2026年7月3日(金) に開幕する新国立劇場バレエ団のダブル・ビルで、宝満直也振付による『String SAGA』が世界初演される。さまざまな糸が撚り合い、1枚のタペストリーが織り上がるまでの工程に着想し、久石譲の協奏曲「Viola Saga」にのせて、それぞれの個性をもって作品に向き合うダンサーたちの姿を浮き彫りにするという意欲作だ。
──おふたりは新国立劇場バレエ団の公演で初めてパートナーを組まれるそうですが、まずはお互いの印象を教えてください。
直塚 実は、外部の舞台ではご一緒しているんです。中家さんは何があってもすぐ対応してくださるので、とても安心です。
中家 美穂ちゃんの良さを引き出すことについては、僕は多分上手です(笑)。
直塚 信頼しています。今回は「縺れる」という言葉通り、縺れる動きが散りばめられていて、腕が縺れ合ったり、相手の身体に脚を巻きつけたり、オフバランスな動きや変則的なリフトが多かったりするので、なおさらです。
中家 配役はダンサー同士の相性だけでなく、その役柄に相応しいかどうかで決まるので、全幕バレエではこれまで一緒に踊る巡り合わせがなかったのですが、僕たちにはロシアでバレエを学んだという共通のルーツがあり、お互いに踊り方をよく把握しています。そこに宝満さんは気づいてくださいました。
──すでに作品の全体像は見えてきていると思いますが、そこまでのクリエーションはどのように進められてきたのですか。
(撮影:奥田祥智)
中家 宝満さんと一緒にいろんなことを試しながら進めてきました。
直塚 これが難しいんです。別のときには「そこ、逆上がりしてみて」ということも! 私が抱えられて、そこから逆上がりする感覚で、くるんと上に乗っかる。
中家 試してみたら意外とうまくいったんですね。そうやって生まれた動きはいろいろあります。「僕のイメージを超えてきた」とびっくりされることもあって、美穂ちゃんは「そんなところから脚が上がるのは想定していなかった」と言われたことも(笑)。想定外のことが起きるのはクリエーションの面白いところです。
直塚 Tangleのパートは小野絢子さん、渡邊峻郁さんとのWキャストですが、振付にはそれぞれの組のアイデアがミックスされていきます。実はキャストが決まったとき、絢子さんと私は体格も踊りのタイプも全く違うので戸惑いましたが、いまは、違うからこそいいのかなと思うようになりました。
中家 基本の振付は同じでも、全く違うテイストの舞台になるでしょう。
新国立劇場バレエ団『String SAGA』ビジュアル(©HIRO KIMURA(W))
直塚 現場では、振付家の要求に即座に反応できるかどうかが大事ですが、年齢、経験を重ねないと難しいところがあります。
中家 オリジナルキャストの強みやね。
直塚 既存の作品を踊るときは、最初に過去の映像を見て振りを覚えるけれど、その時点でもう、映像の中で踊る人の形を覚えることになってしまう。初演ダンサーは、全ての振りを自分の踊りとして表現することができるので、ダンサー冥利に尽きます。
ダンサーそれぞれの個性を最大限に活かす、宝満直也の振付
──創作を進める中で、これは宝満さんならでは、と感じられることはありますか。
中家 本当に限界ギリギリというところまで絶対に追い込んできますね。ただ、これ以上は無理、ということは強要しません。
直塚 それぞれのダンサーが得意とするものをよく理解されて、その個性を最大限に活かす振付をされているのがよくわかります。若手ダンサーはテクニックが詰まった、弾けるような踊りで盛り上げますし、私たちは私たちのパートナリングを見せていきますが、それはさまざまな糸でひとつの織物を織り上げていく様子と重なります。まだ創作の途中ですが、宝満さんならではの世界観を感じます。あの温かなお人柄が滲み出てくるよう。
(撮影:奥田祥智)
中家 彼は実はすごく面白い人で、あの穏やかな声でぼそっと面白いことを言うので僕らは爆笑(笑)。そんな様子を見ていても、彼は、内側にたくさん、表現に繋がるものを持っているんだなと感じます。
──宝満さんはダンサーに寄り添い、その仕事を尊重しつつ創作をされているように感じますが、ではご自身は、ダンサーという職業をどのように捉え、向き合っていますか。
中家 文化や芸術は、とても大事にされているようでされていないように思うのですが、AIが発展し、普及してきたいまだからこそ、生身の人間が表現することがとても大事になってくると思いますし、これまでよりもずっと希少な存在になっていくかもしれない。僕らは、それを自覚しながら繋げていくことが大切だなと感じます。とくにバレエダンサーは現役で活躍できる時間がとても短い職業ですから、僕らの世代は、いかに繋いでいくかということを意識しながら踊っていきたいなと思うんです。
直塚 私は常に目の前の舞台に全力で取り組んでいますが、まだ自分のことで精一杯かもしれません……。
中家 僕もそういう時期があったし、それでいいんだと思います。何より美穂ちゃんはしっかりと自身に課題を課して、ひとつずつクリアしていっているように僕には見えます。とてもストイックなんです。
直塚 毎日が自分との戦いです(笑)。でも、バレエだけでなく、楽しいのが一番です。バレエは芸術ですが、お客さまは舞台を楽しみに劇場にいらっしゃるのだから、こちらもハッピーでいなければ。体力的にしんどかったり、思うようにできなくて辛かったりすることもあるけれど、それがクリアされるまでの過程を楽しんでいる自分もいます。
──どのような作品が誕生するのか、期待が高まります。
(©HIRO KIMURA(W))
中家 ひとりでも欠けたら作ることのできないものになると思います。メンバーひとりひとりにそれぞれの役割があり、それを全うすることで、ひとつの織物、つまり作品ができる。その点で全幕バレエに通じるものがあると感じますし、僕自身、全幕作品に取り組むのと同じような気持ちで踊ることができるかなと楽しみにしているんです。僕たちふたりが組んで踊るのも滅多にないことなので、ぜひ多くの方にご覧いただきたいと思います。
直塚 古典の舞台では観られない、ダンサーそれぞれのカラーが最大限に発揮される、いい作品になると思います。ぜひ劇場に観にいらしてください。
取材・文:加藤智子
<公演情報>
新国立劇場ダンス 新国立劇場バレエ団『String SAGA/暗やみから解き放たれて』
『String SAGA』
振付:宝満直也
音楽:久石 譲
【出演】
Twist(撚る):
五月女遥、赤井綾乃、根岸祐衣、石山 蓮、長谷川諒太、森本晃介(7/3 19:00、7/4 18:00)
赤井綾乃、根岸祐衣、東 真帆、石山 蓮、長谷川諒太、森本晃介(7/4 14:00、7/5 14:00)
Tension(張る):
花形悠月、山本涼杏、上中佑樹
Intertwine(絡まる):
大木満里奈、橋本真央、仲村 啓、小川尚宏
Flick&Spin(弾く、紡ぐ):
石山 蓮、山田悠貴
Tangle(縺れる):
直塚美穂、中家正博(7/3 19:00、7/4 18:00)
小野絢子、渡邊峻郁(7/4 14:00、7/5 14:00)
『暗やみから解き放たれて』
振付:ジェシカ・ラング
音楽:オーラヴル・アルナルズ、ニルス・フラーム、ジョッシュ・クレイマー、ジョン・メトカーフ
【出演】
小野絢子、米沢唯、井澤駿、速水渉悟、小野寺雄、宇賀大将、 飯野萌子、吉田朱里、金城帆香ほか (7/3 19:00、7/4 18:00)
木村優里、柴山紗帆、木下嘉人、水井駿介、森本亮介、渡邊拓朗、小田那奈、堀之内咲希、木村優子ほか (7/4 14:00、7/5 14:00)
2026年7月3日(金)~7月5日(日)
会場:東京・新国立劇場 中劇場
関連リンク
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2509584(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2509584&afid=P66)
公式サイト:
https://www.nntt.jac.go.jp/dance/stringsaga/

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