〈W杯〉「優勝」未達の森保監督、会社員なら何点?  意外な人事査定と部署を救った“最優秀社員”とは?
〈W杯〉「優勝」未達の森保監督、会社員なら何点? 意外な人事査定と部署を救った“最優秀社員”とは?

北中米ワールドカップが閉幕した。結果的にサッカー日本代表はラウンド32で敗退し、森保一監督が掲げてきた「優勝」には届かず、目標と実績の間には大きな隔たりが残った。

では、これを一般企業の人事評価に置き換えると、森保監督にはどのような査定を下すのが妥当なのか。また、最優秀社員に相当する評価を受けるべき選手は誰なのか。

会社なら「目標未達。ただし最低評価ではない」

「ワールドカップ優勝」は、途中経過を測るKPIではなく、組織が最終的に達成しようとするゴールである。大会での最終順位をKGIとし、その最上位の達成水準を「優勝」に設定した、と考える方が厳密だ。

KPIにあたるのは、グループステージを突破できたか、強豪国と互角に戦えたか、選手層を広げられたか、得点力や守備力を高められたか――といった、優勝までの途中経過を測る指標だろう。

そう考えると、森保ジャパンの評価を「優勝できなかったから全部ダメ」「ブラジルに善戦したから成功」と単純に決めることはできない。最終的な結果と、そこに至るまでの仕事ぶりを分けて見る必要がある。

会社にたとえるなら、森保一監督は「世界市場でシェア1位を取る」と宣言した海外事業部長のようなものだ。

アジア予選や大会前の強化試合では安定した成績を残したが、世界大会のノックアウトステージでは、最初の試合(商談)で競り負けた――。そんな状況に近い。

「世界一」という最大の目標に届かなかった以上、最高評価や大幅な昇給というわけにはいかない。

成果評価の欄には、はっきりと「目標未達」と書かれるべきだろう。

とはいえ、最低評価をつけたり、懲罰的に解任したりするほどの失敗だったとも言い切れない。

日本はグループステージを無敗で突破し、ラウンド32では試合には敗れたが、「世界の強豪と勝負になるチームをつくった」という中間成果まで否定する必要はない。

もちろん、業界や各企業によって評価軸は異なる。ここでは、海外市場で長期的に競争する大手製造業の事業部長を想定する。大手自動車メーカーで管理職の人事評価に携わる担当者は、あくまで仮定上の評価基準だと断ったうえで、次のように話す。

「仮に、『5』を目標の大幅超過、『4』を達成、『3』を一部未達ながら標準的な成果、『2』を重要目標の未達、『1』を組織に重大な損害を生じさせた状態と定義するなら、森保ジャパンの評価は2と3の境界付近になると思います」

優勝できなかった責任は軽くない。一方で、チームを崩壊させたわけでも、日本代表の競争力を大きく後退させたわけでもない。

結果には厳しい点をつけつつ、組織づくりや人材育成については一定の評価を与える。それが、最も公平な査定だろう。

大きな目標を掲げたことまで罰してはいけない

もう一つ注意したいのは、高い目標を掲げた人ほど損をする評価制度にしてはいけないということだ。

仮に森保監督が大会前に「ベスト32が目標です」と話し、その通りの結果を残していれば、形式上は「目標達成」になる。

しかし、それで日本サッカーの成長を促せるかといえば、疑問が残る。

会社でも、確実に達成できる数字だけを掲げた管理職が高く評価され、「世界一を目指す」と宣言した管理職が未達を理由に低く評価されるようになれば、誰も大きな目標を口にしなくなる。

高い目標を掲げるなら、そのためにどんな戦略を立て、どのような人材を集め、どこまで前進したのかを説明する責任がある。

森保監督についても、問われるのは優勝できなかったという事実だけではない。

なぜブラジル戦の終盤に勝ち越されたのか。前回大会から何が改善され、何が足りないままだったのか。選手選考や交代策、コンディション管理に問題はなかったのか。

こうした検証を曖昧にせず、次の責任者が利用できる形で残すことも、長期政権を率いた監督の大切な仕事になる。

日本サッカー協会は森保監督に対し、2027年1月から2月にかけて行われるアジアカップまで指揮を続けるよう打診し、JFAから正式発表はないが、本人も受諾したと報じられている。アジアカップ後は新監督へ交代する方針とも伝えられている。

会社でいえば、これは事業部長として新たな4年間を任された「正式な再任」ではない。

次の責任者へスムーズにバトンを渡すための、期限付きの続投に近い。この半年で最優先すべきなのは、自分の続投に有利な成果をつくることではなく、次の4年間に使える財産を残すことだ。

「森保ジャパン」が会社のひとつの部署なら「MVP社員」は誰か

ところで、森保ジャパンを会社の一部署として見るなら、今大会で最も高い評価を受ける選手は、GKの鈴木彩艶ではないだろうか。

ブラジル戦では、後半に押し込まれるなかで至近距離からのシュートを何度も防ぎ、試合を最後まで接戦にとどめた。日本が大会を通じて8得点を挙げた一方、4試合で5失点に抑えられた背景には、守備陣全体の働きに加え、最後尾での安定した働きがあった。前出の人事担当者も言う。

「会社でたとえれば、トラブルが続く大型案件で、最後の防波堤となって損失の拡大を食い止めた社員です。部署全体が苦しい時間帯でも仕事の質を落とさず、自分の担当範囲を超えてチームを支えたという意味で、「社長賞」や「最優秀社員賞」の候補の一人となります」

鈴木のパフォーマンスを支えたGK部門は、今大会の森保ジャパンで一定の成果を残した部署の一つだったといえる。

森保監督への正当な査定とは、「優勝未達」という結果を曖昧にしない一方で、日本代表を世界の強豪と競り合える位置まで引き上げた仕事も冷静に認めることだろう。

そして、最後の半年で求められるのは、過去の評価を無理に覆すことではない。

次の責任者が、森保体制の到達点よりも少し先から仕事を始められる状態をつくること。それが、長期政権を率いた監督に課される、最後の成果目標ではないだろうか。

取材・文/集英社オンライン編集部

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