〈インナー見せコーデに賛否〉「チャック開いてるよ」「その格好はやめておいたら?」ファッションの境界線…「ロゴ見せならアリ」同じ20代でも割れる価値観
〈インナー見せコーデに賛否〉「チャック開いてるよ」「その格好はやめておいたら?」ファッションの境界線…「ロゴ見せならアリ」同じ20代でも割れる価値観

ローライズのボトムスや短丈トップスから、あえてインナーをのぞかせる“インナー見せコーデ”が、いま若い世代の一部で注目を集めている。SNSでは、「可愛い」「オシャレ」という声がある一方、「理解できない」「下着を見せる意味がわからない」という声もあり、賛否の声があがっている。

若い世代のリアルなファッション観を探った。

“インナー見せコーデ”の背景は平成ファッションのリバイバル!?

ローライズのボトムスからブランドロゴ入りのインナーをのぞかせたり、男性用トランクスをレイヤードしたり――。いま若い世代を中心に、“インナー見せコーデ”が注目を集めている。

その背景は、1990年代以降のヒップホップ/ストリートファッションで見られた、パンツを腰位置より大幅に下げて下着を見せる“サギングファッション”のリバイバルとも言われ、Calvin Klein(カルバン・クライン)やDIESEL(ディーゼル)などのブランドロゴ入りインナーをコーディネートの一部として取り入れる着こなしが、K-POPアイドルや海外セレブの影響を受けて広がった。TikTokやInstagram上でも関連動画が数多く投稿されている。

東京・渋谷のアパレルショップに勤務する20代女性も、「渋谷や原宿では20代前半くらいの韓国系ファッションの子を中心によく見かけます。TikTokでも『インナー見せコーデ』の動画はよく流れてきます」と話し、街中でも珍しくない光景になっているという。

「見せる前提」のインナーが増えている…"パンツ見せ"の価値観

では、実際に“インナー見せコーデ”を発信している当事者たちは、この流行をどのように捉えているのだろうか。

まず話を聞いたのは、Instagramで約14万人のフォロワーを持ち、古着ショップ店員としても働く谷藤理奈さん。ストリートファッションを発信する谷藤さんは、約2年前、SNSやPinterestで海外の女性がカルバン・クラインのインナーを見せるコーディネートをしているのを見て、自身のファッションにも取り入れるようになったという。

「色合わせが楽しめますし、『この組み合わせもアリなんだ』という発見があって。人と差をつけられるところも魅力でした」(谷藤さん、以下同)

約2年前、自身が投稿した“インナー見せコーデ”はネットニュースで取り上げられ、賛否を呼んだそうだ。

「親世代の方や夜職の女性から批判的なコメントをいただくことが多かったです。でも、ファッションはあくまで“自己満足”なので、批判を受けてのダメージはそこまでありませんでした。

2年経過し、現在はこういうファッション自体がコンテンツとして定着してきたので、以前のような批判的な反応はほとんどありません」

一方で、炎上をきっかけに意外な反響もあった。

「カルバン・クラインさんから商品提供を受けたことがあって、同封されていたメッセージには『アンダーウェアを見せるファッション』として発信していきたいという内容が書かれていたんです。『私の感覚は間違っていなかったんだ』と思いましたし、ブランド側も『見せる前提』で提案しているんだと感じました。その後も、見せることを前提としたインナーを展開するブランドは増えていったと感じます」

さらに谷藤さんは、“インナー見せコーデ”は2000年前後のファッションを現代風に取り入れる“Y2Kファッション”のブームとともに広がったスタイルの一つだと分析する。

「“インナー見せコーデ”が広まったのは、“Y2Kファッション”が流行り始めたタイミングと重なっていたからだと思います。2000年代っぽいファッションがブームになって、その流れでローライズやレイヤードスタイルも人気になりました。しかし、ストリート系は流行の移り変わりがすごく早いんです。当時は定番だったカルバン・クラインのロゴ見せも、少し『今さら感』があります(笑)。いまはまた違うレイヤードの楽しみ方に変わってきていますね」

「下着ではなくファッションアイテム」 Z世代における“かわいい”の基準

続いて話を聞いたのは、Instagramフォロワー約21.7万人を持ち、メイクやファッションなど、自身が考える独自の「かわいい」を発信するインフルエンサー・ののちさんだ。

レースのインナーを見せるコーディネートを取り入れるようになったきっかけは、韓国のファッションだったという。

「韓国の方が、ユニクロのインナーをレイヤードしているのをネットで見て、『可愛い!』と思って自分のファッションにも取り入れ始めました。カルバン・クラインのロゴを見せるスタイルは、ギャルファッションのリバイバルという印象があります。でも、私が取り入れているレースのインナーは、それとはまた違う、新しいファッションとして楽しんでいます」

ののちさんにとって、レースのインナーは「下着」ではなく、コーディネートを構成するアイテムの一つだと言う。

「本当の下着の上から重ねているので、私の中ではパンツやトップスと同じ感覚なんです。

もちろん、否定的な考えの人がいるのも分かりますし、それはその人の価値観なので否定するつもりはありません。しかしいまでは『見せる前提』で作られたアイテムも増えていますし、下品に見せたいわけではなく、あくまでもコーディネートの一部として楽しんでいます」

「レースはパンツに見える」「ブランドロゴならアリ」同じ20代でも意見は真っ二つに

谷藤さんやののちさんは、「下着ではなくコーディネートの一部」という感覚で“インナー見せコーデ”を楽しんでいた。一方で、それを見る側の価値観はどうなのだろうか。

東京・渋谷のアパレルショップに勤務する20代女性は、「トランクスをレイヤードしたり、カルバン・クラインやディーゼルのロゴを見せたりする着こなしはファッションだと思いますが、レースの下着がそのまま見えていると『普通にパンツじゃん』と思ってしまいます」と話す。

さらに、「友達でやっている子はいませんし、職場の同僚にも『意味が分からない』『見えてる!って思っちゃう』という人はいます。同じ20代でも受け止め方はさまざまですね」と続けた。

一方、20代の会社員男性は、「“パンツ・オン・パンツ”のようにレイヤードしているならファッションとしてまだ理解できます。でも、肌に直接触れている下着が見えていると、『パンツが見えている』という印象になります。恋人が同じような格好をしていたら思わず『その格好はやめておいたら?』と言ってしまいそうです」と語った。

――当事者たちにとって“インナー見せコーデ”は、下着を見せるためではなく、コーディネートを完成させるためのレイヤードの一つだった。

しかし、その感覚はまだ誰もが共有しているわけではない。

同じ20代の間でも受け止め方はさまざまで、その価値観のギャップこそが、このファッションをめぐる賛否を生んでいるのではないか。

取材・文/逢ヶ瀬十吾(A4studio)

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