地方銀行、「金利のある世界」復活で再編の足音は改めて高まるのか?

地方銀行の再編ムードが改めて高まっている。背景にあるのが「金利のある世界」の復活。

2020年代初めまでは低金利や人口減少による預金流出、地域経済の活力低下などが重なる中、生き残りの手段として集約が通じた再編が進展した。これに対し、足元では同じ再編でも「守り」から「攻め」の姿勢が鮮明になっている。

しずおかFG、名古屋銀と統合で全国4位に

3月に経営統合を発表したのは静岡銀行を中核するしずおかフィナンシャルグループ(FG)と名古屋銀行。統合時期は2028年4月で、しずおかFGのもとに静岡銀と名古屋銀を配置する。総資産は合わせて22兆円を超え、全国4位の地銀グループが実現する(しずおかFG単体は現在6位)。

静岡銀と名古屋銀は2022年4月、包括業務協定「静岡・名古屋アライアンス」を締結し、県境を越えて連携を進めてきた。双方の地盤の静岡、愛知の両県は自動車など製造業を中心とする強固な産業基盤を持ち、相性も良い。

しずおかFGは近年、首都圏への展開に注力中。今回の統合で名古屋都市圏でも地歩を固め、東京から名古屋まで営業ネットワークが切れ目なくつながる形だ。

名古屋を中心とする東海エリアでは5月、もう一つ新たな動きが表面化した。あいち銀行を傘下に置くあいちフィナンシャルグループと、三重県地盤で三十三銀行を持つ三十三フィナンシャルグループが経営統合を発表した。

統合完了は、しずおかFGより1年早い2027年4月を予定する。合計の総資産は11兆円を超え、全国14~15位のポジションとなる見通しだ。

あいちFG・三十三FG、再度統合へ

あいちFGは2022年、愛知県下の愛知銀行と中京銀行の統合で誕生(2025年1月に傘下2行が合併→あいち銀行)。三十三FGは2018年、三重銀行と第三銀行の統合で発足(21年5月に傘下2行が合併→三十三銀行)した。その両社が今後は県境をまたいで再度、統合に動く。

あいちFGは統合の結果、愛知県のトップ地銀の座を名古屋銀から奪った経緯がある。当の名古屋銀は今回、しずおかFGとの統合で巻き返しに出る構図になる。

金融界にとってここ数年の最大の環境変化は、日銀が2024年から「金利のある世界」に転換したことだ。6月半ばには、日銀が政策金利を31年ぶりの水準となる1%程度に引き上げた。

銀行にとっては利ザヤ拡大、つまり金利収入が増える局面を迎え、貸し出しの原資となる預金の獲得競争が激しさを増している。そこでモノをいうのは他でもないスケールメリット(規模の経済)だ。

地方銀行、「金利のある世界」復活で再編の足音は改めて高まるのか?
「金利正常化」を推し進める日銀(東京・日本橋本石町)

コストの急上昇も再編に銀行の背中を押す要因として見逃せない。昨今、人件費はもとより、店舗の賃料・修繕費、システム関連費用などの物件費が大きく膨らみ、スケールメリットによる効率化の必要性が従来にも増して求められている。

「群馬新潟FG」、「ちばFG」も来年4月発足

昨年は、新潟県地盤の第四北越銀行を傘下に置く第四北越フィナンシャルグループと群馬銀行、千葉銀行と千葉興業銀行がそれぞれ経営統合を発表した。

前者は「群馬新潟フィナンシャルグループ」、後者は「ちばフィナンシャルグループ」を2027年4月に発足させる。隣県との越境統合の群馬新潟FGは総資産で全国5位、県内統合のちばFGは、横浜銀行を中核とする全国2位の横浜フィナンシャルグループにほぼ肩を並べる。

ちなみに、地銀トップは福岡銀行などを傘下に持つふくおかフィナンシャルグループ。総資産33.5兆円(2026年3月末)は2位の横浜FGを8兆円近く上回る。

地銀の数は現在95行で、このうち相互銀行を前身とする第二地銀が34行。地銀は2000年代初めに130行を超えていたが、この四半世紀で約3割減った。

その大部分は第二地銀で、地銀の再編は第二地銀の集約・淘汰の歩みと軌を一にする。第二地銀同士の合併、各都道府県のトップ地銀による統合を主体とし、同時並行で都道府県の枠を超えた広域再編が各地で進展してきた。

千葉県2位、京葉銀行の出方は?

今後、要ウオッチのエリアはどこか。その一つが首都圏は千葉県。県内トップの千葉銀と3位の千葉興銀の統合で取り残される格好となる2位の京葉銀行の出方が注目される。

京葉銀は第二地銀でも五指に入る大手で、総資産は6.6兆円規模。単独路線を堅持するのか、どこかのグループに合流するのか、それとも自ら統合を仕掛けるのか。

首都圏には横浜FGのほか、きらぼしフィナンシャルグループ(傘下行はきらぼし銀行)、めぶきフィナンシャルグループ(傘下行は常陽銀行、足利銀行)が割拠する。

京葉銀は2021年から、りそなホールディングスと業務提携関係にある。

りそなHDは埼玉りそな銀行を傘下に持つだけに今後、“急接近”に発展する可能性も考えられる。

引き続き目が離せない東海エリア

あいちFGと三十三FG、しずおかFGと名古屋銀という2つの経営統合を控える東海エリアも引き続き目が離せない。

周囲を見渡すと、岐阜県にはトップ地銀の十六銀行を中核とする十六フィナンシャルグループに、これを追走する大垣共立銀行。三重県では百五銀行が三十三FGを抑えてトップ地銀の座にある。いずれも独自路線を保っているが、この先、再編に傾くことがあるのか。

しずおかFGは名古屋銀との統合で総資産は22兆円規模となる。20兆円がメルクマークとされるメガ地銀の仲間入りを果たすと同時に、東海エリアで断トツに立つ。

一方、あいちFGと三十三FGの統合後の総資産は11兆円ほど。仮に、これに総資産7.6兆円の百五銀、7.5兆円の十六FG、6.7兆円の大垣共立銀のいずれかが加われば、一気に20兆円が視野に入る。

◎地銀:総資産上位(2026年3月末)

1 ふくおかFG33兆5594億円 2 横浜FG25兆6704億円 3 千葉銀+千葉興銀(ちばFG)21兆6083億円+3兆3966億円 4 しずおかFG+名古屋銀16兆0160億円+6兆2727億円 5 第四北越銀+群馬銀(群馬新潟FG)10兆8402億円+10兆8559億円 6 めぶきFG21兆1736億円 7 ほくほくFG16兆9637億円 8 西日本FHD13兆8522億円 9 八十二長野銀行13兆5544億円 10 九州FG13兆5255億円 11 北洋銀行13兆2713億円 12 山口FG13兆1804億円 13 ひろぎんFG12兆2105億円 14 京都FG11兆8256億円 15 あいちFG+三十三FG7兆1682億円+4兆5640億円 16 ちゅうぎんFG11兆3702億円 17 七十七銀行10兆4328億円

「池田泉州・滋賀アライアンス」スタート

近畿エリアでは府県をまたぐ広域地銀グループが存在しない。ここで目下、再編の呼び水となるのか関心を呼んでいるのが滋賀銀行と、池田泉州銀行を傘下に置く池田泉州ホールディングス(HD)。

4月に「池田泉州・滋賀アライアンス」と銘打った資本業務提携を発表し、互いの株式を0.5~1%程度取得することになったのだ。

2017年からATM(現金自動預払機)の相互無料化などを進めていたが、資本関係の構築で連携を一層深める。総資産は滋賀銀7.6兆円、池田泉州HD6.5兆円。

合計14兆円超で、京都銀行を中核とする京都フィナンシャルグループの11.8兆円を上回り、近畿エリアの地銀で最大勢力となる。

滋賀銀は滋賀県と京都府に展開し、池田泉州HDは大阪府のほか兵庫県に店舗を構え、補完関係が期待できる。今回の資本提携がさらに発展すれば、経営統合に行き着くだけに、今後の動向が注視される。

物言う株主の動向は? 駆け込み再編も

地銀再編を占ううえで、キープレーヤーと目される存在がアクティビスト(物言う株主)のありあけキャピタル(東京都中央区)だ。

地銀に特化したファンドを運営する同社の名前を一躍知らしめたのは昨年3月。19%余りを保有していた千葉興銀の株式を約237億円で千葉銀に売却したことをきっかけに、経営統合の運びとなった。

滋賀銀、池田泉州FG、百五銀、あいちFG、大垣共立銀、スルガ銀行…。現在のありあけの投資先だが、先ほど来、触れてきた顔ぶれが数多く並ぶ。

なかでも、あいちFGは10.93%、池田泉州FGは10.8%と、保有割合が2ケタを超える。その株式の出口戦略次第で再編に直結する。

昨年末には、宮崎銀行が宮崎太陽銀行株式の保有割合を9.06%に、福島県の東邦銀行が大東銀行株式の保有割合を19.51%に高め、それぞれ筆頭株主になった。いずれも同一県内の地銀同士で、「安定株主としての保有」を目的とする。

同じ県内地銀の経営統合に際し、独占禁止法の適用を除外する特例法が施行されたのは2020年。期限の2030年まで残り4年となる中、再編に向けた駆け込みが広がることも予想される。

◎地銀をめぐる主な再編の動き(2016年~)

年出来事 2016 西日本シティ銀行と傘下の長崎銀行→西日本フィナンシャルHD 〃 横浜銀行、東日本銀行が統合→コンコルディアFG(現横浜FG) 〃 常陽銀行、足利FGが統合→めぶきFG 2018 第四銀行(新潟市)、北越銀行(長岡市)が統合→第四北越FG 〃 三重銀行(四日市市)、第三銀行(松阪市)が統合→三十三FG 2019 りそなHD傘下の近畿大阪銀行と関西アーバン銀行が合併→関西みらい銀行 2020 地銀再編に関し、独禁法の適用外とする特例法施行 〃 広島銀行、持ち株会社「ひろぎんFG」を単独で設立→単独設立の第一号 2022 青森銀行、みちのく銀行(青森市)が統合→プロクレアHD 〃 愛知銀行、中京銀行が統合→あいちFG 2023 ふくおかFG、福岡中央銀行を統合→福岡、熊本、十八親和と合わせ傘下4行体制 2025 4月、第四北越FG、群馬銀行が統合(2027年4月)の合意を発表 〃 9月、千葉銀行、千葉興業銀行が統合(2027年4月)の合意を発表 2026 1月、八十八銀行、長野銀行(2023年に子会社化)を吸収合併→八十八長野銀行 〃 3月、しずおかFG、名古屋銀行が統合(2028年4月)を発表 〃 5月、あいちFG、三十三FGが統合(2027年4月)を発表 〃 〃  福井銀行、福邦銀行(福井市、2024年に子会社化)を吸収合併

文:M&A Online

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