの任用で働く非正規の公務員「会計年度任用職員」が数多くいる。

16日午後、日本自治体労働組合総連合(自治労連)が都内で会見。
橋口剛典書記長は「週35時間以上働き、正規職員と同じ仕事をしていても、年収は200万~350万円程度にとどまる」と指摘。10月1日に民間で施行される改正「同一労働同一賃金ガイドライン」から「公務員だけが取り残されるおそれがある」と訴えた。

「来年度は働き続けられないのでは」

会計年度任用職員制度は、自治体の非正規職員の処遇改善を目的として2020年4月に始まった。それまでは、非正規には支払われなかったボーナスや諸手当を、法的根拠を与えることで堂々支払えるようにするのがその趣旨だった。
任用は原則1会計年度(1年)以内とされ、総務省の資料によると総数は約70万人に上る。
約9割がパートタイムで、4分の3を女性が占める。嶋林弘一書記次長は「職務改善のための制度だったはずが、始まって蓋を開けてみると、改悪になっており『雇い止めが横行している』といった声が全国各地から聞かれる」と述べた。
自治労連はこの日、会計年度任用職員の処遇改善に関する調査結果を公表。
調査は3月1日から6月30日にかけて実施されたもので、29都道府県の304自治体から回答を得た。国の非常勤職員でこの4月から実現した年次有給休暇の採用日付与は95.0%の自治体で行われ、子の看護休暇の有給休暇化(5日以上)も82.3%と、おおむね国に沿って改善が進んだ。
給与の引き上げを4月にさかのぼって適用する「4月遡及改定」を行う自治体は90.7%、民間のボーナスに当たる勤勉手当を「正規職員と同じ月数」支給する自治体は91.7%となり、いずれも前回調査から約10ポイント上昇。
また、一定の年数が経つと、働き続けていても改めて公募にかけられ、試験や選考に漏れれば職を失う——。
組合側が実質的な雇い止めと位置づけるこの一律公募も「廃止済」が43.3%と増加した一方、「見直す予定なし」が25.3%残った。
自治労連が毎年実施する当事者アンケートでは、改善してほしいことの1位は「継続雇用にしてほしい」で57.0%。賃金引き上げ(47.4%)を上回った。
会見で調査結果を報告した曽我友良中央執行委員は「試験が来るたびに精神的な負担が大きい。来年度は働き続けられないのではないかと、苦痛に感じている方が多くいる」と説明した。

「正規でやるべき仕事が置き換えられてきた」

処遇の格差も根深い。私傷病休暇(※)は、正規職員が有給休暇90日であるのに対し、会計年度任用職員は国基準で10日にとどまる。
※業務外の病気やケガで働けなくなった場合に雇用を維持したまま一定期間就業義務が免除される制度
また、会計年度任用職員の私傷病休暇について、10日以上を有給休暇とする自治体が9割近くに達している一方、1日も有給休暇と扱わない自治体もあった。さらに、パートタイムの会計年度任用職員には、退職手当、扶養手当、住居手当が支給されない。さらに、パートタイムの会計年度任用職員には、退職手当、扶養手当、住居手当が支給されない。
調査では、自身の仕事を「正規と同じ仕事」と捉える人が23.5%、「正規の指示を受けない専門的な仕事」が13.1%に上った。
橋口書記長は「本来は正規でやるべき仕事が、ひどい待遇の非正規公務員に置き換えられてきた」と述べ、「根強く残る非正規差別、女性差別の根絶が必要だ」と訴えた。

「地方自治法を改正する必要」

同一労働同一賃金ガイドラインとは、パートタイム・有期雇用労働法に基づき、正社員と非正規の間でどのような待遇差が「不合理」にあたるかの考え方を国が示したものだ。

改正版は10月1日に施行され、賞与などに加えて退職手当や家族手当についても、不合理な待遇差と認められる可能性があると明記された。ところが公務員は、民間の雇用契約とは別の法体系で任用されるため、このガイドラインも適用除外となっている。
壁となるのが地方自治法203条の2だ。同条はパートタイムの会計年度任用職員を含む非常勤職員に支給できるものを報酬、費用弁償、期末手当・勤勉手当に限定列挙しており、退職手当や扶養手当などは法律上支給できない。
嶋林書記次長は「ガイドラインに沿った均等待遇にしようと思えば、地方自治法を改正する必要がある」と述べた。ただ、国会は会期末が迫っており、改正は最短でも秋の臨時国会となる見通しで、10月1日の施行には間に合わないという。
橋口書記長は、総務省の事務処理マニュアルのQAにもガイドラインに沿った運用が望ましいとの記載があるとして、「10月のガイドライン改正は、非正規公務員の処遇を大きく改善させる大チャンスだ」と強調した。


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